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契約書をつくってみよう! NDAのひな型と解説 【無料・商用利用可能】

NDAとは簡単にいえばある情報を「秘密にしましょ!」「うんわかった。」と約束する契約です。実際には「情報とは?」「秘密にするとは?」などを超具体化する必要があり、こまかいことなので契約書にするわけです。では、実際NDAをつくりたいときはどうしたらいいでしょうか? ええ、そうですね。ひな型ですね。

たとえば、あなたの会社がはじめての取引相手と業務提携の交渉をするにあたり、事前にNDA(秘密保持契約書)を締結しておきたいとき。こちらからたたき台を提案するために、ひな形を用意しておきたいですよね。あとは署名してもらえば済みますから。本記事では、そんなシチュエーションでつかえるひな形を示したうえで、簡単に注意点を解説します。

早速ひな形から見ていきましょう。経済産業省の秘密情報の保護ハンドブックの資料にちょうどいい雛形がありました。コピーしてから解説を読んでみてください。

■NDAのひな型(経済産業省資料より作成)

            秘密保持契約書
株式会社(以下「甲」という。)と 株式会社(以下「乙」という。)と
は、 について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(秘密情報)
本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。
① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

第2条(秘密情報等の取扱い)
1.甲又は乙は、相手方から開示を受けた秘密情報及び秘密情報を含む記録媒体若しくは物件(複写物及び複製物を含む。以下「秘密情報等」という。)の取扱いについて、次の各号に定める事項を遵守するものとする。
① 情報取扱管理者を定め、相手方から開示された秘密情報等を、善良なる管理者としての注意義務をもって厳重に保管、管理する。
② 秘密情報等は、本取引の目的以外には使用しないものとする。
③ 秘密情報等を複製する場合には、本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製物は、原本と同等の保管、管理をする。
④ 漏えい、紛失、盗難、盗用等の事態が発生し、又はそのおそれがあることを知った場合は、直ちにその旨を相手方に書面をもって通知する。
⑤ 秘密情報の管理について、取扱責任者を定め、書面をもって取扱責任者の氏名及び連絡先を相手方に通知する。
2.甲又は乙は、次項に定める場合を除き、秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。
3.甲又は乙は、法令に基づき秘密情報等の開示が義務づけられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。

第3条(返還義務等)
1.本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに相手方に返還するものとする。
2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれているときは、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていないときは、その旨)を相手方に書面にて報告するものとする。

第4条(損害賠償等)
甲若しくは乙、甲若しくは乙の従業員若しくは元従業員又は第二条第二項の第三者が相手方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、甲又は乙は、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第5条(有効期限)
本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする。

第6条(協議事項)
本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。

第7条(管轄)
本契約に関する紛争については○○地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。
本契約締結の証として、本書を二通作成し、両者署名又は記名捺印の上、各自一通を保有する。

令和 年 月 日
  (甲)
  (乙)

(経済産業省の秘密情報の保護ハンドブックの資料より引用)

どんなところに注意すればいい?

以上がひな型です。シンプルですよね。あまり複雑なものをつくってしまいますと、汎用性に欠けるのでこれくらいシンプルなものが便利です。次にバリエーションを説明します。

秘密にする対象について

第一条は、なにが秘密情報かをあらわしている部分です。ここをアレンジすることによって実際にやりとりされる秘密情報を対象に含めることができます。たとえば業務提携に先立ってこのNDAを交わす場合には、業務提携へ向けた検討の事実を秘密情報とすることが考えられます。「検討中である」ということも秘密にするのかしないのかですね。

また、秘密情報をどう呼ぶか(たとえば「秘密情報」と呼ぶのか、別の呼び方をするのか)についてはできるだけ特定したほうが良いとされています。ひな型では「一切の情報」と書いていますが、実情にあわせて具体的に「〇〇業務に関する企業秘密」などと書ける場合はその方が好ましいということです。

対象となる情報をより明確にするには?

秘密保持の対象を明確化することは、NDAによって秘密にする対象を間違えなくすることにつながります。明確にどの情報を守ってほしいのか指定できるということです。経済産業省の資料には、以下の「追加条項サンプル」が示されていますので、ご紹介します。

別紙をつかうことで特定する場合

甲が乙に秘密である旨を指定して開示する情報は、別紙のとおりである。なお、別紙は甲と乙とが協力し、常に最新の状態を保つべく適切に更新するものとする。

口頭や映像等で情報が開示される場合


甲又は乙が口頭により相手方から開示を受けた情報については、改めて相手方から当該事項について記載した書面の交付を受けた場合に限り、相手方に対し本規程に定める義務を負うものとする。

口頭、映像その他その性質上秘密である旨の表示が困難な形態又は媒体により開示、提供された情報については、開示者が相手方に対し、秘密である旨を開示時に伝達し、かつ、当該開示後○日以内に当該秘密情報を記載した書面を秘密である旨の表示をして交付することにより、秘密情報とみなされるものとする。

相手方からNDAを要求されたら注意しよう!

NDAの内容は定型的(もはや儀式的?)にみえますが、よく読むと相手方だけに有利になっていることや、自社が望んでいない利用や開示範囲が書かれていることがあります。たとえばあなたの会社の情報が、相手方でどのように使われるのか、第三者に開示してもいいのかいけないのかという、情報の利用目的や開示範囲には警戒しましょう。

まとめ「NDAはシンプルに!」

・シンプルがいい!
・ひな型通りにまずはつくってみましょう
・情報の特定は具体的な方が望ましいです
・相手方から渡されたNDAはよくチェックしましょう
・特に利用目的や開示範囲に注意して読みましょう

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