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知られざる太平洋戦争のドラマ

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太平洋戦争にまつわる数々のドラマを執筆。激闘の裏に隠された、興味深いエピソードをご紹介します。
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2019年7月の記事一覧

知られざる太平洋戦争のドラマ⑥

知られざる太平洋戦争のドラマ⑥

潜水艦「伊19」による空母ワスプ撃沈の舞台裏
一進一退だったガダルカナル戦

1942年夏から約半年間続いたガダルカナルの戦いは、アメリカ軍の勝利で終わった。しかし、アメリカ軍も決して楽勝だったわけではない。
初期の守備隊は補給の遅れで食糧不足に悩まされ、海上でも日本海軍とアメリカ海軍の間で、幾度も熾烈な戦いが起きた。このことで1943年までは、一進一退の攻防をつづけていたからだ。
とくに42年9

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑤

知られざる太平洋戦争のドラマ⑤

マレー半島を早期陥落させた前代未聞の夜間奇襲
「東洋のジブラルタル」と呼ばれたシンガポール

奇襲は敵の不意を打つ戦法なので、隠密性が何よりも重視される。その点でいえば、戦車は奇襲に、致命的なほど向いていない。大型の車体は敵に発見されやすく、エンジンの駆動音は数100メートル先からでも察知されてしまうからだ。
そのため太平洋戦争での奇襲は歩兵中心で行われていたのだが、南方戦線では戦車による奇襲を成

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知られざる太平洋戦争のドラマ④

知られざる太平洋戦争のドラマ④

インパール作戦における宮崎繁三郎中将の奮戦と人情
兵站を軽視した無謀な作戦

1944年3月に開始された「インパール作戦」は、日本陸軍が実施した中でも最悪の作戦として有名だ。
インパール作戦の目的は、インドの国境沿いにあるインパールを制圧して支配していたイギリス軍を押し戻し、中国への補給路である「援蒋ルート」も破壊するという壮大な作戦だった。
この時期のイギリス軍はビルマ(現ミャンマー)での攻勢を

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知られざる太平洋戦争のドラマ③

知られざる太平洋戦争のドラマ③

不死鳥と呼ばれた駆逐艦「響」 幾度もの損傷に耐えた特三型駆逐艦

生まれながらに不沈艦を宿命づけられた戦艦「大和」、幾多の激戦を生き抜き、沈むことなく終戦を迎えた幸運の駆逐艦「雪風」――

日本海軍の不沈艦と聞けば、このどちらかを連想することだろう。しかし海軍にはもう1隻、何度損傷しても海に舞い戻った浮沈の艦艇があった。しかも終戦まで決して沈まず、戦後も海外にて運用されもした。

その艦の名

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知られざる太平洋戦争のドラマ②

知られざる太平洋戦争のドラマ②

駆逐艦「夕立」による敵艦隊中央突破の真相
常識をくつがえした単艦攻撃

現在も昔も、集団と集団が戦う海戦では味方艦同士の連携が重要となる。単艦がどれだけ強くても、突出すれば集中砲火にさらされ、活躍は期待できないのが常識とされる。

だが、単騎で複数の敵艦を圧倒したとされるケースも存在する。その戦いが、「ガダルカナルの戦い」にて発生した「第三次ソロモン海戦」だ。

1942年8月からはじまった

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知られざる太平洋戦争のドラマ①

知られざる太平洋戦争のドラマ①

戦場で敵兵を救助した工藤俊作艦長の英断
4カ国連合艦隊との負けられない戦い

1942年2月半ば、日本軍のインドネシア攻略は早くも大詰めを迎えていた。落下傘部隊の奇襲と現地民の離反によって南方の大部分が日本の手に落ち、残すは最南端のジャワ島周辺のみとなっていたのだ。

連合軍は日本軍の進撃を食い止めるため、「ABDA艦隊」と呼ばれたアメリカ、オランダ、イギリス、オーストラリアの4カ国連合艦隊を結

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