見出し画像

強いシュートのフォロースルーは真上ジャンプが正解。重心を前へは嘘です。

強いキックを蹴るポイントと言われて何が思い浮かぶでしょうか?

蹴り足を早く振る、上半身との連動、インパクト位置を良くする、などなど色々なポイントが挙げられるかと思います。

ここでは、そんな中でもよく挙げられるポイントの一つ、蹴った後に体が前に行くべきか、その場に残るべきかを考えます。

僕の回答はタイトルの通り、その場に残って真上にジャンプするような蹴り方なんですが、一般には体を前に持っていくイメージを持つ人が多いように感じます。

なんとなくのイメージだけで語られていることがなぜか知識として定着してしまって正しいものが目の前にあるのに気付けないというのはよくある話なので、一度先入観を捨ててトップ選手のキックがどうなっているかを見てみましょう。

デ・ブライネの場合

まずは、昨シーズンのCLレアル戦でデ・ブライネが決めたミドルシュートを見てみましょう。

前後の動きは横からが分かりやすいので、13秒頃からの画角で見てみます。

(UEFA Champions League twitterより)
(UEFA Champions League twitterより)
(UEFA Champions League twitterより)

ここまで蹴り足を振り切るまで重心の位置は軸足の位置の真上に留まっていることが分かります。
そして、この後軸足が地面から離れて行くのですが、この時も重心の位置は変わらず真上にジャンプしているような形になっていることが分かります。

(UEFA Champions League twitterより)

最後、両足が浮いた状態から蹴り足を着地する時にどうしても体は前に持って行かれてしまうので、蹴り終わりの一番最後を見ると少しだけ体は前に行きますが、最後の最後まで体は前に出てきません。

(UEFA Champions League twitterより)

このシーンだけだとあまり助走の勢いを付けずダイレクトで蹴っているからだと反論されてしまいそうなので、今度は助走の勢いがとにかく強いロベカルのシュートを見てみましょう。

ロベカルの場合

取り上げるシーンはフランス代表との試合で決めた伝説のフリーキックです。
特徴はとにかく長くて速い助走ですが、それでもデ・ブライネのキックと同様に蹴り足を振り切る間、軸足の真上までしか体が到達せず最後の最後蹴り足を着地する瞬間だけ少し体が前に出ているくらいであることが分かります。

(Youtubeより)
(Youtubeより)
(Youtubeより)
(Youtubeより)
(Youtubeより)

こんな速さの助走で走ってきてここまでバランスを保って脚を振り切れるのは尋常じゃないです。

結論:蹴った後の体の動きは前ではなく真上

以上のようにめちゃくちゃ強いキックを蹴っている選手は基本的に蹴った後に前に進むというよりは真上にジャンプするような形になっています。

そして、この真上にジャンプするような蹴り方には以下の二つのメリットがあります。

①ブレーキによる加速効果
②振り子の支点が引き上げられることによる加速効果

このメリットについてこの後詳しく解説してきます。

なお、念のためここで言及しておきますが、ミドルシュートなどの最も強いキックを蹴るためには蹴った後の体は前に出ない方が良いというだけで目的によっては前に行くことが最適解であることもあります。
例えば、前回の記事で取り上げた走りながらのクロスなんかはそのわかりやすい例です。

当然ですがなんでもかんでもその場に体が残るように蹴れという訳ではありません。

①ブレーキによる加速効果

軸足の役割のイメージはブレーキかアクセルかと聞くとアクセルと答える人が多いです。基本的にキックの威力を上げるためには蹴り足のスピードを最大化することが重要なので、そのために軸足でさらに体を加速させるというのは確かに理に適っていそうです。

しかし、重要なのは蹴り足の速さが最大化されることであって全身の速さを高める必要はありません。
インステップキックでの蹴り足の速さは時速70kmほどと言われていて、どんなに頑張って走っても全身の速さは時速40kmほどにしかならないので、蹴り足にエネルギーを集中させていく工夫が必要と言えます。

その工夫の一つが軸足で体にブレーキを掛けることです。
実際にデ・ブライネ、ロベカルのシュートシーンを見てみると、助走の勢いを軸足で殺していて、インパクト直前の数コマの間には膝下のみが動いていることがわかります。

ブレーキを掛けると1.5倍に加速!

ブレーキを掛けることによる加速のイメージとして最も分かりやすいのは車や電車に乗っている時に急ブレーキがかかると体が一気に進行方向に投げ出される現象かと思います。

いわゆる慣性の法則というやつで、一般的には動いているものはそのまま動き続けようとする程度に理解されているかと思いますが、実はうまく使うと加速させる効果が得られます。

具体的に言うと、一本の変形しない硬い棒がある速度で運動している時、端点にブレーキをかけてピタッと止めてしまうと、逆側の端点の速度は1.5倍になります。 

ブレーキによる加速のイメージ

証明は少々難しいですが気になる方は以下の文献をご覧ください。

以上より、軸足でさらにアクセルを踏んで体を前に運ぶよりも、軸足はブレーキとして使うことが蹴り足を加速する上では有効になります。

ブレーキを掛けるには地面を後ろに押す

では、ブレーキを掛けるにはどうすれば良いかというと進行方向と逆向きの力を体に加えることが必要になります。

自分の体を自分で止めようとする場合、利用できる力は重力と地面からの力しかないので、進行方向逆向きの力が得られるように地面を押すことが必要になります。

よって、キックのトレーニングを考える上では後ろジャンプを含むトレーニングはとても効果的です。特に小学生の初心者の子はこの動きに慣れていないことが多いのでこれだけでもキックが大幅に改善されることがあり得ます。


そして、軸足で地面を押す力の向きは完全に水平方向に向くことは絶対になく上向きの成分が含まれるので、ブレーキを掛けるべきこの力を強く生み出すとジャンプ方向への力を受けることになります。

以上が強いボールを蹴る際には、体を前に進めるのではなくブレーキをかけて蹴るべきである理由で、ブレーキを強く掛けると自然と真上にジャンプするような形ができあがります。


さらにこの体が浮き上がるような蹴り方自体にも蹴り足を加速させる効果があるというのがこの後解説する二つ目のメリットです。

この先の解説を一枚の画像で表すと以下の通りです。

それでは細かく解説していきます。

②振り子の支点が引き上がることによる加速効果



※ここから先は有料エリアになります。
単品購入は以下のマガジン内から該当記事を選んでご購入ください。

また、月額制の定期購読マガジンであればよりお得に、しかもこれまでの記事(約20本)もすべて読めますのでぜひ以下のボタンからご購読ください!


ここから先は

2,417字 / 8画像

Kicking lab

¥1,000 / 月 初月無料

キックコーチ田所剛之によるトップ選手のキック分析記事をまとめて読めます。過去の記事も全部読めます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?