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『仮面ライダークウガ』第8話感想

第8話 射手 (その4)

 同じ番組とは思えないほど穏やかでセンチメンタルなピアノ曲が流れる中、ひたすらトライチェイサーを走らせる五代。

 人気のない小さな踏切に差し掛かるミカちゃん。警報音が鳴り、侵入防止用のバーが降りてくる。

 浜辺にたどり着いた五代が、ミカちゃんの姿を探す。

 踏切前。踏切に向かって走ってくる電車に目を向けるミカちゃん。ピアノ曲の音と音の間をすり抜けるように、鳴り響く警報音。もうどんな感情もない顔のミカちゃんが、スッと前を向く。

 別の浜辺で、ミカちゃんの姿を探す五代。浜辺には誰もいないと分かると、トライチェイサーに乗って海岸沿いを移動する。

 踏切前。警笛を鳴らし、走る電車。ミカちゃんがそっと目を閉じる。電車がいよいよ近づく。

 また別の浜辺。五代はもうヘルメットを脱ぐのももどかしく、被ったままで浜辺に歩き出し、周囲を見回す。

 踏切前。通り過ぎていく電車。電車が通り過ぎる前と同じ場所に立っているミカちゃん。ああもう良かったよう……。

 踏切のバーが上がる。初めてミカちゃんが見ている風景が映し出される。船着き場と、消波ブロック、そして穏やかな海。

 別の浜辺に着いた五代は、トライチェイサーの上から見える限りの浜辺を見渡す。いないと分かると、再び走り出す。

 それまで流れていた穏やかなピアノ曲が突如やみ、虫の羽音が聞こえる。それと同時に、そうだった『仮面ライダークウガ』だったと我に返る。画面も分割された第14号の視界となる。その視界の中央で、オレンジ色のものが素早く通り過ぎていく。

 はるか上空でホバリングしている第14号が「クウガ」とつぶやき、二つあるうちの腕輪の一つに触れ、何かを言いながら飾りを動かす。ここであったが百年目みたいなこと言ったのかな(ごめんなさい、本当に適当です)。針を射出するほうの腕を見ると、針の先さえ出ていない。何かを言い、クウガが向かった先を見る第14号。

 パトランプを点灯し、サイレンを鳴らして海岸沿いを走る覆面パトカー。第14号追跡装置(仮)を見ながら、一条刑事が無線で話しかける。「五代雄介、聞こえるか、ヤツは富津の海岸に向かってる」

 トライチェイサーから、一条刑事が五代に呼びかける声が聞こえる。しかし、浜辺に停められたトライチェイサーの近くに、五代はいない。

 浜辺に、ミカちゃんが立っている。見渡す限りの水平線。何度も何度も打ち寄せる波。そばに立つサイレン用のスピーカーが付いた柱と、海水浴シーズン用の監視塔が、ミカちゃんの小ささをよりいっそう強調する。絵になる画面構成だなあ。

 海を見つめるミカちゃん。ミカちゃんの名を呼ぶ夏目教授の声がして、彼女が目をやると、そこには記憶の中の夏目教授が立っていて、手を振っている。足元には小さなバケツがあるから、潮干狩りに来たのだろうか。思い出を重ねるように浜辺を見つめ続けるミカちゃん。記憶の中の同じ浜辺で、小さい頃のミカちゃんが父親に駆け寄ると、彼はしゃがみ込んで足元にあったものを拾い、「ほら、見てごらん。こんなにかわいくてきれいなのもあるよ」と幼い娘に見せる。それは、桜貝の貝殻だった。キレイ、と喜ぶ小さいミカちゃん。

 「昔の人はね、こういうきれいな貝を首飾りにしたんだよ」と、いかにも考古学者らしいことを言う夏目教授(当時から教授だったかどうかは分からない)。小さいミカちゃんは桜貝を手に取り、首飾りがそもそも何なのか知らなそうに「くびかざり?」と聞き返す。

 トートバッグに付けられた桜貝のネックレスに触れながら、ミカちゃんが一人つぶやく。「人が一人死ぬなんて、どうでもいいことかな……⁉」記憶の中を見つめるように、思い出の浜辺に再び目をやる。

