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「違う」の「ちゃう」は話の冒頭につくこともある

 関西に行ったとき、「こちらでは、『違う』を『ちゃう』っていうんですよね」とたずねると、「そうや、これ意味分かるか?」と前置きをして、必ずといっていいほど返ってくる言葉がある。
「あれ、ちゃうちゃうとちゃう?」
「ちゃうわぁ、ちゃうちゃうとちゃうで」
「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうやで」
 すべてひらがなで書くとややこしいが、カタカナで書いて注釈を入れると、「あれ、チャウチャウ(犬)とちゃう(違う)?」「ちゃう(違う)わぁ、チャウチャウ(犬)とちゃう(違う)で」「ちゃうちゃう(違う違う)、チャウチャウ(犬)やで」となる。このことから、「ちゃう」は「違う」の関西弁だということが分かる。ならば、「違う=ちゃう」かというと、そう簡単な話でもない。
「ちゃう」は「~ではない」の意味でも使われ、たとえば不案内な場所で道をたずねられた時、「ここ右に曲がったら、目的の場所につくんとちゃいますやろか(ここを右に曲がれば、目的の場所につくのではないでしょうか)」と答える。また、関東でも「あれ、芸能人の〇〇と違う?」ということはあるが、多くは「〇〇じゃない?」。ところが関西では「〇〇とちゃう?」が大多数だ。
 最近よく耳にする「じゃない方の〇〇」は「ちゃう方の○○」。しかし、「わたしって、〇〇じゃないですかぁ」を「ウチって、〇〇ちゃうやんかぁ」とはいわないし、関西人は関東人のこの言葉づかいを毛嫌いする。
 特徴的なのは、言葉の冒頭に「ちゃう」を置いて、とりあえず否定するという用法だ。「あんた、昨日、Aくんと仲良さそうに歩いてたんちゃうん?」と勘繰られた時、「ちゃうねん、ちゃうねん、歩いてたんはホンマやけど、ちゃうねんて」と、何が違うのかを明確にしないまま否定し続ける。そこで、「なにがちゃうのん?」と聞かれても、はっきり理由が説明できないときは「ちゃうねん、ちゃうねん、とにかくちゃうねん」と相手が根負けするまで、ひたすら否定を繰り返す。チャウチャウの例とは、また趣きは異なるが、「ちゃう」のオンパレードではある。

 「関西人VS関東人 ここまで違う言葉の常識」(河出書房新社)より
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