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【漫画】『月の子 MOONCHILD』

最近、彗星やスーパームーンなどの天体ショーが話題になったせいなのか、ふと読み返したくなりまして。

『月の子 MOONCHILD』清水玲子/白泉社

当時、月刊誌LaLaを購読しておりまして、本誌では読んでいたのですが、途中からだったし、内容もうろ覚えで。中高生でしたので、コミックを集める財力もなく…(今もだが)。
ちなみに、LaLaを初めて買った時、巻頭カラーで『っポイ!』(やまざき貴子)の連載が開始した号だったのを覚えております。懐かしいなあ…。

そんな訳で、改めて読み直そう!と思った次第。
もう紙媒体では絶版でしょうか。あっても文庫版かしら。
電子で購入しましたが、元データも文庫版になってましたね。縮小率が高いのと、カラーが載っていないのが悔やまれます。しかし、今でも購入できるのは有り難い!

ある程度の年齢を重ねた漫画好きならばご存じかと思いますが、清水玲子先生は飛び抜けて美しい絵と、SFとミステリーを掛け合わせたような、緻密なストーリーが魅力の作家さんです。
『輝夜姫』『秘密』など、今も多くの読者を夢中にさせる、素晴らしい作品を数多く描かれています。
これらの作品も途中までしか読めてないんだよなあ…いずれ必ず。

『月の子』は、産卵のために地球へ戻ってきた人魚たちのお話。『人魚姫』の童話をベースに、伝説の人魚・セイラの子供たちが辿る運命を描いています。

人魚、とは言うものの、まあ、宇宙人みたいな。
地球で生まれた人魚たちは、百年、二百年を宇宙を回遊して過ごし、産卵のために地球へ戻るのですね。
セイラの子供たちのひとり・ベンジャミンは、売れないダンサー・アートと出会い、恋に落ちます。
しかし、人魚(ベンジャミン)が人間(アート)と結ばれると、地球は死の星になるーー人魚たちをすべるグラン・マの予知で、物語は大きく動き出します。

と、壮大な物語ではあるのですが、当のベンジャミンはまだまだ子供。見た目は小さな男の子です。
当然、アートもベンジャミンを小さな男の子・ジミーとして認識しています。恋どころか、全然まったく対象外、ノー眼中(古)ってやつです。
素直で可愛く、ちょっと鬱陶しい(笑)ジミーとアートの日常はてんやわんやで微笑ましい。
ところが、ジミーも成長しており、突然、美しい女性の姿に…。人魚姫が人間の姿になるために声を失ったように、女性化したジミーはアートの前では喋れません。
セイラに憧れる人魚・ショナがそんなベンジャミンに恋をしたり、兄弟(姉妹?)であるティルトはもうひとりの兄弟・セツを女性化させようと画策したり。
それぞれの思惑が絡み合い、物語は不穏な展開をしていきます。

本当に面白い物語なのですが、最後には深く考えさせられる、そんな作品です。
何しろ、30年は昔の作品ではありますので、ちょうど地球の環境破壊への危機感が募ってきた時代。ああ、あの事故をテーマのひとつに組み込んでいたのか、すっかり忘れていた。福島の事故や、昨今の世界情勢を思うと、色々複雑ですね…。
この作品の人魚の子供たちが戻ってくる頃、果たして地球は産卵に適した美しい星のままでいられるのだろうか。どうか、そうであって欲しい。
そう願わずには、いられません。

それにしても、やはり凄い作品ですね。昔の作品なのに、魅力がまったく色褪せていない。
テーマは重いのですが、ジミーを中心にしたやりとりは可愛くてほっこりするし、何かどこか抜けてるというか、美しい絵柄なんだけどちゃんと人間臭さがあるというか。バランス感覚が素晴らしいんだろうな…。
清水玲子先生の美麗な絵柄も唯一無二で、その時代のトレンドを取り入れつつも、洗練されていて古さを感じさせない。映画の名作のような感じでしょうか。完成されている、と言えば良いのか…天才なんでしょうね。
もちろん、生みの苦しみはあるのでしょうし、先生にしかわからない悩みもあるとは思うのですが…

ホンマ、頭ン中どないなっとんねん!!!!

凡人には想像もつきません★

昔読んだよ〜という方も、まだ生まれてなかったわ〜という方も、よろしければ是非。
なかなかのボリューム(文庫版で全8巻)ですし、テーマは重めですが、これも凄いんだけど、難しくなく、夢中で読めてしまいます。秋の夜長の読書にもオススメです!

いや〜しかし、あの頃のLaLa、良かったよねえ…。本当に大好きな雑誌でしたわ。少女漫画はあまり読んでなかったヒトなんだけど、LaLaは本当に好きだった。
まあ、その辺の懐かしいお話もいずれ、また。

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