事業承継の定義(その1)対象者
とても教科書的な入り方になって恐縮ですが、まずは扱うテーマの定義を決めます。「事業承継」とは何を指すのか?ということです。
広義の事業承継とは文字通り、現在の経営者から次代の経営者にバトンタッチすることです。現在の経営者は社長・会長の実質的な最高経営責任者(CEO)であり、オーナー社長である場合もあればサラリーマン社長の場合もあります。また初代社長なのか、すでに何代か継承されてきたのかの違いがあります。
次代の経営者のケースは様々です。創業家あるいはそれに近い家が同族で承継している場合は引き継ぐ人は現経営者の子供になります。長子(長男・長女)が承継することになっている場合、長女が娘婿をとって承継する場合が一般的でしたが、最近は女性がそのまま承継する、長子以外の方が承継するケースも増えています。
図にまとめるとこんな感じでしょうか。ここでは後継者パターンのみを図にしてみました。実際にはまたここからパターン分けが拡がっていきますが、それはまた追々書き加えていきます。
例えば、長男と後継について意志疎通ができている場合、まだできていない場合、長男がすでにご自分の会社で働いている場合、他社で働いている場合、他社が同業種である場合、異業種である場合、それぞれについて後継者としての資質・意欲がある場合、ない場合などなどです。これが長男以外のパターンにもそれぞれ出てきます。最終的にはパターンは約50パターンくらいに分類され、それぞれサポートするやり方、使う手法、関わる対象者、標準的なサポート期間が変わってきます。
最近では単純に後継者に承継するというだけではないパターンも増えています。それは事業承継とともに会社の形態を変えるというケースが増えているからです。
会社を「所有する」(オーナーシップ)、「経営する」「執行する」が分離するという考え方の拡がりから、以前は三つを全部一人が担っていたものが複数の人材で分担する形も増えています。サントリーやトヨタなどのような大企業で創業家がいる場合以外でも普通に分担して「承継」することをするようになってきているということです。
事業承継と同時に持ち株会社制に移行して元々の事業会社も機能ごとに複数の会社に分離、社長も同族、生え抜き、社外からの招請とミックスしてそれぞれに配置という具合です。
こうなってくると単に事業承継するというだけではなく、コーポレートガバナンス上の変革ということにもなります。
従来の単なる社長交代、代替わりというだけでなく事業の在り方について大きな戦略的決定を伴うということも意味しています。
サポートする我々、サクセッションプランナー(事業承継専門家)から見ると、
1)現経営者・経営陣と今後の事業戦略について話し合う
2)どういう戦略シナリオを描くか決め、それにそった事業承継シナリオを選ぶ。
3)シナリオに沿った後継者候補を選抜し、見極め、必要な育成を行い、候補者として最終決定する。
4)現経営陣・上級管理職チームで今後の戦略の落とし込み、後継者との信頼関係、サポート体制の構築を行う。
5)社内外へのアナウンスメント、新体制へのスムーズな移行
6)移行後のモニタリング、チェックと修正アクションの実施
を行うことになります。
次回は事業承継の定義(その2)タイミング について書きます。
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