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親知らず占い §1.4
初めて親知らずを抜いたその日に、電話をかけて問い合わせていたのだけれども、窓口はとても事務的で、
「占いの結果はそのままに受け取っていただくことが大事なのです」
としか答えず、解釈のヒントすらくれなかった。
でも、これはそもそもただの言葉遊びで、意味なんてないのかもしれない、とも思う。
「先生もこれやりました?」
「実はこれ流行り出した時にはもう親知らず全部抜いちゃってたんですよねー」
「
親知らず占い §1.3
そんなふうに記憶を思い出しているうちに、梵字がグルグルと回りだす。画面には12時の位置に小さな窓があって、回転が止まるたび、その中にある文字が画面の中央に大きく映し出される。選ばれた文字は、円の下に小さく並べられていく。10回くらい、そうして金色のルーレットが回るのを眺めていると、チャラーン、という軽薄な効果音が唐突になって、
「ケッカガテマシタ」
と、画面の中央に文字列が浮かんでくる。そ
親知らず占い §1.2
甲高い合成音声が、モニターの脇につけられたBOSEのスピーカーから聞こえてくる。それに、金管楽器をベースとした、エキゾチックBGM。さっきまで胸と脇腹に取り付けられていた心拍計のせいか、自分のあらゆる身体感覚が敏感になっていて、血流が早くなり、目が見開かれるのを感じる。微かに漂う、消毒液の香り。
金色の輪っかの周りには梵字が12個、ぐるっと取り巻いており、ちょうど時計の文字盤のような形になっ
親知らず占い §1.1
「またすごい形のが出て来ましたよ」
女医が見せてくれた歯は確かに妙な形をしていた。私たちがいつも「歯」と認識している、プリッと丸くて頭の潰れた臼状の部分の下にある4本の歯根が、その足先をぴっと揃えて真横に90°、曲がっている。ブサイクなアイドルの、膝曲げジャンプをそのままカチッと固めてしまったような、なんとも不安定な形状。こんなものが俺のアゴの中に埋まっていたのか…佐藤はえもいわれぬ気分になっ