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『仮面ライダークウガ』第8話感想

第8話 射手 (その3)

 千葉・科学警察研究所。午後2時40分過ぎ。証拠品用の透明なビニール袋に入った、ハチ型グロンギが落とした腕輪を持っている榎田さんと、一条刑事が話しながら廊下を移動している。「犯行時間と螺旋移動のパターンから一度はヤツの動きを割り出したんですが、しかしそうなれば向こうも動きを変えてくる。だから、別の方法でヤツの居場所を探れないかと思って」と、一条刑事は榎田さんを見ながら話す。

 「とりあえずこれはそういうものと関係ないと思うけど」そう言って榎田さんは手にした袋を振り、「第14号の動きを正確に知りたいなら、いいものがあるのよ」と一条刑事を見ながら話す。思わぬ展開に「え?」と驚く一条刑事。

 部屋に入りながら、榎田さんが話す。「逃げた第3号の超音波が長野地方気象台で偶然受信されていたことが分かってね」榎田さんが机の上に置いてあった小型の箱型の黒い機械を抱えて持ち上げる。「また出た時のために作っておいてもらったものなんだけど」と一条刑事に渡す。彼が渡された機械を手にして眺めていると、榎田さんがさらに続ける。「実はさっき、本庁から連絡があったの」その言葉に一条刑事は目を上げ、榎田さんを見る。

 「今回の第14号が移動する時に出すらしい、特殊な音波があちこちでキャッチされてるって」その榎田さんの言葉に、一条刑事はピンと来る。「五代雄介が言っていた、ヤツの羽の音か……!」多分ね、と言って榎田さんはまた机の上から受信機らしきものを手に取ると、「移動速度が速いから鬼に金棒ってわけにはいかないけど、何かの足しにはなるでしょ」と、それも一条刑事に渡す。

 「いえ、ヤツの行き先が大体でも分かればそれで十分です。さっそく点けてみます」と一条刑事はありがたく受け取る。いそいそと部屋を出て行こうとする彼に、榎田さんが「あ、6号の時の煙の分析も終わって、今新しい武器も作っているからね」とキラキラした笑顔で伝える。榎田さんもやはり、ただ者ではないようだ。榎田さんの言葉に、笑顔で大きくうなずき、一条刑事は部屋を出て行く。

 廊下ではワンカット風に、部屋の中ではクルクル回ったり切り替えたりと、二人の会話を飽きさせないようにするカメラワークが光ってた場面。個人的には、椿医師とは別方向のマッドサイエンティストな面がにじみ出てきた榎田さんにワクワクしている。そしてもっと個人的には、廊下を歩いている時に翻る白衣とかコートの裾が大好物である(何の話だ)。

 JR佐貫町駅の改札口から、一人の少女が出てくる。ミカちゃんである。彼女はバス停の時刻表を確かめ、その後ろのベンチに座る。沈んだ表情のまま、トートバッグをギュッと抱えている。別作品のドラマが始まったのかと思うほど、穏やかでセンチメンタルなピアノ曲が流れる。人通りはなく、行き交う車も少ない駅前で、ぽつねんと座るミカちゃんの悲しみや寂しさがより一層伝わってくる。

 やがてミカちゃんが、渋い色のチェック柄のパスケースか何かを取り出し、中を開く。中面には、夏目教授と小さい頃のミカちゃんの二人が写った写真が入っている。二人は笑顔で、小さいミカちゃんは桜貝が何枚も使われたネックレスを付けている。トートバッグに付いていたものと同じものが。その写真を撮った時の思い出が蘇ったかのように、小さい女の子がはしゃぐ笑い声が聞こえてくる。写真を、懐かしそうにではなく、辛く悲しげな顔で見つめるミカちゃん。その彼女の前に、バスがやってきて停車する。乗車口が開くとミカちゃんは立ち上がり、その方へと歩き出す。

 城南大学・考古学研究室。午後3時過ぎ。桜子さんのパソコンのモニターに、リント文字がずらずらっと表示されている。緑のクウガについての解読作業中の桜子さん。奥の大きめのテーブルで、ひたすらに待っている夏目夫人に、ジャンがコーヒーを持ってきて、自分がはしゃいだせいでと謝罪する。いいえ、とだけ言う夏目夫人。僕のせいだ、と悔やむジャン。