 記憶の中の夏目教授は、幼いミカちゃんと向き合っていたが、ゆっくり立ち上がると、今のミカちゃんに向かい合うようにこちらを見つめてくる。

 時空を越えて、見つめ合う父と娘。やがて記憶の中の父と子の風景は薄れていき、ミカちゃんの意識が今に戻ってくる。桜貝のネックレスを握り締め、今は一人でその浜辺に立つ彼女は、遠い世界に去ってしまった父に語りかける。「お父さん、これからどうしたらいいの……?」

 「どうしよっか」と言いながら、五代がミカちゃんから少し離れた場所に立つ。ミカちゃんが驚いて、五代の方を振り向く。「さすがに泳ぐには冷たすぎるよなぁ……」と、海を見て言う五代。いやいや、水温もだけど、その激しい海風と波の荒さを無視するなよ……確実に遭難するよ……。

 「どうして⁉」とようやくミカちゃんが口にする。誰にもどこに行くとも言わなかったのに、今日知り合ったばかりの得体のしれないお兄さんが、急に自分の隣に立ったら、そりゃビックリする。

 「その貝」と五代がミカちゃんのトートバッグの飾りを指さす。「この辺で採れるものだから」どんな貝がどこで採れるという知識も、2000の技の一つなの?

 五代雄介は足元の石をおもむろに拾うと、海に向かって水平に投げる。映像自体が随分なくらいのロングカットなので、投げた石がどうなったか全然分からない。五代はミカちゃんに体ごと向き直ると、「7連チャン、できると思う?」とこれまた唐突なことを言い出す。「無理だよ」と素っ気なく返すミカちゃん。

 五代は足元の石を拾い、ちょっと強めの風と波が押し寄せる海に向け、石を投げる。石は海面を五代が言ったとおりに7回も弾みながら飛び、海中に沈む。少年のような笑顔で、ほら、と声にならない声を出しながら、五代は指で海を指してミカちゃんを見る。上手くいくまで何テイク撮ったんだろう……(まさか一発OKじゃないよね?ソレはソレで怖い)。

 海を見ていたミカちゃんが、目をパチクリさせて五代に振り向く。そんな彼女に、五代が言う。「信じて。みんなやる時はやってくれるよ」どんな説得の仕方だ。そう思ったのかどうか、ミカちゃんは目を伏せ、体ごと海の方へ向く。何歩か歩み寄り、五代が続ける。「そして君にもいつか、何かやる時が来ると思う。お父さんもきっと、それを楽しみに見守ってくれてるよ」その言葉に、ミカちゃんは再び顔を上げて、五代を見る。五代は笑顔でうなずく。目を閉じ、考え込むミカちゃんに、さらに五代が歩み寄る。

 海風がよほど冷たかったのか、若干滑舌が怪しい五代がカワイイ。

 少女と青年の心の通い合いがテーマのヒューマンドラマたけなわの時、無粋な羽音が聞こえてきて、いいえ、これはハードテイストのSF特撮アクションヒーロードラマですよと現実に再び引き戻される。複眼の中央に、オレンジと青の人間の姿が映る。その姿が徐々に大きくなる。

 空の上で、羽を動かして空中停止しながら二人を見下ろす第14号。「クウガ」とうれしそうにつぶやく。その腕には十分な長さまで出てきた針が見える。今まさに、クウガを倒す時は満ちたのだ。余裕たっぷりに独り言を言う第14号。

 浜辺の脇を走る一条刑事の覆面パトカー。第14号追跡装置(仮)の反応音がせわしなく鳴っている。装置の画面には、第14号らしきマークと、それに徐々に近づいていく、この覆面パトカーを表すマークが示されている。フロントガラスから空を見上げ、また装置の画面を見ながら一条刑事がつぶやく。「どこにいるんだ五代雄介……ヤツはこの上だぞ……」そのスピードで、よそ見運転危ないよ、一条刑事……。

 危うし五代!危うしミカちゃん!一条刑事は間に合うのか⁉そして桜子さんが解読した言葉の意味とは⁉というところでその5に続きます。

 

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