見出し画像

関西弁における音便の活用法

 もとの音の一部が発音しやすいように変化することを「音便」といい、撥音便、促音便、イ音便、ウ音便の4種類がある。撥音便は「ン」に変化することで、「死ぬだ」の「死んだ」、「読むだ」の「読んだ」などがある。
促音便は「ッ」に変化するもの。「立つた」が「立った」、「走りて」が「走って」、「言うて」が「言って」に変化するものだ。そして、「置きて」が「置いて」、「騒ぐだ」が「騒いだ」と表現するのがイ音便である。
この中でウ音便は、「思ひて」が「思うて」、「かぐわし」が「かうばし」になったとされるように、現在の標準語の動詞ではあまり使われない。だが、関西弁ではウ音便がいまだに多く見られ、しかも促音便をウ音便化するというパターンも多い。
 ざっと例を挙げれば、「言うた」(言った)、「吸うた」(吸った)、「酔うた」(酔った)などなど。これらも促音が入らなければ標準語と同じで、「文句を言いに行く」はそのまま。「文句を言ってきて」は「言うてきて」となり、「言わない」は同じだが、「言った」は「言うた」となる。
この法則に則ると、「買う」の過去形である促音便の「買った」は「買うた」となる。ただ、「買うた」を「かうた」とは発音しない。「こうた」である。例えば、「しょう油を買いに行く」は「かいに行く」だが、「しょう油を買ってきた」は「こうてきた」になる。否定の「買わない」は「買えへん」で「か」のままだが、依頼の「買ってきて」は「こうてきて」となる。
 同じような例が「会う」で、「会った」は「おうた」となる。ただし、同じア段の「去った」「立った」「成った」「張った」「待った」「やった」「割った」に変化はない。元の音が変わるといえば、「歌った」は「うとうた」が略されて「うとた」、「洗った」が「あろうた」から「あろた」、「習った」が「なろうた」で「なろた」になる例がある。
 関東人が関西弁をマネする際、イントネーションやアクセントはもちろん、これらの変化を間違うと、「あ、エセ関西弁」とバカにされかねないので要注意だ。

「関西人VS関東人 ここまで違う言葉の常識」(河出書房新社)より
お買い求めはこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?