 「大丈夫!」と大きく、きっぱりという桜子さんの声が室内に響く。その声に振り向く夏目夫人とジャン。解読作業をしながら、桜子さんが続ける。「五代君は、嘘をつかない人だから。絶対大丈夫」桜子さんが言うと、五代本人が言うより百倍信じられる気がする(ヒドイ)。

 同じころ、トライチェイサーで湾岸道路を走り抜ける五代雄介。

 さらに同じころ、自分の覆面パトカーに榎田さんから渡された追跡セットを載せ、ハチ型グロンギ=第14号を探す一条刑事。その視線の先には、細くて高いビルが建っている。

 その細くて高いビルのそばの駐車場。お出かけ中の親子と思しき女性と小学生くらいの年頃の女の子がおしゃべりしながら、自分たちの車に戻ってくる。不穏な、グロンギたちが活動する時のBGMが流れる。上空からの視点に切り替わる。虫の羽音がし、複眼のような画面分割と、何か別のセンサーで捉えているかのように車に乗り込む母と子の姿が青くなり、それが第14号の視界であると分かる。ヤダ怖いよぉ……。

 運転席で、キーを差し込み、エンジンをかける母親。しかしどうしたことか、エンジンがかからず、アクセルを踏んでも正常な反応がなく、異様な音がする。助手席に座った女の子がどうしたのと聞くと、母親は首を傾げながら分からないと言い、ボンネットを開け、運転席のドアを開け、外に出る。女の子も降りる。ダメぇ、今外に出たらダメだって!

 上空から、針が出た腕を構え、狙いを定める14号。

 母親がボンネットを大きく開き、中を点検しようとする。ボンネットを開けてチェックしようと思うあたり、少し詳しかったりするんだろうか(詳しくない私は、こういう場合すぐロードサービスを呼ぶ)。

 上空で、今か今かとタイミングを計る14号。

 真上にそんな物騒なモノがいるとも知らず、母親はボンネットの中をのぞき込んで異状がないか探している。

 遠くからサイレンが聞こえて来たかと思うと、勢いよく一台の車が駐車場に入ってくる。何事かと母親が目をやると、覆面パトカーが、母子の車にドリフトして横付けで急停止する。

 空の上では、針を発射するべく手を握り締めて力を籠める第14号。一瞬早く一条刑事が急いで降りて駆け寄り、その勢いのまま母親と女の子を腕に抱えて地面に伏せる。突然のことに悲鳴を上げる母親。

 次の瞬間、第14号が針を発射する。地に伏せた一条刑事が背広の内側に手を入れながら振り返ると、車の前の母親が正に立っていたところに、上から何かが落ちてきて、ブシュッという音とともに駐車場のアスファルトを貫通する。立ち上る煙。頭を抱えて叫ぶ母親。一条刑事は上体を起こし、胸に入れた手に拳銃を握り、空を見上げて警戒しながら、親子に向かって「大丈夫ですか⁉」と声をかける。

 空を見回す一条刑事の視界には、第14号の姿はない。さしあたっての安全を確認すると、視線は空から外さないまま、一条刑事は左手で母親の腕を取ってその体を起こして立たせる。母親は娘の名を呼びながら体を抱き起こしてやり、三人ひと固まりになって、近くの木の陰に身を隠す。怯えたように抱き合う親子。

 いいなあ、私も一条刑事に助けられたい……。

 突然、木陰で空からの襲撃に警戒する一条刑事の携帯電話が鳴る。何で一条刑事の携帯電話はいつもグロンギたちと戦ってるタイミングで鳴るんだろう?それはともかく、素早い動きでポケットから出し、電話に出る。かけてきたのは桜子さんだった。「沢渡です。解読の結果が出ました」

 城南大学・考古学研究室。電話を掛けながら、パソコンのモニターを見ている桜子さんが解読結果を伝える。「緑とか飛ぶとかは出なかったけど、五代くんから聞いて一番近いのはこれじゃないかと思います」パソコンのモニターを指しながら、そこに記された文章を読む。「邪悪なるものあらば、その姿をかなたより知りて、疾風のごとく邪悪を射抜く戦士あり」

 木陰で空を見回しながら「射抜く戦士⁉」と桜子さんの言葉を繰り返すと、一条刑事は何かに気づいたように、握っている拳銃に目を落とす。

 一条刑事の雄姿に改めてウットリしながら、その4に続く。


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