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『仮面ライダークウガ』第8話感想

第8話 射手 (その2)

 顔を寄せ合って、何かを見つめている五代雄介と椿医師。眼差しは動かさず、ウットリしたような表情と甘い声で椿医師がささやく。「相変わらず、そそるヤツだな、お前」その言葉にビックリしたように眉を上げた五代は、椿医師の方へ目だけ動かすと、「そそりますか?」と目の前のものに目を戻しながら半笑いでつぶやく。

 二人は、五代のレントゲン画像を見ている。顔を寄せ合ったまま、チラリチラリとお互いに視線を送り合う。画像を見ながら椿医師が小さな声で五代に話しかける。「緑になったら、いろいろとすごく感じたと言ってたな」五代が素直に「ハイ」と答える。「いろいろな物が見えて、いろいろな物が聞こえて、芸術は爆発だーって感じで」と笑みを浮かべて話す。

 ねえ椿先生、もうちょっと言い方ってものが……いえいえ、大人の色気をありがとうございます。

 「そのためにかなりの力を使うんだろう」と言いながら、椿医師がレントゲン画像から顔を離して、かがめていた体を起こす。椿医師の顔を見ながら、同じように五代も体を起こす。

 場所はもちろん関東医大病院、時刻は午後2時を回ったところ。椿医師が言葉を続ける。「そしてその結果、恐らく一気に白に戻った」そして五代のお腹の、ベルトがあるであろう辺りに手を当て、器質変化を起こして、まるで輝きを失ったようになっていると説明する。ほうほうという顔をする五代に、椿医師が「見てみろ」と、別の画像を見せる。五代は再び身をかがめて画像に顔を近づける。

 五代の腹部を輪切りにしたCT(MRI?)画像である。それを見ながら五代は「ああ、確かにくたびれてるって感じですねぇ」と納得する。緑の状態は、恐らく全身の神経が緊張して、感覚が何倍も鋭くなると話す椿医師。説明を聞いているのかいないのか、五代は体を起こすと自分のお腹に触れながら、椿医師からそっと離れる。自分のお腹に目を落とし、チラリと隣の部屋に目をやる。隣の部屋では、一条刑事が電話でしきりに何かを話し込んでいる。光の加減のせいか、五代の表情がほっとかれて寂し気な子犬みたいに見える……ええ、私にそう見えるだけです。

 五代の様子を知ってか知らずか、話し続ける椿医師。「精神を集中すれば、遠くの目標をはっきり捉えたり、はるかに離れた場所の音を聞くことができる素晴らしい力になるはずだ」彼の話を聞いているうちに、五代はピンと来たというような顔をして、何度も小さくうなずく。「だからもったいぶって50秒しかもたないのかな?」もったいぶってって言うなw

 パソコンのモニターをかがんで見ていた椿医師が、顔だけを五代に向け、「ま、そんなとこだ」と答える。五代は椿医師に歩み寄り、「もう変身できないってわけじゃないですよね?」と尋ねる。椿医師はお腹のベルト状の石は徐々に回復しているが、あと2時間は変身はお預けだと答える。「2時間か……どっちにしても緑でできることが分かんないとなあ……」と五代は小首をひねりながら考え込む。

 そんな五代の横顔を見つめながら、椿医師が真剣な表情で話しかける。「どうだ、その間もっとじっくりお前の体を調べさせてくれないか?」暗い部屋の中でそんな風にささやかれ、さすがの五代も身の危険を感じたのか、いやいやと首を横に振り、後ずさる。その分だけ詰め寄る椿医師。ライティングのせいか、椿医師のヤバさがより一層倍増されている。

 五代ピンチ!という時、隣の部屋から一条刑事がこちらへやってくる。五代は逃げるように一条刑事に近寄り、何の電話だったのかと尋ねる。一条刑事は浮かない表情で、第0号の被害者の娘(つまりミカちゃん)が行方不明で、ミカちゃんが公衆電話で話した、第0号の捜査が進まないと、死ぬかもしれないという話を五代に伝える。

 一条刑事の話に重なるように、駅の風景の映像になる。電車が通り過ぎると、その向こう側のホームに途方に暮れたように立っているミカちゃんの姿が見える。ミカちゃんのいるホームに電車が入ってくる。

