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契約を上手に解除する方法 契約解除通知書のひな形を完全公開【明確かつ穏便に解除する方法】【具体例/ひな形のWordファイル付き】

解除したい契約があるが、契約解除通知書のつくりかたがわからない方のためのひな形

すぐに解除したい契約があって、穏便かつ確実に解除したいから「解除通知書を送らなきゃ。」というときのための「ひな形と解説」を整理しました。

「今月中にあの契約を解除したい。」
「自動更新なので、解約の通知をしないとまた更新されてしまう。」
「あとくされなく、正式に解除する必要がある。」
「明確かつ穏便に契約を解除したい。」
「契約解除通知書のテンプレートがほしい」

そんなときはこの記事で今から公開するひな形をコピーして、契約解除通知書をつくりましょう。

ただし、契約解除には注意点もあります。そこで、あなたが適切に解除できるように解説します。すぐ編集にとりかかれるようにWordファイルも末尾に添付しておきます。僕のノウハウをつめこんだ「かなり具体的で便利な内容」になっていると思います。

ぜひ参考になさってください。

契約の解除とは?

先に少し説明しておくと、契約が「終了」するのは、本来は「契約期間が満了したとき」です。ゆえに、通常は契約の終了まで待つ必要があります。でも、何か「理由」がある場合は途中で契約をストップできます。たとえば「相手が約束を守らなかった場合」などです。これが契約の「解除」です。

契約による解除と民法による解除


どのように解除できるのかは、契約で決めることもできるため、たいていのビジネス契約書には「解除条項」があります。解除条項はどのような場合に、どうやって解除するのかという、その契約独自のルールです。よって、あなたが解除しようとするときも事前に必ず契約書を確認しましょう。

もし契約書が締結されていないとか、契約書に解除のルールが書いていない場合は、どういう約束になっていたのかが分かりませんから、民法のルールに従って解除することになります。民法による解除は、たとえば相手が「契約違反」をした場合には、あなたの意思表示で契約を解除できることになっています。(債務不履行による解除といいます。)

もう少し詳しく言うと、民法では、原則としてまず「債務不履行」をした相手方に相当の期間(ある程度の猶予期間)内に契約を履行するよう「催告」をします。そしてて、相手がそれでも履行してくれない場合に、あらためて解除の意思表示(契約解除通知書を郵送するなど)をすることで解除できる、という決まりになっています。

補足:例外的に催告が不要な場合もあります。①定期行為といって、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない契約の場合に、契約の相手方が履行をしないでその時期を経過したときには、催告することなく契約の解除をすることができることになっています。誕生日のケーキ、結婚式のウエディングドレス、成人式の着物、のようなケースで、納品がなかった場合をイメージするとわかりやすいと思います。また、②契約の履行不能といって、債務の全部の履行が不能となった場合も、直ちに(催告することなく)契約を解除できます。さらに③相手方が履行拒絶した場合も同様となります。

本来「勝手」には解除できないことに注意

ただ、あなたが解除したい理由は、相手方の債務不履行とかではないかもしれません。たとえばあなたが「特に理由はないけれど都合が悪くなったのでやめたい」という場合、相手方には明白な落ち度がないので、相手方の債務不履行にあてはまりません。このように「使える解除事由」がないと、本来はじっと我慢して契約終了を待つか、あるいは相手方と話し合って、合意のうえで契約を終了させるしかありません(合意解除といいます)。

理想をいえば契約書にあらかじめ「〇か月前までに解約の予告をしたら解約できる」のような解除のルールが書いてあると、お互いに納得できるし、契約に基づく解除なので、もめなくて済みます(約定解除といいます)。だからやはり契約書をよく読んでから検討したほうがいいです。

解除で「損害賠償義務」を負うこともある

ビジネスでよく用いられる「業務委託契約」の多くは「請負契約」か「委任契約」に分類されます。これらの契約には民法上、特別の解除権が認められています。

請負契約は、仕事が完成する前なら、注文者はいつでも契約の解除をすることができるとされています(ただし、解除をする注文者は請負人に対して損害を賠償する必要があります)。

