見出し画像

獣を見る目で俺を見るな

お久しぶりです。
私は覚○剤や自殺未遂等のいわゆるインディーズ活動を経て2ヶ月の充電期間とし、この度インターネットに戻ってきた次第でありますが、皆様は、お元気でしたでしょうか?

僕は、もはや完全に、人間ではなくなりました。

というか、人間やめますか?って言い方おかしくないですか?最初から人間やめたくてやってるし『人間をやめる』って言い方、メチャクチャにカッコいい。隔離されて暮らしてたので、僕は人間やめて実質A異常症患者なのかもしれない。
自慰が止まらない事が、スピードの証だった。



河川敷の上、二人乗りの自転車が悠々と進む。
それは、うだるように暑い夏の日だった。
僕の脳内に存在する黒髪お下げの後輩ちゃんも、麦わら帽子に白いワンピースという、まるで集合的無意識が見せた幻のような出立ちで、流れゆく雲を見つめながら、横向きに悠々と座っている。
一方僕はというと、慣れない二人乗りにバランスを取るので精一杯だった。
泉を優雅に泳いでいるように見える水鳥は、実は足下で激しくもがいているというが、さながら僕は、もがきながら、思春期の青い幻想の中に少女を泳がす、考える脚だった。

「上手いこといったつもりですか先輩。下手なダジャレにパスカルさんも苦笑いしてますよ、きっと」

悪戯っぽい笑みを含んだ、後輩ちゃんの声が聞こえる。かつては、正対した相手に向かって息を吐くようにダジャレを連発することによって『西高の駄洒落王』と呼ばれていたので、センスには自信があったのだが、残念ながら後輩ちゃんには、このウィットに富んだ知的でユーモラスなギャグは伝わらなかったらしい。独りよがりかな?多分そう。だいぶそう。

「他人に言われる前に自分で自分に突っ込みを入れるのは、予防線を張ってるのが見え見えで正直ダサいと思いませんか?自分で張った予防線に自分で引っ掛かって転げ回る先輩。とても滑稽です」

僕の心の柔らかい部分をこねくり回すように笑い、後輩ちゃんは話す。
どこまでも広がる青い空と、神様が泡立てた虚構のように大きく白い入道雲。
ゆっくりと、地球の自転より遅く回る自転車のタイヤ。(地球の自転速度は時速1500kmらしいですよ先輩)
幸福だなあ、と思う。
でも、僕等はいったい何処に向かって進んでいるのだろう?いつからこうしているのだろう?
考えると、不意に呼吸が苦しくなってきた。
考えたくない。しかし考えなければならない。
何かを、思い出さなければならない気がする。

「ねえ、先輩はこのまま、どうなりたいんですか?私は先輩が望むから、ここに来ただけですけど。
先輩は、どこに行きたいんですか?」

呼吸が苦しい。頭の中で解体工事の現場、伝説のマンドラゴラの断末魔、凄腕ドラマーのヘビィメタル・ドラムがミックスされたような激しい騒音が鳴り響く。
呼吸が苦しい。喉仏を、焼けた鉄のベルトで直接圧迫されているような苦痛。
苦しい苦しい苦しい楽になりたい助けて後輩ちゃん苦しみから解放されたい解放お願いします僕を馬鹿にして後輩ちゃんが笑ってそんな苦しみのない全てが調和した幸福な世界に行きたい


「苦しみのない幸福は、死んでいるのと同じですよ」


凄まじい音とともにドアノブが折れ、首を圧迫していた布が解けた。
後頭部からカーペットの床に倒れ、僕は目覚めた。
全て思い出した。
そうだった。極度の疲労と自己嫌悪で錯乱状態になった僕は、苦しみのない世界を求め、自らの生命を、天使の和毛のように軽い、このバスローブに委ねたのだった。
準備は完璧だった。意識も飛んだ。脳以外は生命活動を停止しつつあったのだろう。
しかし生き残った。何故?
わからない。しかし、一つわかったことがある。
生きることも死ぬことも、結局は全て苦しみだということだ。希死念慮の影はなお消えない。これからも消えないだろう。
しかしまたその時が来たなら、きっと後輩ちゃんが教えてくれる。
僕を死なすものも生かすものも、また僕の中にあり、それは憎らしく愛らしい、後輩の少女の形をした『彼女』なのだから。

☆何カッコいい感じに締めてるんですか?

「こんなこと言ってますけど結局キマってる状態で寝ないで食べないで一日中自慰してたからおかしくなっただけじゃないですか。変に詩的な表現を使って美化したり、それから私を救世主かなにかみたいに勘違いするのもやめて頂けませんか?しかもこの後自分で通報して逮捕されてるんですからもうヘタレ根性丸出しですね。なにもかもが中途半端な先輩にお似合いの結末ですよ。どうです?あ、死にたくなりました?それは良かったです。何か言い返してみて下さいよ。ほら」



クスリはもうこりごりだよ〜泣泣泣


おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?