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契約書の基礎固め #6 署名欄の書き方

契約書の「基礎」を確認するための記事です。契約書についてこれから詳しくなりたい方はぜひ読んでください。重要なポイントが「一気に」学べます。

契約書の基礎を短時間で身につけたい人のために

「どこから学べばよいかわからない」「契約書がチェックできるようになりたいけど、読んで何が分かればいいのかもわからない」

といった疑問にこたえます。

本記事の内容

・契約書の署名欄の書き方を解説します


署名欄の書き方は?

契約書には住所、肩書を書いたうえで、当事者の名前を署名をし、通常はハンコを添えます。署名の方法ですが「署名」、「署名押印」、「記名押印」のいずれかによります。

「署名」とは、自分の手で名前を書くことであり、「署名押印」はその署名の近くにハンコをおすことです。「記名」というのは、名前を手書きするのではなくてパソコンなどで文字を印字したもの、ということです。ビジネス契約の多くは署名欄が「記名押印」によることとなります。

署名欄には住所、肩書を必ず書きます。また押印は原則として「実印」を用いて下さい。法人との契約であれば、当事者の表記は法人名であり押印は法人代表印です。個人との契約であれば、当事者の表記は個人名となります。

結果、署名欄は以下のようになります。


甲 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇 〇 〇 〇     印
乙 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇 〇 〇 〇     印

ビジネス契約書にはだれが署名すべき?

ビジネス契約には社長さんが署名をしますよね。つまり署名する当事者の肩書は通常「代表取締役」です。会社を対外的に代表するのは社長さん、つまり代表取締役だからです。当事者が個人の場合には肩書がないこともあり得ます。

部長さんの署名ではNGなのか?

会社(法人)との契約では、代表取締役(法人の代表者)に記名捺印していただく必要があります。ただし企業も規模が大きくなると「担当部長名による記名捺印」などが普通に(職務権限規程等による裏付けを整えたうえで)行われています。しくみとしては、これら部長さんなどにたいして、会社から決裁及び契約締結の権限が与えられていて、この権限にもとづいて契約の締結が行えることになっているのです。

ただ、相手方の当事者にとっては、その企業でどのような権限移譲がされているのかなどはよくわからないし、とはいえいちいち確認するのも難しいです。そこで、原則的対応としては、やはり代表取締役の記名押印がベストと考えつつ、状況から見て決裁権が委任されていることが明らかな場合にのみ、部長さん等のハンコを受け入れるという対応になります。

もうすこしこの部分を法律的に掘り下げると、会社法の規定があります。

会社法
(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
第14条
1.事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2.前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

このように会社法は使用人が委任を受けて裁判外の行為をすることを認めていますし、表見代理などのルールも考え合わせると、部長さんに権限が実際に委任されているか、あるいは相手方が委任されている(代表権がある)と信じて契約を締結した場合は、原則として有効に扱われることになります。さらに、もし記名捺印した方の権限が制限されていたとしても、相手方がそれを知らないでした契約は有効とされる可能性が高いといえます。

まとめ

署名欄に書くのは、当事者の署名であり、通常は住所、肩書、ハンコもセットで記載されます。

甲 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
〇〇〇〇株式会社
代表取締役 〇 〇 〇 〇     印

権限が委譲されている者による記名押印も、原則として有効ですが、できる限り代表者による記名押印を求めましょう。

クイズ

適切な対応はどれですか?

①ハンコがなかったので、記名ではなく社長の署名のみで済ませた。
②ハンコがなかったが、社長の記名ですませて、念のため副社長の名前も記名しておいた。
③署名欄に有名作家がペンネームを記名したいと言われたが、無効になるので断った。


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