超多忙!クラブと日本代表を往復する佐々宜央コーチに3分の会話で聞けたこと
多忙を極める男はそう言って、ニヤリと笑った。
8月15日。
日本バスケットボール協会(JBA)から、
8月下旬にイランで行われるW杯予選Window4の
予備登録選手及びチームスタッフが発表された。
そこには、
帯同スタッフに関する特記事項も書かれていた。
イランへ帯同できない
ホーバスヘッドコーチの代行に任命されたのが
佐々宜央アシスタントコーチだ。
所属する宇都宮ブレックスでも
今季から指揮をとることが発表されている。
BREX 土台の大きさと強さ
8月中旬。
そのBREXの取材で宇都宮を訪れた。
新加入選手に夏の時点で話を聞きたかったこと、
これから特集する選手の
現在地を知りたかったのが大きな目的だった。
東京から電車に揺られ、1時間半ちょっと。
昨季、何度も通い見慣れた景色。
「また今季もたくさんお世話になるだろう」と
胸踊らせながら、昼過ぎには目的地に到着した。
すると、改札を抜けた先に
何やら見慣れた面影が目に入る。
「いや、でもまさかそんなわけはないよな」
なぜなら彼はいま、
都内で日本代表の合宿をしているはずなのだから…
しかし、体育館に着いて確信した。
宇都宮駅で見かけたのは
紛れもなく佐々コーチだったのだ。
驚きを隠せないまま、挨拶に向かう。
聞けば、
この日も午前中に日本代表の練習を終えて、
午後のブレックスの練習に間に合うよう
都内から帰って来たのだと言う。
クラブとしてもチーム練習が本格化していく8月。
1時間でも1分でも1秒でも
自チームの練習に時間を割きたいのは
当然のこと。
だが、現実的に考えて
東京⇆宇都宮を往復する疲労に加え、
2つの異なるチームを指揮することが
容易でないことは、想像に難くない。
日本代表の遠征も重なった8月は、
無意識に疲れを感じることもあったと言うが、
言葉の向こうには、どこか充実感も感じる。
「たしかに、そうだった」
2021-22シーズンは、
前年に準優勝の悔しさを味わった日本人選手が
全員残留。
「ワイルドカードからの優勝」という
壮大なリベンジ劇をやってのけられたのは、
「強固な土台」が
無関係だったとは言えないだろう。
加えて、佐々コーチ自身も、
アシスタントコーチだった昨季から
練習で任される部分は多くなっていたと語る。
0から戦術やコンセプトを落とし込む必要はなく、
さらに脈々と受け継がれてきた
ブレックスメンタリティとは何なのか。
それを田臥勇太はじめ
チームに長く在籍するベテラン選手たちが
誰に言われることもなく
主体的に新しい選手たちに伝えていく。
そういった姿勢が
「伝統化」していることもまたBREXの強さだ。
逆に新加入選手はチームの共通意識や
細かい動きのディテールを体得してこそ
初めて試合で球際の強さを発揮したり、
一糸乱れぬ繊細なチームディフェンスに
順応することができ、チームはまた結束する。
揺るがない土台に自信を持つBREXだからこそ
“開幕前のヘッドコーチ不在”をも
ポジティブに変換してしまうのではないか、
そんな事を改めて感じた。
群馬クレインサンダーズからやってきた
笠井康平はこう話す。
佐々コーチが
日本代表から持ち帰るモノにも期待ができる。
2021年9月にホーバスHCが就任して以降、
東京オリンピックで銀メダルを獲得した
女子日本代表のスタイルを踏襲する形で、
男子日本代表は3Pシュートの向上を目指し
2023年のワールドカップ
そして、
2024年パリオリンピックでの飛躍を誓っている。
7月のアジアカップでは準々決勝で
オーストラリア代表に敗れてしまったものの、
アジア王者をあと一歩のところまで追い詰めた。
(85 - 99)
日を追うごとに
進化が見える日本代表で得た学びを
選手はもちろん、
コーチ陣が自クラブに持ち帰ることも
日本バスケの成長に大きく寄与するはずだ。
前年王者の宇都宮ブレックスを筆頭に、
日本代表のスタイルや挑戦が
どれだけBリーグにも影響を与えていくのか。
最前線で吸収しつづける佐々コーチ。
どんな新生BREXを見せてくれるのだろうか。
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