本とチャリと音楽と ~真保裕一『おまえの罪を自白しろ』の感想~
こんにちは。ようやくチャリ旅意外の記事を書きます。今日は、この前読み終わった、真保裕一『お前の罪を自白しろ』という小説の感想を書いてみようと思います。ネタバレを気にせず書くので、まだ読んでなくて気になる方は、この記事は飛ばしてください。
政治家一家である、宇田家の孫娘が誘拐され、犯人から要求されたのは、孫娘も祖父にあたり、代議士でもある宇田清治郎が会見を開き自分自身の罪を自白すること。自白の内容とそれを取り巻く政界の動きと、犯人が誰なのか犯行動機は何なのか、の両軸で物語が進んでいきます。
主人公として描かれ方しているのは2人でした。一人は宇田清治郎の次男で秘書でもある宇田晄司と、誘拐事件を刑事として捜査する平尾宣樹。二人は大きく交わることなく、宇田晄司は誘拐された自分の姪である柚葉を助け出しながら、汚職に関する父親の自白の影響をどのように最小限にとどめるかに奔走し、平尾宣樹は犯人を逮捕するために、足で犯人を追います。
最終的には、会見で宇田清治郎が自分の犯した汚職を包み隠さず話すことによって孫娘は解放されます。また、宇田晄司提案の奇策によって、その自白の影響を逆手に取り、一家として有利に政界で活動できるようにしつつ、宇田晄司自身が政界に進出し始めるところで終わります。また、犯人の捜査に関しては、こちらも宇田晄司の妙案によって、犯人自ら姿を現させるようなハッタリの会見を開き、見事逮捕に至ります。
一貫して描かれていたのは、いかに政界の人間が利己的であるか、というところでした。孫が誘拐されるという悲惨な状態の宇田清治郎に対して、誰もが上辺だけの気遣いを施し、裏ではどう自分の立場を守るか、もしくは暗躍するか、しか考えていない、という風に描かれていました。
ここからは感想になります。全体として登場人物の立場と関係性を把握するのが難しかったです。筆者はより政界の内部をリアリティをもって描いていたと思うのですが、役職を書かれても政治に詳しくない人は、それがどう言うポジションなのかが、パッとわからないですし、それ故に覚えにくかったです。ただ、細かい役職名なども記述されているので、リアリティがあって、むしろ勉強にはなりました。
また、最終的には主人公である宇田晄司の「おれつえぇゲー」で終わりました。最初は、政界に興味の無い出来の悪い次男として描かれているのですが、物語の終盤になるにつれて、妙案や奇策を提示するようになったり、政党の幹事長と臆さずに直接話して主張を通したり、犯人逮捕の助言を警察に行うのも宇田晄司だったりで、結局は主人公の才能が開花していく、みたいな展開に変わっていきました。それ自体は特に問題はないですが、あまりにも頭がキレたり、宇田晄司のサクセスストーリーとして上手くいきすぎ感があって、若干の違和感を感じました。
良かった点としては、最後まで犯人の動機の予想が全くつかなかったところです。わざわざ政治家の罪を自白させるためだけに、リスクのある誘拐を行う意味が最後まで登場人物も読者もわからない仕掛けになっていました。伏線もほとんどなく、読者も気付きようがない展開だったと思います。ミステリーとしては、この展開は御法度かもしれないですが、僕的には最後まで飽きずに読むことができてよかったな、と思います。そして、犯人も全然ストーリーに登場してこない人物だったりして、よくある「こいつが犯人だったのか!」的な展開じゃなかったのも、逆に新鮮で良かったです。
リアリティを重んじた作品だったかな、と思います。それ故に、大きな伏線回収や予想だにしない犯人だったりと言ったような展開はなかったです。地に足のついた、政治と警察の業界への風刺とも見受けられました。強くお勧めはしないですが、読んで損はしない作品かと思います。
以上です。拙い文章ですみません。次はもっと言語化能力を上げて記事を書きます。
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