委任契約は、当事者のどちらからも、いつでも契約を解除することができるとされています(ただし、相手方にとって不利な時期に委任契約を解除した場合には損害賠償義務を負います)。

いずれにしても損害賠償義務が定められているため、もしあなたが業務委託契約を自分の都合だけで解除すると、相手の損害を賠償する義務が生じるかもしれません。

契約解除通知書のポイント

というわけで、契約解除通知書には、正当または合理的な解除であることを確認のうえ、以下の3つのポイントを必ず含めてください。

契約解除通知書に書くポイント
①解除したい契約を特定する(締結日、契約名を明確に)
②結論がわかるように(解除します!)
③解除の理由を添える(なぜ解除? 猶予は?)

より具体的にするために、ひな型をつくりました。「契約にしたがって解除する」タイプと「相手が契約違反したから解除する」最後通告タイプがあります。


契約に従って解除する場合のひな型(約定解除)

もともと契約書に解除事由が書いてあり、それに従って解除する場合の解約通知です。契約通りの解約(約定解除)なので、あくまでも事務的な意味で書類を作成するものです。

例1 解約通知書

                     〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇様
                       氏名

            契約解除通知書

私は、〇年〇月〇日付けにて貴社と〇〇〇〇契約を締結いたしましたが、当該契約第〇条に基づき、〇年〇月〇日を持ちまして解約いたしたく、本状をもってご通知申し上げます。

以上

例2 不動産の解約通知

不動産の賃貸借契約を解約する場合のひな型です。

                     〇年〇月〇日
〇〇〇〇御中
             解約通知書

賃貸借契約について、下記の通り解約したく、本書面をもってご通知申し上げます。
               記
1物件名
2所在地
3契約者
4連絡先
5解約日

以上

「相手が契約違反したから」解除する場合のひな型(債務不履行解除)

相手方の契約違反(いわゆる債務不履行解除)を理由にこちらから請負契約等を解除する場合は、契約解除通知書にもそれが明確にわかるように解除の理由を記載しましょう。あくまでも相手に不履行があったことを明記します。仮に(債務不履行が無く)あなたの勝手な解除だとなれば、民法641条(注文者による契約の解除)によってあなたに損害賠償の義務が生じかねないからです。

参考:民法 641条
(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

それと、解除の時期的な「猶予」も通知しましょう。債務不履行に対する解除の時期については、民法541条には「相当の期間」を定めて「催告」をしてから解除できる、と書いてあるからです。

参考:民法第541条
(履行遅滞等による解除権)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 

相手にも「猶予」を与える必要があります。よってたとえば「本書面を受領後、7日以内に履行しない限り〇〇契約を解除します」とか「本書面を受領した日から7日の経過をもって解除します」などと記載します。

別に「7日」でなければならないわけではなく「2週間以内に」や「8日以内に」などとなっていても、間違いではありません。そのビジネスの性質上、現実的に考えて極端に短くなければOKです。

例3 契約解除通知書のひな型(相手方が契約違反をしたことに対する解除)                     

令和◯年◯◯月◯◯日
株式会社◯◯◯◯
代表取締役 ◯◯◯◯ 様
                     株式会社〇〇〇◯
                               ◯◯◯◯
             契約解除通知書

当社は、貴社と下記の内容の◯◯◯◯に関する業務委託契約を締結しましたが、貴社が当該業務委託契約の第〇条に違反し、◯◯◯◯の業務について契約通りに履行をせず、再三にわたる催告にもかかわらず改善がみられないことから、貴社の当社に対する債務不履行は明らかであり、このままでは当該業務を正常に継続することができないと判断いたしました。
つきましては、◯◯◯◯年◯月◯日をもちまして下記契約を解除しますので、本書面をもってご通知申し上げます。
                記
1.契約日  平成◯◯年◯◯月◯◯日
2.内容   ◯◯◯◯に関する業務委託契約

