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『仮面ライダークウガ』第8話感想

第8話 射手 (その5)

 海水浴場の駐車場にやって来た一条刑事の覆面パトカー。誰もいない駐車場に覆面パトカーを停め、一条刑事は車から降りてまず頭の上に第14号がいないかを確かめ、あたりを見渡す。波打ち際に二人の人影を認め、そちらに向かって駆け出す。

 駐車場から砂浜の入り口に降りて来ると、二人のうちの一人が誰かに気付き、ホッとしたように「ミカさん……」とその名を口にする一条刑事。と同時に、ミカちゃんの隣にいるのが誰だかも気付き、「五代?」とつぶやく。

 二人を見つめていた一条刑事は、上をチラリと見やり、「アイツの狙いは……!」と気付くと猛然と駆け出して行く。

 その猛ダッシュぶりとシックス・センスが働いたのか、結構な距離があったのにそれまで海を見ていたミカちゃんと五代が振り向き、五代が「一条さん⁉」と声をあげる。鬼気迫る走りっぷりで、一条刑事が叫びながら近づいてくる。「この上空に、第14号がいる!」駆け寄った勢いで問答無用でミカちゃんを抱えてかばうように伏せる。空を見上げて第14号の姿を探す五代に向かって、一条刑事が叫ぶ。「狙いは五代、君だ!」

 五代は空を見上げ、ベルトを出現させ、ポーズを取って叫ぶ。「変身!」

 パパッと変わるのかと思いきや、じっくりたっぷり時間をかけ、五代の周りに風が渦巻いて砂が巻きあがり、やがて緑のクウガに姿を変える。

 五代が変身し終わったところで、一条刑事は懐を探って拳銃を取り出すと、「受け取れ」と言って緑のクウガに向かって放り投げる。しっかりと受け取り、拳銃を片手で構え、探るように空に向けるクウガ。そこに桜子さんの「邪悪なるものあらば、その姿をかなたより知りて、疾風のごとく邪悪を射抜く戦士あり」という声が重なる。両手でしっかりと構え直した時、一条刑事の拳銃は、緑色に輝く石と金の装飾に彩られ、リント文字が彫られたアーチェリーの弓のような形に変わる。

 一条刑事が腕時計を見て時間を確かめ、空を見上げて「来るぞ!」と叫ぶ。クウガは弓を手に、耳を澄ませる。風が砂浜の砂を巻き上げながら吹きすぎていく。集中するクウガの耳に、第14号の羽音が聞こえる。ハッと顔を上げると、はるか遠くの空に、豆粒サイズに見える第14号が空中で停止している。第14号が腕を差し伸べ、針を発射する。

 高速で落ちてくる第14号の針を、見事に右手の指で挟み取るクウガ。針を足下に投げ捨てると、唸り声とともに、弓を構える。弓の後ろについている引き手を引くと、開いていた部分が絞られるように閉じて、先端にエネルギーが集約されるような、キューンというような音がする。圧縮されたエネルギーの影響で、弓の先端に陽炎が立って揺らぐように見える。

 自分の針を避けられるどころか素手(?)でキャッチされて投げ捨てられるわ、見慣れない武器を持っているわ、いやな予感がするわで動揺する第14号。その第14号に向け、もう弓だか何だか分からない射出型の武器を構えてクウガが狙いを定める。引き金を引き、引き手を離すと、勢いよくエネルギーの塊が先端から打ち出される。一体何なんだこの武器……。

 慌てふためき、逃げることさえ忘れている第14号。過たずエネルギーの塊は第14号の胸に的中する。クウガのマークが第14号の胸に浮かび上がり、光り輝く。叫びながら空から落ちてくる第14号の、ベルトのバックルみたいな装飾が真っ二つになる。真っ逆さまに断末魔の叫びをあげながら海に落ちる第14号。着水と同時に、海面から爆発音がして激しい炎が上がる。

 第14号の最期を見届け、ゆっくりと弓上の武器を下ろすクウガ。

 浜辺で、座ったまま一部始終を見ていたミカちゃん。彼女をかばうように座っていた一条刑事は、ゆっくりと立ち上がる。海を見ていたクウガが、ゆっくりとこちらを振り返る。

 日が傾き、海の上がオレンジ色に染まり、きらめく。監視塔のそばで、夕日を見つめるミカちゃん。そこまでは歩いてきた五代雄介が、大げさに「うぅわあ、くったびれた」と声をあげながら砂浜に座り、監視塔の柱にもたれかかる。そのすぐ後ろから、一条刑事もゆっくり歩み寄ってくる。

 夕陽を背に、一条刑事がミカちゃんと向かい合う。自分をじっと見つめるその真剣な表情に、ミカちゃんが身を強張らせる。一条刑事は顔をほころばせ、優しい声でミカちゃんに「無事で良かった」と話しかける。ミカちゃんは「ゴメンなさい」と何度も謝り、ぽろぽろと涙を流す。泣いているミカちゃんを、優しく微笑んで見守る一条刑事。

 夕陽がまぶしいのか、夕陽を背負って微笑む一条刑事がまぶしいのかもう分かんない……とにかくまぶしいぜ……。

 一条刑事はポケットからハンカチを出し、そっとミカちゃんに差し出す。何てジェントルなの一条刑事……。そして一条刑事は海を振り返る。風と波音とともに、さざめくような少女の笑い声が聞こえた。

第8話 完。

 第7話で緑に変わり、能力の影響で情報の波に苦しんだクウガは、第8話で椿医師のアドバイスで集中することによって能力をコントロールすることに成功します。また、一条刑事は桜子さんの解読によってヒントを得たり、榎田さんが貸し出ししてくれた追跡機械によって人々を守り、また五代に緑のクウガにふさわしい武器を手渡すことができます。つまり、五代雄介一人だけ、一条刑事一人だけ、はたまたこの二人だけの暴走だけでなく、チーム五代あるいはチームクウガによって、第14号が倒すことができます。

 そういうハードテイストでダークな色合いの特撮ヒーローアクションのとは全く趣が異なったのが、ミカちゃんの心の旅路のパートでしたね。本当に同じ30分(本編だけなら25分足らず)の中に、よくぞここまで丹念に、突然大好きだった父親を失った女の子の悲しさや寂しさ、思春期ならではの不安定さを、少ないセリフと表情と演出で描き出したなと感心しました。第8話の最後、飛び出してしまったことだけでなく、警察に脅迫めいた電話までしてしまったこと、一条刑事に面と向かって言わなかったけれど、心の中では山ほどついたであろう悪態のことなどに対しての「ゴメンなさい」だったんだろうと思いました。

 さて、赤が火で素手、青が水で長柄の武器、緑が風で遠距離用の武器ときました。さて次は何色で何の武器でしょう(1周したから知ってるけど)。

 第7話から追加されたグロンギたちも、衣装のクセが強いですね。まともなの女性グロンギだけじゃないですか。誰なのシースルーシャツとか、金色のジャケットにベルト巻いたものとか選んだの……すごく面白かったです。

 そ、し、て!移動の時の超音波をキャッチされていたという、運が悪いというかおマヌケというかな第3号!腕輪をネコババしようとしたり、敵前逃亡がバレてバラのタトゥの女に鉄拳制裁を食らった第3号!ちなみにバラのタトゥの女に何度も殴られてるのお前だけだぞ、第3号!どこまでも私たちの期待を裏切らないゲスでずるい第3号!第3号の明日はどっちだ⁉(光に弱いんだからどこにあってもたどり着けないとか言わないで……)

 ではみなさま、不定期でお送りしているネタバレ大爆発の感想、第9話でお会いしましょう。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ……。

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