ワイ陰キャ、英会話を始めるも1ヶ月たたずにやめる

唐突だが、「英語ができる」というのはどういう状態を意味するとお考えだろうか。英文が読めること、自分の考えを英語で説明できること。いろいろな答えがあるだろうが、僕の中でこれは「英語を使って会話ができること」、これに尽きた。英語は言語なのだから、人とコミュニケーションをとるための道具なのであり、故に「英語ができる」とは「英語で会話ができること」だと、こういう思考回路である。

そして僕は自慢じゃないが、本当に英語ができない。齢24にして現役受験生の身であるから、読む方と書く方は人並みかそれ以上にできている自負はあるが、聞くに関しては、センター試験さえ受けていない私文ブンハローユーチューブだったから、小学校のときから最強の学習教材(自論)こと公文式で鍛えた耳は3日目の苺よろしくほとんど腐りかけていたし、話すことに関しては中学生のとき以来何もしていない。TOEICの点数と英会話力が乖離している選手権大会があったら、県選抜くらいはいけると思ってる。それくらいスピーキングとは無縁だった。

ところで世の中には4月病というしこたま厄介な病気があって、これは一般に「新学期を迎えた大学生が謎の意識の高さを発揮して、多くの授業を履修登録してしまう」というのが顕著な症状として見られる。大学生ではないうえに、24歳、社会人2年目、受験生、という特異なステータスの僕も、これに感染してしまって、具体的に言うと会社からきていた英会話の案内を見て「いっちょやったるか!」と、こう思ってしまったのである。レアジョブというオンライン英会話サービスで、6時から深夜までの間で1日25分、好きな講師を選んで受講する。通常は半年6万円のところを、90日以上受講することでそのうちの3万円を会社が負担してくれるというお得なシステムで、今冷静に考えると半年で3万円も結構高い気がするが、高すぎる意識故に理性が下暗くなっていた僕には、そんなこと考えずに申し込んでいた。頭の中の立○大学の「レッツ異文化コミュニケーション!」声に押されたのもあって、申込ボタンをポチ。これで、スピーキングのコンプレックスを克服し、ついでにリスニングもできるようになって、夢のTOEIC900点台…

そんなことを夢見ていた時期がありました。

いや、これがもう、始めてみると本当にキツくて、体と心に支障が出るレベルだった。具体的には、土日が来るのが憂鬱になったり(週4でやらないと条件を達成できないので基本的には土日の両方を費やさないといけない)、やってる最中に汗が止まらなくなったり(冷房効かせて上をエアリズムにしても効果がなかった。というかそもそも肌着で人前に出るな)、幸運なことに仕事もプライベートも充実していてノンストレス(もちろん瞬間的にストレスを感じる瞬間はある。最たる例は早稲田の悪問に遭遇したときね)な日々を過ごしている身からするとあまりにもダメージが大きすぎた。

オタク特有の早口でまくし立てて具体的に何がキツかったかを列挙すると、まず己の無力さを実感して辛い。こうやって書くと「成長期を目前に控えたジャンプ漫画の主人公」みたいでカッコいいんだけど、実際は「あまりにもモテないが故に逆に女性を嫌悪するようになった、拗らせ異常独身男性」の心情に近いと思う。読めることと話すことがイコールでないことをよく思い知った。直近の早慶オープン(そもそも直近じゃない早慶オープンってなんだ?)で偏差値70を超えた男ですら、「肉を焼く」を「burn meat」と言ってしまうし、toの後を動名詞にしてしまうし、なんならもうそこらへんの中学生と同じかそれ未満だ。しかも講師によっては真顔で低めのテンションでミスを指摘してくるから、なんかもう普通に萎える。上司とか仲間内のような、自分を知っている人から欠点を指摘されても前向きになれるけど、知らん人から言われるとただただ萎える。これは、英会話を通じて得ることができた唯一の発見かもしれない。

あともう一つ、この点がタイトルにも絡んでくるのだけど、僕が陰キャであることが何よりの原因だと思う。陰キャは人によって定義が違うが、少なくとも自分に関して言えば「コミュニケーションを厭う、保守的な人間」だと思っていて、例えば初めての人と話す前は億劫で仕方がなくて(緊張しているのもあるが、それ以上に何か失言しそうで怖い。ただ話してみると普通に楽しいパターンがほとんどだったりする)、会社の同期、とか高校時代の知人、とかそういう共通項がないと、会う1週間前からため息をついてるレベルだ。そんな僕が、言語すら共通でない、赤の他人検定1級の人たちと話して楽しめるか。こんなん、ちょっと考えればわかることなんですよね。まあ中にはジャパニズアニメイションが好きな人もいたのだけど、彼らはだいたいドゥラゴンボーとかナ↓ル↑ト↓が好きで、毎日3食マカロンレベルで偏食家のアニメ好きな身としては話が絶望的に盛り上がらない。中盤に至っては、好きなアニメの説明を求められるのが面倒だったから「I lineナ↓ル↑ト↓too!」とか言って誤魔化してた。 大学1年のときの陽キャに囲まれて死んだ顔になってた新歓コンパの時の方が、まだ楽しかったんじゃないか。講師はだいたいフィリピン在住のフィリピン人なんだけど、フィリピンに関して知ってることといえばマルコスとアキノとホセリサールくらいだし、もう何も話すことがない。一応そういう人のため(?)に教材的なものも用意されているのだけど、そんなものでこの渋さをカバーできるわけがなく。

「コツコツ努力する」「困難を乗り越える」が自他共に認める強みであったけど、陰キャのデバフが強烈すぎて、それをかき消してしまった。結果的に6月に入る前に辞めることを決断して、アプリを削除した。途中で諦めてアプリを消す瞬間、2年前のマッチングアプリの件を思い出して気が狂いそうになった。3万円の追加出費は確定したけど、まあそれで半年間ストレスを感じなくてすむなら安いもんだ。

一つ付け加えておくと、英会話そのものは人によっては本当に楽しめる趣味になると思う。英語が好きな人だったり、人と会話するのが好きな人、異文化コミュニケーション(立教大学)に興味がある人はぜひ始めてみるといいと思う。もし途中で挫折したら教えてください。あなたには陰キャの適性があります。もしそうだったら…一緒にターゲット1900とvintageの問題を出し合う生活を送りましょう。

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