以上 



例4 契約解除通知書のひな型(相手が納期を遅延)/ 民法641条を排除する念押し

                    令和◯年◯◯月◯◯日
株式会社◯◯◯◯
代表取締役 ◯◯◯◯ 様
                  東京都◯◯市◯◯町◯-◯-◯
                          ◯◯◯◯
            契約解除通知書
拝啓 貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。日頃は大変お世話になっております。
ところで、貴社と弊社との間に〇〇〇〇年〇月〇日付で締結した○○○〇業務委託契約(以下「原契約」といいます。)についてでございますが、本日以下の通りご通知申し上げます。
原契約にて規定されました〇〇製品の納期は、〇〇〇〇年〇月〇日とされておりました。しかしながら貴社がこの納期を遅延し、その後の弊社からの催告後も、納入されなかったので、貴社は当該納期に関する規定を遵守されていません。
弊社といたしましては、このままでは原契約に基づく業務を正常に継続することができないと判断いたしました。つきましては、本書面を受領の後、〇日以内に、原契約に規定する貴社の債務を貴社がすべて完全に履行されない限り、弊社は本書面にて、当該〇日の経過を持ちまして原契約を解除することといたします。(尚、当該契約の解除は民法641条に基づく趣旨ではございません。)
以上誠に遺憾ながらご通知申し上げます。

以上 


例5 契約解除通知書の実例(請負契約違反に基づく違約金の請求)

                         年  月  日

          業務委託契約解除通知書

( 受 注 者 ) 様
            〇〇県〇〇〇〇〇公社理事長

  年  月  日付けで貴社と委託契約を締結した次の業務について, 貴社が土木設計業務等委託契約約款第41条第1項第○号に該当すると認めたので,当該規定により当該委託契約を解除します。 ついては,土木設計業務等委託契約約款第41条第2項の規定により違約金 として,  年 月 日までに金○,○○○,○○○円を,別途送付する納入通知書にしたがって支払ってください。
1 委託業務名
2 業務委託料
3 履 行 期 間  着手   年 月 日  完成   年 月 日

まとめ

・まずは正当な解除かどうか確認する
・契約解除通知書は、日付、タイトル、当事者名称、契約書の名称を書く
・どういう理由で解除するのか? 具体的な解除理由を確認する
・履行の催告の「相当の期間」は1週間前後で任意に決めてOKです
・原因が相手の債務不履行の場合に自己都合の解約と誤解されないように明記しましょう(当該契約の解除は民法641条に基づく趣旨ではございません。)

以上がひな型です。自信をもって契約解除にチャレンジできるのではないでしょうか。良い結果となりますことを願っています。

追伸


申し遅れましたが、私は契約書の専門家として平成15年から行政書士をしている竹永 大(たけながひろし)といいます。

竹永行政書士事務所のホームページはこちら


スピーディにきちんとした契約書を誰でもつかえるようにするために、契約書の修正や相談対応をしています。noteのほうでは、この記事のように契約書のひな形とその解説をしていきます。

noteのほうですが、おかげさまで開始から80日ほどで、8万人以上の方にご覧いただくことができました(2020/5/20現在)。
→その後、2021年11月時点では1,246,325人にご覧いただけました(2021/11/10追記)
→さらにその後、2023年3月時点で1,655,988人にご覧いただけました。(2023/3/30追記)

もしも契約書がなかったら、社会はトラブルだらけです。契約書は、トラブルの予防に役立ちます。これまでの長年の経験から、実際に使ってきた具体的な実例ひな形を公開していきます。あなたとあなたのビジネスを守る助けになれば幸いです。