 関東医大の一室。男三人がそれぞれの表情で黙り込む。「そう来られてもな……」と椿医師が言い、一条刑事を見る。思い悩み、顔をそむける一条刑事。二人の様子を見ていた五代が「大丈夫!」と、二人に向けて言う。二人が五代に目を向けると、彼が続けて言う。「あの子は俺に任せてください。ちょうどオレは2時間変身できないし」

 五代の言葉にも、一条刑事は顔を背け、なおも悩まし気に考え込む。椿医師も黙ったままである。五代は笑顔を浮かべ、うなずきながら一条刑事の背中に「大丈夫」ともう一度言う。一条刑事は沈んだ表情のまま、その言葉を背中で聞いている。五代は笑顔を浮かべ、大きくうなずく。

 一条刑事の背中に向け、親指を上げてひときわ強くうなずくと、五代は部屋を出て行く。ハッとして一条刑事は一瞬だけ五代の後ろ姿を見送るが、すぐに視線を外してしまう。その後ろで、椿医師も五代を黙って見送る。そして一条刑事に目をやり、ほのかに笑みを浮かべて、なおも悩むような迷うような表情の彼の肩をポンとたたく。

 一条刑事は振り返って椿医師を見ると、「騒がせて悪かったな」と力なく告げて立ち去る。その後ろ姿に向かって「いい相棒じゃねぇか」と語りかけ、椿医師は微笑む。

 五代と一条刑事と椿医師の、それぞれがそれぞれに対する関係性の微妙な違い(五代と椿医師についてはジャンルが違う)が興味深い場面である。そして、刑事として接したことでミカちゃんを傷つけたかもしれないと悩む、これまで見せたことがない一条刑事の繊細さと、笑顔で大丈夫だという言葉に根拠が出てきたというか頼もしさが出てきた五代も注目すべきところか。早い話、3人ともカッコいいだということだ(結局それかい)。

 ポレポレ店内。おやっさんが、電話機を丸ごと抱えて、店内を右往左往しながら、桜子さんに電話で話しかけている。五代が桜子さんのところへ行っていないかとか、どこへ行っちまったのかとか、さまざまに愚痴っている。しまいには新メニューの話を始めるが、桜子さんに取り込み中だと言われ渋々、電話を切る。

 「取り込み中か……オレも、洗濯ものを取り込もう」と言い、入ってきた男性のお客さんを完全に無視して、おやっさんは奥に引っ込んでしまう。お客さんもお客さんで、引っ込んでくおやっさんのことは気にせず(?)お店の中を見ている。

 電話での話の内容といい、受話器を下にして、電話機本体をひっくり返すように受話器に被せる電話の切り方といい、あいかわらずどこまでが台本でどこまでがアドリブか分からないおやっさん劇場である。

 城南大学・考古学研究室。午後2時30分になろうというころ。心配そうに、桜子さんが振り向く。先ほどまで夏目夫人とミカちゃんがいた小さいテーブルの椅子にはジャンが、その奥の大きいテーブルには夏目夫人が座っている。二人とも固い表情でうつむいている。

 そこへ、バタバタと駆けてくる足音が聞こえてきて、部屋にいた全員が廊下の方へと振り返り、座っていた夏目夫人とジャンが立ち上がる。扉を開け、駆け込んできたのは五代である。桜子さんが「五代くん!」と驚いたように言う。五代は夏目夫人の前まで来ると、息が上がったままで、彼女に話しかける。「お母さん、彼女、本気で自殺なんかするような子じゃないですよね?」

 突然にそんなことを言われ、小さく「え?」と言って夏目夫人は何度か瞬きをする。五代は元気づけるように笑みを見せると、「大丈夫、絶対見つかりますから」と言って右手の親指を上げてみせる。黙って見つめるだけの夏目夫人に笑顔でうなずいて見せると、五代は駆け出す。出て行こうとする彼の前に出て、桜子さんが呼びかける。五代は桜子さんを避けながら、彼女に向かって緑のクウガの解読を頼むと慌ただしく告げて、研究室を出て行く。

 扉が閉まり、バタバタと廊下を駆けて行く足音が聞こえる。ジャンと夏目夫人は黙って立ったままである。「……うん」と間をおいて桜子さんが小さくうなずき、ハッとしたように「それ、言いに来ただけ?」とつぶやく。

 嵐のような男、五代雄介はミカちゃんを見つけることができるのか?ハチ型グロンギにいかに立ち向かうのか?など、ハラハラドキドキのまま、その3に続きます。

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