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終章 毒とはうまくつきあおう 2.毒からは逃れられない:「特別展「毒」」見聞録 その33

2023年04月27日、私は大阪市立自然史博物館を訪れ、一般客として、「特別展「毒」」(以下同展)に参加した([1])。

同展「終章 毒とはうまくつきあおう 2.毒からは逃れられない」([2][3]のp.162-164)では、スギヒラタケとクリソタイルが展示された。

スギヒラタケは古くより食用とされてきた。しかし、腎臓に疾患のある人を中心に急性脳症を起こすことが分かってきた。その主な症状は意識障害、不随意運動、上肢振戦、および、下肢脱力と報告されている。

毒成分は現在まで不明であるが、シアンを含有する。シイタケやマイタケなど食用のキノコにはない共役型脂肪酸類(エレオステアリン酸など)のほか、異常アミノ酸類やレクチンを含有する(図33.01,[4])。

図32.01.スギヒラタケ。

なお、クロハツ、ガンタケ([5])、および、ツルタケも現在では毒きのことされる。

アスベスト(石綿)とは天然の鉱物繊維で、代表的なものはクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)の3種類がある。

アスベストは耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の特性を持ち、安価な工業材料であった。建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等様々な形で利用されてきたが、その9割以上が建材製品として使用されていた。

アスベストは、その繊維が極めて細いため大気中に飛散したものを吸い込みやすく、そのことが大きな問題となっている。アスベスト材そのものに毒性はないが、飛散したアスベスト繊維を吸入すると繊維が肺の中に残り、肺がんや中皮腫、アスベスト肺(肺の慢性線維症)の原因となる。

アスベストの使用用途は3,000以上に上ると言われている。その9割以上が建築材料として使用され、建材の中でもビルの耐火材、耐熱材用に吹き付けアスベストとして昭和31(1956)年から昭和50(1975)年初頭までに多く使用された。特に発がん性が強いとされるクロシドライトは、アスベスト セメント管に使用されていた他、吹き付け用として汎用されていた。現在それらのビルの解体(改修)時期に入っているため、解体(改修)する際にアスベスト粉塵が飛散することが心配されている。

その他、自動車のブレーキ、電線の被覆材、器具の断熱材等に使用されていた。また、一部の家電製品等にも使用されていたが、現在市販されているものにはアスベストは使用されていない(図32.02,[6])。

図32.02.クリソタイル。

「終章 毒とはうまくつきあおう 2.毒からは逃れられない」から、「毒は日常と共にある」ことを痛感した。また、かつては生活の一部とされたものが、後年に毒と見做されることは割とあり、かつ、その「上位互換品」(例.アスベストに対するロックウール,[7])が開発・使用されることで、生活がより安全になることも痛感した。

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https://note.com/take_judge/n/n32118566c7bb


参考文献

[1] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“特別展「毒」 ホームページ”.https://www.dokuten.jp/,(参照2023年08月28日).

[2] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“終章 毒とはうまくつきあおう”.特別展「毒」 ホームページ.https://www.dokuten.jp/exhibition05.html,(参照2023年08月28日).

[3] 特別展「毒」公式図録,180 p.

[4] 厚生労働省.“自然毒のリスクプロファイル:スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens) キシメジ科スギヒラタケ属”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.食品.食中毒.自然毒のリスクプロファイル.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000143423.html,(参照2023年08月29日).

[5] 石川県.“ガンタケ”.石川県 ホームページ.くらし・環境.自然.生物多様性.いしかわ森林図鑑.いしかわ きのこ図鑑.種名から検索.2010年04月16日.https://www.pref.ishikawa.lg.jp/ringyo/kinoko/data/gantake.html,(参照2023年08月29日).

[6] 独立行政法人 労働者健康安全機構.“アスベストとは”.労災疾病等医学研究普及サイト アスベスト関連疾患 ホームページ.https://www.research.johas.go.jp/asbesto/01.html,(参照2023年08月29日).

[7] ロックウール工業会.“環境・安全”.ロックウール工業会 ホームページ.https://www.rwa.gr.jp/environment/index.html,(参照2023年08月29日).

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