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『仮面ライダークウガ』第9話感想

第9話 兄妹(きょうだい) (その4)

 台東区内。午前10時15分。川(多分墨田川?)沿いの歩道。高校生と思しき制服姿の女の子が、成績表を見ながら友達としゃべっている。数学の成績がああだとかこうだとかいいながら、ベンチに座る二人。この日は土曜日だから、学校の補習かなんかに行ったのか、これから行くのか。

 女の子たちがおしゃべりしている間、川岸に付いている梯子を、川の中から登ってくる白づくめの人物……え、いやちょっと待って。川の中から現れるはまだいいとして(いいのか?)、水を大量に滴らせながら梯子を一段一段丁寧に登るとか、白いとんがり帽子を被ったまま出てくるとか、衣装の一部がラメ加工で七色に反射してるとか、ツッコミどころが多すぎて渋滞しているんだけど……。

 川から上がってきた白づくめ衣装のグロンギが、歩道の柵をつかみ、柵越しに正面(にいるであろう女子高生たち)を見る。女子高生たちがため息をついて会話に間ができた瞬間、白づくめグロンギがニヤリと笑い、グロンギ語で何やら話す。「こんにちは、良いお天気ですね」ではないとは思うが、ただの人間でもそんな所から話しかけられたら普通にホラーである。

 思いもよらない所から声がして、そちらに目をやる女子高生たち。そこにいたのは思いもよらない衣装を着た、思いもよらない言語を話す変なオジサンだったものだから、当然ながら女子高生たちは悲鳴を上げて逃げていく。

 カッコよく(!)柵を飛び越え、歩道に降り立つ白づくめグロンギ。逃げていく女子高生たちの後ろ姿を見ながら、怪人体に姿を変える。一方の女子高生たちは、一人が転んでしまい、もう一人が大丈夫かと声をかけている。早く逃げるのよ……!

 怪人体になった白づくめグロンギは、女子高生たちに狙いを定めて、口から何かを高速で吐き出す。それは転んで起き上がるところで、体の正面をグロンギの方に向けていた女子高生の胸のあたりに付着する。悲鳴を上げる女子高生。それは粘り気がある黒い物体で、得体の知れない生命体が吐き出した得体の知れない黒い粘液がくっついたら、そりゃ誰でも悲鳴を上げる。

 次の瞬間、何と粘液が爆発!立ち上る炎!歩道の端にひらりと落ちる、火が付いた成績表……あまりのことに1周目は「ええ……!?」ってわが目を疑ったよ……これ書くために見て、やっぱり「ええ……!?」って驚いたよ……。

 爆発の炎で出た煙の中を悠然と歩き、腕輪の飾りを二つ動かす白づくめ改めメタリックシルバーなグロンギ。そこへ、釣り道具を持った男性二人連れがやってくる。ゆっくりと振り返るグロンギ……イヤァァァァ!

 女子高生二人の会話が学生らしい成績や苦手科目の話で、最終的に自分たちが「友だち」だと認識しあったところで終わる微笑ましいものだっただけに、その突然で理不尽な死に対する衝撃は大きい。そして、これまでの話でグロンギたちにはそれなりの目的や目標があって人類を容赦なく殺害していることも描かれているので、間違っても話し合いとか共存なんて一切無理な存在であり、人類を守るにはグロンギたちを倒す=殺すしかない。倒す覚悟、守る覚悟をした五代であるが、果たしてそれが「相手を殺す」ことでもあると気付いているのかどうか。

 ポレポレ店内。おやっさんのスクラップブックを見ながら考え込むみのりちゃん。店の入り口の扉が開き、耳慣れたうめき声が聞こえ、おやっさんが早かったなと声をかける。みのりちゃんがそっと振り向く。

 カメラが切り替わり、店の入り口脇の小さな植木鉢に水やりをするおやっさんと、帰ってきたばかりの五代雄介の姿が映る。五代はまだ分析の結果が出ないから帰ってきたとおやっさんに話す。店の電話が鳴り、振り向いた五代と、立ち上がったみのりちゃんに、自分が出ると言って電話までいそいそとおやっさんが歩いていく。

 座り直してスクラップブックに目を落とすみのりちゃん。五代もそれに気が付き、「オレの記事見てたのか」とうれしそうな顔をして、みのりちゃんの隣に座る。五代は先ほど桜子さんに聞いたクウガの色の話をするも、スクラップブックの中の写真に目を奪われると、今度は面白そうに切り抜きの記事を読み始めてしまう。その横顔を真剣な顔でみつめるみのりちゃん。

 みのりちゃんの視線に気づき、五代もみのりちゃんに目を向ける。どうしたという五代に、「2カ月ぐらいだよね、クウガになって」みのりちゃんがと話し出す。少し様子が違う妹に、少し戸惑いながらも五代がうなずく。続けてみのりちゃんが尋ねる。「もう、戦うの平気になっちゃった?」

