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薬師寺 参拝記 2024年:「薬屋のひとりごと展」も満喫する

2024年04月29日、私は薬師寺(以下同寺)を訪れた。

同寺は、天武天皇9年(680)に天武天皇(以下敬称略)が皇后 鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ、後の持統天皇)の病気平癒を祈って発願されたものである。しかし、天武天皇は薬師寺の完成を待たずに崩御し、持統天皇が即位し新都藤原京に薬師寺が造営した。 697年には、本尊薬師如来の開眼が行われ、698年には構作が終わり僧侶を住まわせたことが『続日本紀』に記されている。 710年、元明天皇の命により藤原京から平城京へと遷都が行われる。遷都にともなって薬師寺も平城京右京六條二坊の現在の地へと遷った。当時の薬師寺は、天平時代までは天下の四大寺の1つとされ、金堂・東西両塔・大講堂など主要なお堂は裳階がつけられ、 その壮麗な姿は「龍宮造り」と呼ばれていた。
しかし、歴史の中で多くの堂塔が火災や地震で失われてしまった。特に、享禄元年(1528)の兵火は激しく、金堂、西塔、大講堂などが焼失した。そのなかで唯一創建時から現存するのが東塔【国宝】(図01)である。

同寺にとって失われた伽藍の復興は長年の悲願だった。
昭和43年(1968)、管主だった高田好胤和上は、「物で栄えて心で滅ぶ高度経済成長の時代だからこそ、精神性の伴った伽藍の復興を」と訴え、お写経勧進による白鳳伽藍復興を始めた。
一巻千円(当時)のご納経料をいただき、百万巻のお写経を勧進して金堂復興を目指した。高田管長は全国を行脚し、お写経を通した「美しい心の再発見」を呼びかけ、昭和51年(1976)に目標の百万巻を達成し、金堂(図02)が落慶された。

お写経勧進による白鳳伽藍復興は平成30年で50周年を迎えました。西塔(さいとう、図03)、中門、回廊、大講堂(図04)、食堂(じきどう)と白鳳伽藍の主要な堂塔はおおよそ復興され、いにしえの大伽藍がよみがえっている。
同寺の伽藍復興は、まさに日本人の美しい心の結晶として行われた。白鳳時代の祈りと昭和、平成、令和の信仰を伝えることが同寺の次なる目標である([1])。

図01.東塔。
図02.金堂。
図03.西塔。
図04.大講堂。


十字廊は、奈良時代後半の建立とされ、国内はもとより海外でも同じ名称の施設は見当たらないが、長和(ちょうわ)04 年(1015)に書かれた『薬師寺縁起』によれば、食殿(じきでん)とも呼ばれていた。類例がないためその機能は明確ではないが、食殿という別称から考えると、廊としての機能だけでなく、南側に隣接する食堂に付帯する機能をもっていた可能性がある(図05、[2])。

図05.『「十字廊」と周辺の遺構』。


薬師如来像台座(模型)は東僧坊に展示されている(図06、[3])。

図06.薬師如来像台座(模型)。


樹齢2500年の「紅桧」は同寺白鳳伽羅復興用材に台湾より寄進されたもので、復興用材として大量の台湾産の桧を使用した証しとして永久保存するとして展示されている(図07、[4])。

図07.台湾産「紅桧」(樹齢2500年)。


1998年には第26代継体天皇ゆかりの花筐公園・薄墨桜の若木が、福井県越前市栗田部地区から贈られ、春になると玄英三蔵院伽藍(げんじょうさんぞういんがらん)・写経道場前で、満開の花を咲かせる(図08、[5])。

図08.薄墨桜。


2024年03月04日~06月30日、「薬屋、奈良のたび」が開催されているが、これは「薬屋のひとりごと」(以下同作)×JR東海による「推し旅」の1つである(図09,[6])。

(a)スタンドポップ「猫猫」。
(b)スタンドポップ「向かって左から、壬氏と猫猫」。
図09.「薬屋、奈良のたび」。


「薬屋、奈良のたび」とのコラボキャンペーン実施と『薬屋のひとりごと画集』の発売を記念して、2024年04月27日~05月06日、「しのとうこ特別展示企画 薬屋のひとりごと展」(以下同展)が開催されている(図10,[7])。

同展では、原作小説各巻カバー画と口絵の額装高精細デジタル カラーが初展示されている(写真撮影不可)。

ポスター「薬屋のひとりごと展 ご来場の皆様へ」には、しのとうこのサインが記されている(図11)。

また、しのとうこによるイラスト「薬屋のひとりごと×JR東海」が展示されている(図12)。

図10.ポスター「しのとうこ特別展示企画 薬屋のひとりごと展」。
図11.ポスター「薬屋のひとりごと展 ご来場の皆様へ」。
図12.イラスト「薬屋のひとりごと×JR東海」。


私にとって、同寺を訪れ、かつ、同展に一般客として参加したことは、非常に有意義であった。というのは、同寺の歴史を再確認できただけでなく、同展を介して同作の魅力を再確認できたためである。



参考文献

[1] 法相宗大本山 薬師寺.“薬師寺とは”.薬師寺 ホームページ.https://yakushiji.or.jp/guide/,(参照2024年04月30日).

[2] 国立大学法人 島根大学 附属図書館,独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所.“独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所 2014 『奈文研ニュース』奈文研ニュース52”.全国遺跡報告総覧 ホームページ.「奈文研ニュース」で検索.シリーズ番号52.https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/16816,(参照2024年04月30日).

[3] 法相宗大本山 薬師寺.“ご本尊薬師如来像台座(模型)”.薬師寺 Instagram ホームページ.2021年05月03日.https://www.instagram.com/p/COZw7cCjkzJ/,(参照2024年04月30日).

[4] 株式会社 大五木材.“#174【タイワンヒノキ/台湾桧】改訂版*”.森のかけら ホームページ.森のかけら・リスト&今日のかけら.2011年02月03日.https://morinokakera.jp/kakera/?p=2973,(参照2024年04月30日).

[5] 越前市.“01月15日号”.越前市 ホームページ.つながりが心地よいふるさと.市政情報.広報・広聴.平成27年度 越前市広報紙.https://www.city.echizen.lg.jp/office/030/011/kouhoutop27_d/fil/H280114.pdf,(参照2024年04月30日).

[6] 東海旅客鉄道株式会社(JR東海).“薬屋、奈良のたび”.推し旅 トップページ.https://recommend.jr-central.co.jp/oshi-tabi/kusuriya/,(参照2024年04月30日).

[7] 株式会社イマジカ インフォス.“しのとうこ特別展示企画 薬屋のひとりごと展 ホームページ”.https://herobunko.com/special/kusuriya_ten/,(参照2024年04月30日).

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