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#33 ドトールクロックムッシュ事件

一度好きになると、ぞっこんタイプなワタシ。
人でもそうだし、食べ物でもそうだし、筆記用具とかもそうである。
個人的に綺麗に書けるお気に入りのペンでないと嫌で、ノートの字が汚いと破って捨ててもう一度書いたりする。
アニメのアカギにはまっていた時期は、一日に何度も繰り返しアカギを流し続けていて、勉強中もバックミュージックとして採用していた。捗る、捗る。

その偏愛歴の中でも、【ドトールのクロックムッシュ】は愛が重すぎた。
お値段はお手頃価格なのにも関わらず、パンの厚みとハム・チーズのバランスが最高で、美味しさに感動をしてからずっと食べていた。
とにかく好きで、立川でアルバイトをしていた時は、バイトよりもお昼のクロックムッシュを楽しみにしていた。

当時付き合っていた彼はエレカシの宮本さんが大好きで、その宮本さんもドトールのミラノサンドCしか食べない偏愛癖があり、ことある事にクロックムッシュとハッピーセットの様にその話をされていた。(ちなみに、同時期に練り物にもはまっていた私は、その彼に「練り物ーズ」という練り物の野球チームのメンバーを考えてほしくて、手伝ってもらったことがあった。オトナないい彼であった。)

そんな大好きで大好きでたまらないクロックムッシュ。
ある日もクロックムッシュを悟空以上にわっくわくしながら、スキップを奏でるような軽い足取りでドトールに向かった。
注文しようしたところ、衝撃だ。クロックムッシュが突如メニューから姿を消しだのだ。
「く、、、クロック、、ムッシュは、、、」
店員さんに聞いたところ、販売を停止したとこのこと。
頭の中はクロックムッシュでいっぱいで、その大好きなクロックムッシュを裏切るなんてことは出来ず、その日は泣く泣くドリンクだけを頼み背を丸くして飲むのであった。

原材料費の値上げのせいなのか、売上が良くなかったのか。
私がもっとお金持ちでクロックムッシュの売上に寄与できたら、こんなことにはならなかったのか。
そう思い、ツィッターで悲しみを吐露したところ、「系列店のエクセシオールでは、モーニングでクロックムッシュを出してますよ」との情報が。
善は急げ。翌朝、早速早起きをしてカフェに向かった。
(またもや同じような悲劇を繰り返さないために)と少々鼻息を荒くして、世界中のドトール系列のクロックムッシュ保護団体の代表の様な面持ちで入店。
「クロックムッシュのセットで。」
迷うなんてことはなく、目をギンギンにして注文。
やや小ぶり感だが、クロックムッシュが手元に届く。

まずは一口、、、。
(何かが違う)
さらにもう一口。
(ち、、、違う)

泣き崩れそうになった。
(20代後半のいい大人が、ここで泣くわけにはいかない)という世間体が自身の中にもあるのだと再確認しつつ、目の前のクロックムッシュは似て非なる物であった。
私が花子さんだと思って話しかけたら違う人であったような感覚だ。

すぐさま携帯を取り出し、【ドトール クロックムッシュ】と検索をかける。
すると、どうやら半年後にリニューアルするための休息期間のようなものであるという記事を見つけた。
捨てる神あれば拾う神あり。目の前の花子は花子でなかったが、本物の花子は少しだけお休みをしていただけであった。

そうとわかれば、その半年間は再販するクロックムッシュの事をドキドキしながらずっと考えていた。
山崎まさよしがいつでもどこかに君の姿を探している様に、向かいのドトール、路地裏のドトール、そんなところにいるはずもないのに、目の前を通るたびに看板を眺めては再販の日を心待ちにしていた。

---来たる半年後。
またもや、世界中のドトール系列のクロックムッシュ保護団体の代表の様な面持ちでドトールに現る。
メニューに目をやる。
「クロックムッシュ」の文字はない。
店員さんに問うても、半年前と同じ様な反応。おかしい。

後にわかったのは、どうやらあのリニューアルのニュースはデマであったようだ。
ショックだし、恥ずかしいし、保護団体の代表を辞任しようかと真剣に考えた(就任すらしてないのに)。

今でもあのクロックムッシュを超えるクロックムッシュには会えていない。
「本物のクロックムッシュを食べたら、きっと感動するよ」一流の人はそう言うだろう。
だが、違うのだ。私は、あのパンが少しへなへなして、隙だらけのような一流感がないクロックムッシュが大好きなのだ。
時に店員さんの温め方が甘くて、チーズが全然温まっていないクロックムッシュを出されるのだが、それすらも好きだった。
こんなにも好きなのに、想いは届かないもので。

まだ私はあきらめずに再販を、今か今かと待ちわびている。

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