ミドルシュートの名手の共通点。膝下の振りの速さが助走の入り方で決まる話。
ドイツ対フランスの親善試合にて、開始直後のゴールとして話題を集めたヴィルツのミドルシュート。
今回は、このようにいとも簡単にペナルティエリア外からのシュートを決めてしまうミドルシュートの名手たちの共通点を探ることで、弾丸ミドルに必要な要素を突き止めてみたいと思います。
今回題材とするのは冒頭に挙げたヴィルツに加えて、デ・ブライネ、ソボスライ、バルベルデの3選手です。彼らのミドルシュートに関しては、それぞれ以下の記事でも触れているのでぜひお読みください。
それでは、早速上記4シーンについて外見上わかりやすい共通点を挙げ、それぞれについて力学的な背景を解説していきます。
記事の最後には、記事を通して解説した理屈を踏まえての具体的な練習メニューも掲載してありますので、ぜひ最後までお読みください。
1. 蹴り足が伸び切った状態でインパクト
まず、一つ目はボールと蹴り足がインパクトする瞬間の蹴り足の形です。
インパクトの瞬間を切り取ってみると、いずれの選手においても蹴り足の膝、足首ともにほぼ完全に伸び切り、蹴り脚の股関節からつま先までがほぼ一直線になっていることが分かります。
特に、デ・ブライネ、ソボスライ、バルベルデの3選手に関してはインステップの真ん中でインパクトしており、つま先まで一直線になった形がより強調されています。
このような足首、膝ともに伸び切った形は、いわゆる蹴り足を固めたような状態に対応しボールに対して大きな力を加えることができます。
もう少し詳しく言うとすると、蹴り足をボールにぶつけることでボールに対して大きな力を与えようとする時、同時に蹴り足はボールから同じ大きさの力を受けます(=作用・反作用の法則)。
この反作用による蹴り足のグラつきを抑えて効率良くボールに力を伝えるこために、足首・膝を伸ばし切った、関節をロックしたような状態でのインパクトが有効になります。
また、ヴィルツのインパクトに着目すると、他の3選手と比べてインパクト位置が少し内側になっていることが分かります。
これは以前に記事にした、アセンシオの弾丸ミドルと似た特徴を持っていて、膝の曲げ伸ばしを行う体の向きに対して前後方向の運動だけでなく、捻りの動きをうまく組み合わせて活用している証拠です。
インパクト位置だけで見ると他3名とは多少タイプが違いますが、この後に挙げる膝下の振りや助走の入り方については4選手ともに共通した要素があります。
2. 蹴り足が高く上がる(膝下の振りが大きい)
彼らのキックをパッと見た時に感じるのは、圧倒的な振りの速さかと思います。
特によく重要と言われる膝下の振りに注目すると、蹴り足の踵の最高点はかなり高い位置にあり膝が大きく曲がった状態から一気に振り下ろされていることが分かります。
これを見た時に、外見上の現象に引っ張られて膝下の振りを大きく速く出そうと意識して蹴ってみてもなかなかうまくいきません。
股関節の動きで膝下の振りを生み出す
詳しくは、バルベルデのミドルシュートについての以前の記事で解説していますが、この膝下の振りを生み出しているの実は股関節の動きです。
下図のように勢い良く股関節を屈曲させる(=膝を前に持っていく)ことによって、下腿上部が前方に引っ張られることで重心周りの回転運動が生じ、結果的に膝が屈曲するというのが高速で膝下の振りを生み出すメカニズムです。
イメージとしては足を地面についた状態から思い切り膝蹴りをすると自然と膝が曲がってくるのと同じで、膝を勢い良く前方向もしくは上方向に動かすと自然と膝は曲がるようになっています。
これを股関節の動き主導ではなく、膝を自ら曲げるような動作で行おうとすると、動きが大きく遅くなってしまうのでキック動作全体のリズムを狂わせてしまい、エネルギーの伝達に大きなロスが生じてしまうので、外見上のフォームをただ真似るのではなくその背景にある理屈を理解することが重要です。
以上のように、膝下の振りを素早く出すためには股関節の動きが重要ですが、この股関節屈曲の動きを出しやすいように助走の入り方を工夫しているというのがこの後に3つ目として挙げるポイントになります。
3. 蹴る前の一歩で重心が高い
助走の役割は基本的には前方向の速度(≒エネルギー)を生み出し、キックの動力源となることですが、ただ大きなエネルギーを生み出すだけでなく、その後の効率の良いエネルギー伝達に繋がる動作を行うことがとても重要です。
この要素に関して、今回の4シーンに共通しているのは助走の最後の一歩、つまり蹴り足が接地する際に重心が高く、全身がほぼ垂直になっている点です。
特にデ・ブライネのシーンが分かりやすいですが、重心の真下に蹴り足を蹴り足を接地しており、まっすぐ立ったような状態から蹴り始めていることが分かります。
他の3選手に関しても蹴り足を接地しているのはほぼ重心の真下になっていることが分かります。
このような蹴り足の接地の仕方が、助走でのエネルギー生成とその後のエネルギー伝達の効率化の両立を可能にしています。
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