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男女共同参画:第5次基本計画策定専門調査会

SDGsの達成度で見れば、日本は世界17位ではあるが、SDGs5番のジェンダー平等に関してはかなり遅れを取っている。世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2020」によれば、2020年の日本の総合スコアは0.652、順位は153か国中121位にとどまっている。

このような性別による格差をなくし、男女共同参画社会の実現を日本社会を決定する最重要課題とみなして制定されたのが、男女共同参画社会基本法である。この法に基づいて、男女共同参画基本計画が作られており、第5次基本計画策定専門調査会は第5次の基本計画の策定にあたって作られた有識者会議である。委員名簿を見ると7割程度が女性という偏りがあり、この問題の関心の偏りを表しているようである

答申された第5次計画策定に当たっての基本的考え方を見ると、①あらゆる分野における⼥性の参画拡大②安全・安⼼な暮らしの実現③男⼥共同参画社会の実現に向けた基盤の整備④推進体制の整備・強化とテーマは実に多岐にわたる。政治、行政、コミュニティ、仕事、家庭、教育など個人にまつわるあらゆる問題を性別という切り口で切ってみました、という感じである。

第4次計画と簡単に見比べてみると、ジェンダー・ギャップ指数が低いことに触れられていたり、具体的な指標を設定すべきだとしていたり、かなり本気度が上がっているように見える。

調査会の議論で、興味深いのは、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)と、夫婦別姓の問題について取り上げることで、結果として家族観についてある程度踏み込んだ議論をしていることである。

古くは1972年の男女機会均等法制定以来、性別による差別の根本には家族観の議論が必要であるにもかかわらず、あえて目をそらしてきた感がある。戦前の民法の家制度などへの反省から、政府は家族観についてとやかく言うべきではない、という不文律でもあるのだろうか。第4次計画までは、その点を注意深く避けているように感じられる。

しかし、今回の答申ではアンコンシャス・バイアスという言葉が10回も使われ、固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みについて何度も触れられている。性役割分担意識はもちろん、無意識の思い込みで思い込んでいることの根っこにあるもの、とは具体的には何かといえばこれはほぼ家族観といえるのではないだろうか。であるならば、ここに狙いを定めたのは家族観の転換を迫っていることに他ならない。

そして、旧姓の利用という形で夫婦別姓に切り込んでいる。社会的な旧姓の利用は単に不便の解消ということ以上に、社会と家族を自分の意志で切り離すことができるという意味で家族観の大転換である。

今のところ少子化はジェンダー要因よりも、家族要因が大きいという調査結果もある。緩やかな親族ネットワークである家族から、夫婦だけの家族という形への家族観の大転換が、十分な制度的・社会的変化を伴わず、暗黙的に行われた場合、少子化はさらに進む可能性が高いのではないだろうか。

家族観の転換については全国民にとって最も身近で、考えなければならない問題である。こういう話はタブーを設けてこっそりやるのではなく、もっと大っぴらにやってほしいものである。

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