 うん?と問いの意味を考えようとした時、おやっさんが五代に声をかける。「コートを着たハンサムさんから」と言いながら、おやっさんが受話器を差し出す。五代は立ち上がって電話に出る。暗い顔でうつむくみのりちゃん。第21号が出現したこと、場所が浅草であることを電話で聞いた五代は、「ちょっと行ってくる」と二人に告げる。

 おやっさんは今帰ってきたばかりなのにと驚き、みのりちゃんはたまりかねて立ち上がり、「お兄ちゃん、今日は誕生日だよ!」と五代の背中に声をかける。みのりちゃんの言葉に、店を出て行きかけた五代が足を止めて振り返る。そっかと言って一歩だけ店の中に戻る五代。「今夜はお祝いするから早く帰ってきてね!」とみのりちゃんが厳しめに言うと、「なるべくな」と笑顔で返して、五代は駆け出して行く。複雑な表情で五代を見送るみのりちゃん。妹の心、兄知らずである。

 品川区内。午前10時30分過ぎ。とある歩道で、ミカド号と柴崎訓練士と桜井刑事がグロンギの臭いを追っている。そこへ、台東区で事件が発生し、そちらに向かえないかと桜井刑事に無線連絡が入る。「いや、ミカドが何か嗅ぎつけたようなんだ」と答える桜井刑事。いいぞその調子だ、ミカド号!

 港区内。午前10時50分前。巨大観覧車が見える広場を歩く男の子と大人の女性二人の三人連れ。「ホントにゴメンね」と謝る榎田さん。一緒にご飯を食べる約束をしていたらしい。榎田さんに男の子がその約束を楽しみにしていたと話す、もう一人の年配の女性。年配の女性と手をつないで歩く男の子は、うつむいたまま「別にしてない」というが、その声からは残念さや悲しさが伝わってくる。

 年配の女性は男の子のことをサユルと呼び、榎田さんを示しながら「お母さんとつなぎなよ」とすすめる。サユル君はやはりうつむいたまま、おばあちゃんでいいという。榎田さんがサユル君に、アイスを食べようと誘う。ダブルにしていいと言われたサユル君が同意し、それまで上着のポケットに突っ込んでいた手を出して、榎田さんと手をつなぐ。ようやく笑顔を見せるサユル君。楽しい家族の休日。

 のはずが、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえて、榎田さんがふとそちらを見やる。3人は立ち止まり、おばあちゃんが「何かあったのかねえ」とつぶやく。そこへ折よく(?)爆発なんて怖いねなどと話しながらカップルが通り過ぎていく。「いつまで出んだよな、未確認の奴ら」という男性の言葉に、榎田さんの表情が険しくなる。ああ、仕事モードのスイッチが入っちゃってる……!

 じっとよそ見をして立ち止まったままの母とつないだ手を揺すり、サユル君がアイスを食べに行こうとおねだりをする。ハッと振り返り、わが子を見る榎田さん。笑顔を見せるものの、再びサイレンが鳴るほうへと視線を向ける。全部真っ正面からで通しても成立するのに、アイスを食べようとサユル君がせかしている時は下からのアングルにすることによって、サユル君に感情移入しやすいようになっている。そう、『クウガ』が想定している視聴者はチビッ子であり、ワーカホリックな大人じゃないのだ。

 バラのタトゥの女たちが潜んでいる倉庫。そこへ誰かが息荒くやってくる。中にいたグロンギが来訪者の名前らしきものを口にする。バラのタトゥの女が、来訪者に話しかける。

 訪れたのはサスペンダーにチェーンのグロンギで、怒りもあらわにバラのタトゥの女をにらみつけ、声を荒らげる。バラのタトゥの女も珍しく声を張って、彼にぴしゃりと何事かを告げる。彼女の言葉か、それ以外の何かに納得がいかず、叫びながらサスペンダーのグロンギが詰め寄ようとする。ゴーグルのグロンギが一歩前に出て、彼の行く手を阻む。

 「ルールはルールだ」実に滑らかな発音とイイ声で、ゴーグルのグロンギがきっぱりと言う。サスペンダーのグロンギは険しい表情のまま、何も言い返せない。周りを見ても、どのグロンギたちも小馬鹿にするような笑みを浮かべている。バラのタトゥの女に至っては、笑みも浮かべず、威圧するようにじっと彼を見つめるのみである。

 それにしても、ゴーグルのグロンギの現代日本語の上達っぷりには目を見張るものがある。独学で毎日勉強していたのかと思うとしみじみする。第3号にも見習ってほしい。

という所でその5に続く。

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