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あわせてお読みください


商取引につかえる契約書のひな形をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


追伸2 解除できるのかどうか? まだ不安な方のための補足情報と、「実践ひな形3種」追加

もう少し詳しく知りたい方のための情報と、さらに使えるひな形を追記しました。メンタル面にまでふみこんだ「リアル」な内容です。

補足記事の内容は・・・
①経験則上の、契約解除戦略(実践編)と契約解除の心構え(メンタル編)
②契約解除につかえる、実践ひな形3種
(1. 自動更新の契約を更新せず解約する通知書
2. 契約を中途解約する旨の通知書
3. 解約合意書)


①経験則上の、契約解除戦略(実践編)と契約解除の心構え(メンタル編)

原則として、契約は守るのが原則です。しかし、解除する必要が出てくることがあります。ゆえに、民法にも解除の規定があるのは上記でも説明したとおりです。しかし、多くの場合、そこまではっきりした原因があるわけではなく、単に「やめたくなった」ということも多いです。

法的には、解除にも種類があります。そして、まんべんなく解除方法を選択するのではなく、経験則上、「優先順位」があると思っています。

・解除は「戦略」的に

結論からいうと、契約を解除したいとなった場合にまず真っ先に目指すべきは「合意解除」です。ここは特に強調しておきたいのですが、とにかくいかなる契約においても「合意解除」にトライすべきです。当事者が合意すれば、それがもっとも穏便に契約を解除できるからです。やりかたとしては、決まったスタイルはありませんが、まずは「契約をやめたい」と申し出て話し合うことです。

・合意解除のやり方

それに対して相手がどう出てくるかはわかりませんが、まずは交渉の出発点として、あなたの意向を伝えることが肝心です。伝え方ですが、理想的には(相手とフランクに会話ができる状態であれば)口頭、メール等で打診するところからはじめます。

その後最終的には、確認の意味で解約通知書を出すのが、一般的な流れになります。相手から書式が送られてくる場合もありますし、そういうのはない場合ももちろんあります。このあたりは完全にケースバイケースです。ただ、これだけで解除できる事例も多いのです。

・約定解除のやり方

次に、合意解除が難しい場合に選択すべきは、「約定解除」です。つまり、もともと契約したとき、解除についてはどのように記載してあったのかを確認して、その記載に従って解除するわけです。

たとえば自動更新条項がある場合、たいていは甲乙のどちらかが通知しないと、契約が同条件で数年間更新される、といった意味のことが書かれています。そこで、こちらから通知することで、その契約の期間満了で契約を終わらせるわけです。その場面でつかえるひな形(不更新の通知書)を、下記につけておきます。

ここまでをまとめると

①まず、「合意解除」を目指す
②契約書を確認して、「約定解除」でもよい

この二点を意識してください。

・メンタルの重要性

解除の場面では、「なんとなく言い出しにくい」「解除すると伝えるのが億劫」「ちゃんと解除できるのか不安」という心理状態になることがあります。不慣れな場合は特に、解除を伝えるのが悪いような気がしたり、タイミングが気になったりします。ここで重要なことは、解除で悩む人はとても多いという客観的事実です。それだけ契約の解除はこじれやすいものです。

実は僕も以前は軽く考えているところがありましたが、さまざまな経験を積むうち、「解除は締結より難しいことがある」とわかってきました。

解除の場面はほんとうに千差万別で、前後関係もあって、一概にいえることではありません。それでつい後回しにしたり、解除したいけれど我慢してしまうこともあります。もちろん「こじれるよりも、長い目で見れば解除しないほうが穏便だ」とよく考えたうえで判断したのであればそれでもいいのですが、本来解除できる契約なら、解除してなんら差し支えないはずです。

すべてがそういう風ではありませんが、なかには解除が思うように進まず、苦労するパターンもあるとあらかじめ知っておき、心の準備をしておきましょう。

②契約解除につかえる実践ひな形3種

前述のひな形例に加え、あらたにひな形を追加します。こちらの方がより、具体的な内容になっています。編集することにより、さまざまなパターンに応用できます。

・自動更新の契約を更新せず解約する旨の通知書のひな形

・契約を中途解約する旨の通知書

・解約の確認をするための合意書(解約合意書)


以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

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