契約書×AIのニュース【属人的な契約書管理の終わり】
契約書系リーガルテックに新たなニュースです。AI活用により契約実務がさらに効率的になりそうで楽しみです。
追い風続く クラウドサイン
在宅勤務(テレワーク/リモートワーク)の拡大もあり、一層存在感を増しているのが、クラウドサインさん。UI/UXがもともとすばらしい製品であるうえに、メディア施策もおもしろく、この2020年4月には「導入企業数」を前年同月の3倍以上に伸ばしておられます。
さらに5月9日にテレビCMも再開するなど、余念がありません。これだけでもニュースといえそうですが、さらに5月11日、新機能追加が発表されました。契約書データを自動で読み取り管理できる、その名も「クラウドサインAI」が、2020年夏に提供開始されるとのことです。
新機能 クラウドサインAIとは?
リリース段階ではありますが、これがまたものすごく便利そうな、まさに現場が待っていた機能です。ようするに契約書管理の業務でみんなが手間取っていた、契約情報の整理が「自動化」されるというもの。
たとえば契約書の「契約締結先の企業名」「契約開始日」・・・など8項目が自動で判別されて、クラウドサイン上に記入されるそうです。つまり管理の自動化!
これの何がいいのか? いまいちピンとこない人もいるかもしれません。では、締結が無事終わり、一部を自社用に回収して契約書をとっておくシチュエーションを想像してみてください。保管するだけなので、次に必要になるときまで引き出しの奥やキャビネットや倉庫に運ばれますよね。しばらく目にすることはありません。そして当然ながら、これらすべての契約書の内容をおぼえていることはできません。
となるとあなたも、締結済みの契約書リストをつくろうとするはずです。契約書が締結されると、しまう前にその契約書のタイトルや締結日などのポイントを抜き出して、台帳(たいていは自作のExcelファイル)に転記するわけです。どんな契約書がいま走っているのかや、次の更新のタイミングなどをみきわめるためです。
実は担当者を悩ませ続けるのがこのきわめて素朴な作業、
Excel台帳管理なのです。
転記ミスや転記漏れが起きやすいし、台帳を社内で共有しようとしてもなぜかうまくいかない(理論的には共有フォルダをつくればいいだけなのになぜか実施されにくい)。台帳の「最新版」が行方不明になることが多いです。こういう地味な作業ほど「いつでも」「だれでも」できることであるがゆえに、誰もが「誰かがやってくれるだろう」と思い込むようです。
クラウドサインAIは、契約締結と同時か、または紙で締結した契約書でもスキャンしたPDFファイルをクラウドサイン上にアップロードすると同時に、自動で情報記入してくれるというのです。Excel台帳の不備に苦しめられてきた担当者にとってまさしく救世主となるでしょう。
ちなみに自動判別される8項目は、
契約締結日・契約開始日・契約終了日・自動更新の有無・解約通知期限・管理番号・取引金額・契約相手の名称
と発表されています。なかでも「契約終了日」の管理が特に面倒なことが多いので、これだけでも非常にありがたいわけですね。
LAWGUE 契約書の業務効率化で新機能
もうひとつ、個人的に大注目しているニュースが、5月14日に発表されたLAWGUEさんの新機能。こちらも夏に実用化されるらしいですが、リリースからわかることをまとめます。
ひとことでいえば「文書類型を問わない有利・不利判定のAIモデル構築に成功」した、という情報です。
これ、すごくないですか?
そもそもLAWGUEとは、契約書のエディタ(開発、提供は株式会社日本法務システム研究所)サービスなわけですが、もちろんただのエディタではありません。類似条項の検索・比較、欠落条項のサジェストといった、条項そのものの作成支援機能、編集履歴の確認や蓄積ができることによるレビューフローの刷新、さらにオンライン上で作成から締結まで一直線になるという、まあとにかく契約書実務にとって最高峰のエディタなのです。
さらに今回のリリースによりレビュー機能、しかも「全く異なるアプローチ」により「日本初」となるレビュー機能が搭載されて「文書類型を問わない」判定ができると発表されました。この、「文書類型を問わない」というところが、一瞬すごすぎて意味が分からなくなりそうな程すごいポイントです。
「契約書レビュー機能」というのは、これまた契約法務を新時代に導く画期的なリーガルテック領域、ジャンルです。これを提供するリーガルテックは複数ありまして、たとえば私のお気に入りでいうところのAI-CONなどですが、実際使い勝手も良く、すでに十分に実用的になっています。
本来、契約書のチェックはもちろん人間がやってきたわけですが、これができるかどうかは、知識と経験と、日々のアップデートによるし、同じ人がやるとしてもチェックにかけられる時間や、十分に背景情報が与えられるかどうかなどにも左右されるという、クオリティの定量化が特に難しい業務でした。
ようするに「誰」がやるべきかや「どの程度」までチェックするのか、などがいまひとつはっきりしないわけです。もちろん、リーガルテックといえどもこれらの問題のすべてを打ち消せるとはいいません。しかし契約書レビュー機能は、もちこまれた契約書をいちど機械的にレビューしてふるいにかけるという手順を生み出し、想像以上に契約書チェックの業務負担感を軽減させました。
とはいえ僕の知る限り、チェック可能な契約類型は決まっているのが通常でした。つまり、あらかじめどのようなタイプの契約書かをみてから、これらのレビューサービスにかけていると思います。
レビュー機能分野が急速に進歩
今回のLAWGUEがリリースで発信しているのは「文書類型を問わない判定」です。
今後は契約書の種類を考える必要はなく、ひとまずどんどんLAWGUEの判定にかけてしまえる、という使い方ができることになります。それどころか(文書類型を問わないのですから)、もはや対象は契約書ですらなくてもいいことになります。
おそらく請求書や発注書、なんらかの規約や報告書の類であっても、ミスやトラブルにつながりそうなものであれば注意喚起してくれそうなのです。実際に動いているところを早く見たいですね。AIが、どのような文書にどのような指摘を返してくるのか、本当に楽しみです。民法が大きく改正、施行された
リーガルテックがもたらすもの
契約書(ビジネス文書)レビュー機能の分野が、これからもますます進歩を続けることにより、当然期待されるのは、ミスや見落としが減ることによる業務効率化です。特にありがたいのは、法改正や他社の契約事例によってアップデートされたレビュー要素を、いちはやく自社の契約実務に反映させられるようになることでしょう。
また、ここからは将来予想ですが、たとえば中途解約率と特定の契約条件の相関など、リアルな取引と契約内容との間の相互作用を経営分析するような活用が考えられ、契約法務そのものが新たな視点を手に入れられます。これによりたとえば自社にとって最適な業務委託契約書フォーマットを、より説得力のある形で自動的に抽出するなどが可能になるかもしれません。
今後もリーガルテックの動向に目が離せませんね!
(なお、上記はあくまで僕個人の感想、印象です。詳細な情報や正確性のための情報は各サービスのリンク先でご確認ください。)
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