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『仮面ライダークウガ』第9話感想

第9話 兄妹(きょうだい) (その3)

 携帯電話の呼び出し音が鳴り、歩きながら朗らかに電話に出る一条刑事。これまたトリッキーなことに、廊下の天井と一条刑事の顔と携帯を持っている右手という、下からのアングルから始まる。しかも、そのアングルのまま、一条刑事は廊下を進み、電話での会話も進む。電話をかけてきたのは榎田さんで、先ほどの捜査会議について尋ねる。「滞りなく」と屈託のない笑顔で答える一条刑事の愛らしさよ。

 カメラアングルが通常通りに切り替わる。先ほどの会議中とは打って変わって一条刑事の口調も表情も明るい。一条刑事が資料についてのお礼を伝えると、榎田さんは捜査会議に出席できなかったことを謝る。笑みを浮かべて「いえ」と返した一条刑事。「今日は確か、休みを取ってお子さんと」と彼が言うと、「……のはずだったんだけど」と電話の向こうから返ってくる。

 千葉・科学警察研究所。午前9時40分過ぎ。榎田さんが「まだ科警研なのよぉ」と、携帯電話で話しながら、ロッカーの前で帰り支度を整えている。分析の仕事で泊まり込みとなり、起きたら待ち合わせの時間になっていたと今の状況を説明する。「大丈夫なんですか?」と一条刑事が心配すると、「大丈夫じゃないよねぇ」とつぶやき、ロッカーを閉め、その部屋で仕事をしていた同僚らしき男性の肩をポンポンとたたき、足早に部屋を出て行く。後ろ姿を目で見送り、男性は仕事を続ける。

 東京・城南大学。考古学研究室。午前9時50分ごろ。桜子さんがコーヒーをカップに注いでいると、五代雄介が入ってくる。朝のあいさつをかわす二人。五代が来るなり「今度はTシャツ?好きだね五代くんも」とTシャツのクウガのマークに気づくあたり、さすが桜子さんである。「ちょっとオシャレだろ、これ」とTシャツを引っ張ってクウガのマークを見ながら得意気な五代に、笑顔で「うん、まあね」と答える桜子さん。

 ベストの刺しゅうを作った時も桜子さんにやたら見せたがってたけど、こうやってすぐに気づいてくれたり、評価してくれるんだったら、そりゃ「桜子さんに見せてくる」になるよね……。

 椅子に座る五代に、コーヒーを勧める桜子さん。五代はお礼を言い、解読の進み具合を尋ねる。桜子さんは自分の仕事机に移動し、「クウガの色ね、他にもまだあるみたいなの」とパソコンのキーボードを操作する。桜子さんの後ろからかがみこんで、モニターをのぞきながら五代が「どんなの?」と尋ねる。

 モニターに、ズラッとリント文字が並ぶ。その上に、「解析率28%」のウィンドウが現れる。桜子さんはそれを見ながらため息を一つつき、五代に顔を向けて「まだ分かんない」とあっけらかんと言う。ずっこける五代。

 「でも、剣を持っているみたいよ」という桜子さんの言葉に、五代は表情を改めて聞き返す。「『何とかのごとく、剣で斬りつける』って書いてあった」と桜子さんが答える。その言葉を受け止め、深くうなずいた五代は、桜子さんに残りの分析も急ぐようお願いする。「ヤツらに対抗するにはやっぱ……」と五代が続けようとした時、研究室の電話が鳴る。五代に一言謝り、桜子さんが電話に出る。電話をかけてきたのはジャンで、「もう長野に着いたの?」と桜子さんが尋ねる。

 しかし、場面が切り替わって出てきたのは東京駅。構内の公衆電話で、忘れ物をしたと話すジャン。冷蔵庫の中にジャンのお気に入りの「福梅の梅干し」があるはずだと。桜子さんが梅干しがあることを伝えると、ジャンは自分の宿泊先を教え、その梅干しがないとご飯が食べられないと切実な様子で話し、出発のあいさつをして電話を切る。

 電話をやり取りする合間に、冷蔵庫の中だとか、五代が取り出した梅干しの容れ物のふたを開けて、その酸っぱいにおいに顔をしかめるなどの映像を入れることで、会話の内容がより分かりやすくなり、場面が単調になるのを防ぎ、なおかつジャンと桜子さんたちの仲の良さが伝わるという、相変わらず一粒で何度でもおいしい親切設計。

 電話をかけているジャンの向こうに、手にしたもの(メモ帳か何か?)と駅の中を見比べながら、黄色い上着を着た女性が現れる。ジャンが電話を切って改札口に向かおうとすると、黄色い上着の女性が「スイマセン」と言いながら近寄ってくる。

 モノ問いたげな表情のジャンに、女性が〈立て板に水〉とはこういうことと言わんばかりに、関西弁のイントネーションの早口で滑らかに話しかける。「地下鉄で茗荷谷いうとこに行く行き方が分からん私を可哀そうやと思いますよね?」ジャンが顔をしかめる。早口過ぎて聞き取れなかった私も顔をしかめる。オンタイムで一発で聞き取れた人、何人いたんだw

 城南大学・考古学研究室。何故か真上からのアングルで始まる。ジャンのお気に入りの梅干しを桜子さんに渡しながら、ジャンは長野に行くのかと五代が尋ねる。夏目ミカちゃんが持ってきた例の破片の調査に行くのだと答える桜子さん。一瞬間を置き、「そっか」と笑顔になる五代。

 ジャンが長野に行って例の破片の調査をするということは、特にミカちゃんのOKがないとできないことで、ミカちゃんは心の旅をした後、夏目教授が保管していた破片を「お父さんの形見」としてでだけではなく「考古学研究者が発掘した遺物」としても考えられるようになったのだろう。それだけミカちゃんの気持ちが落ち着いたことを表す。それを察した間があっての五代の「そっか」であり笑顔……わずかの間にこめる情報量の多さよ。

 ポレポレ店内。午前10時過ぎ。お店の手伝いをするみのりちゃん。おやっさんが労いの言葉と共にコーヒーカップをカウンターに置く。エプロンを外し、お礼を言ってカウンター席にみのりちゃんが座る。おやっさんが上機嫌でとっておきのアレを見せてあげると言うと、カウンターの中に置いてあった一冊のスクラップブックをみのりちゃんに見せる。みのりちゃんが何かと聞くと、彼は日課でスクラップしてると言いながら、中を開く。

 開いたページには、いくつもの未確認生命体第4号……クウガについての記事の切り抜きが貼り付けてある。みのりちゃんがおやっさんの意外な一面に感心しながらスクラップブックを手にし、切り抜きに目を落とす。ご満悦なおやっさんは、やっぱり4号だよねと熱く語る。

 4号がクウガであることも、その正体が五代雄介であることも結びついてないおやっさん(そもそも五代は、おやっさんに自分がクウガだとは話してるが、クウガが4号とは話してない気がする)は、4号はいいやつだとか、人間を狙わず、悪さをした仲間だけ殺しているとか、色がいろいろ変わったとか、これからまだまだ強くなるのかなど、熱弁にも力が入る。

 一方で、おやっさんは狂信的な信奉者とか一方的な賛同者ではないのか、それとも4号のことが書いてあれば何でも集めたいコレクター気質なのか、記事の切り抜きの中には否定的だったり不安を煽るような内容の物もある。それらの記事を目にして、第4号が自分の兄であることを知っているみのりちゃんの表情は暗くなる。

 それはそれとして、記事の切り抜きの中に「それどうやって撮ったの?」と思うようなクウガの写真があるの、遊び心が過ぎやしませんかね……。

ということで、その4に続きます。

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