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僕らが新規事業企画に失敗する理由

 社内起業を目指す人が最初につまづくのが、新規事業の企画だ。僕らは、大抵ここで迷走する。何時間も何日もかけて作り上げたビジネスモデルが、全然社内に伝わらない。やる気があるのに、全然会社はやらせてくれない。次第にどうでもよくなってくる。どうせ、やらせてもらえない。

1.初めに

 僕らの置かれている環境は様々だ。会社に恵まれていたり、上司に恵まれていたり、仲間がいたり、そうでなかったり。確かに環境の与える影響は大きい。つまり、周りが理解をしてくれず、自分のやりたいことがやれない時はある。けれど、原因を周りの環境だと言った瞬間、解決策は1つだけになる。

「辞めれば?辞めて、自分を正当に評価してくれる場所を探せば?」

 でも、僕は今僕らの置かれている環境で、新規事業を立ち上げる方法について話をしたい。だから、一旦、周りの環境については議論の外に置いておく。「私の上司は…会社は…業績が…」とりあえず、それはなしにして話をしよう。そうすると、変えなきゃいけないのは「自分」だ。

 今回の話はロールプレイングで進める。よく見る失敗するケースを物語風に作ってみた。このケースの失敗は何度も見てきたので、共感できる人も多いはずだ。今回は皆でこのロールプレイングを見て、そして最後にどこが良くなかったのかを解説して終わる。解決策は次回紹介する。

(文章長くなりすぎて、限界なだけ…)

2.ケーススタディ よくある事業開発の失敗事例

 老舗食品メーカーに就職して8年のあんこ君。ある日、出社したら突然こんなメールが届いた。

「挑戦したいそこのあなた、新事業を提案しよう!by 新規事業企画部」

 案が採用されると、今の仕事を他の人に引継ぎ、その新事業開発を担当出来る。あんこ君は、やる気になった。よし、絶対にいい提案してやる。

 まずは新事業の大義名分だ。それは社会問題のはずだ。新事業は、世界をより良くするものでなくてはならない。今、人と人とのコミュニケーションが希薄になっている(2020年5月新型コロナ自粛中)。全てがリモート化している。それは便利さもあるが、一方で孤独も強く感じるようになってきた。その揺り戻しとして人と人の触れ合いが大切になるだろう。そう、新しいビジネスは、「人と人とのふれあい」これをサポートするようなビジネスにしたい。

 ところで我が社は食品会社だ。人と人とのふれあいとはいえど食を絡めないと意味がない。当社理念の「食で皆を幸せに」に一致させないといけないな。ただ、それは問題ない。だって、食とふれあいは相性がいい。食卓を囲むって昔から言うくらいだから。そうか、皆で輪になって食事をとる、これが食の本質だ。つまり、「食事でふれあいを強化する」これが、ビジネスの軸だ。

 では、直接会えない中で、ふれあいが出来る食事ってどんな姿だろう。どんなツール、仕組が必要だろうか。それは明確だ。web会議サービスを利用しよう。Web会議やWeb帰省からのWeb食卓だ。

 なんか見えてきたぞ。新事業「IRORI」。新しい時代の囲炉裏はデジタルになっている。

② 企画書作成編

 えっと、企画書か。ビジョン、コンセプト、提供価値はもうあるから書けばよし。あとは、ビジネスモデルか。お客さんは、違う場所にいるAさんとBさん。それをzoomで繋ぐ。食事は、当社が提供する。お客さんは当社Webから食事を注文して、当社はその食事を同時刻にAさんとBさんに配送する。2人はzoomを使って同じ食事を共有する。これなら成立する。そうだ、配送業者とも手を組もう。

③ 発表当日

 「さて、今回の企画を説明させていただきます。商品名は“IRORI”。離れている人を食で繋ぐ新しい時代の団欒サービスです。では内容を説明させていただきます…。背景としては…。このサービスが目指すのは…。ビジネスモデルは…。」

 10分の持ち時間はあっという間に終わった。これから5分の質疑応答だ。審査官の1人が質問をする。

「当社がやる意味はどこにある?」

「当社は食に関わる会社です。社会課題もある。これを解決する使命を持っていると思います」

次の質問は、これだ。

「参入障壁*は?」 *他社が真似できないポイント

「食に関わるところは、食品会社だからこそ当社が有利だと思ますし…、それに当社はネームバリューもありますから…。サブスクリプション型にもしようと思っています」 

 準備を重ねて挑んだプレゼン。でも、全然手応えなし。審査員たちの質問も弾まない。その事業が進んでいる姿をイメージできないのだ。

 やる気はあった。やっていいと言われたらこれに命を注いだのに。質問もなんかパッとしたものではない。あんこ君はとてもむなしくなった。会社が公募したのに、なんだこのリアクションは。

3.失敗した理由

 あんこ君のようなケースをよく見てきた。これは完全に失敗するパターンだ。なぜだろうか。

 スタートが「社会課題の解決」なのが致命的だ。

 どんなビジネスも成立した時点でほぼ全て社会課題を解決している。誰かがお金を払うと言うことは、誰かがその事業を通じて幸せになっている(課題が解決されている)からであり、そのほぼ全てが社会課題に紐づいている。だから、社会課題の何を解決するか、というアプローチはビジネスの範囲を狭めているだけでいいことは一つもない。1000万人を救うけれど、毎年100億円赤字になるプロジェクトよりも、100人しか救わないけれど毎年10億円の黒字になるプロジェクトがあったとすれば、絶対に後者の方がいい。もしかしたら、背景の社会課題は前者の方が大きいのかもしれない。でも、事業化出来なきゃ解決する土俵にも立てないのだから、あまり気にしなくていい。

 それよりも考えるべきは独自性や自社の強みだ。それがなぜ当社がやるのか、参入障壁は何か、という問いへの強力なアンサーとなる。その独自性×自社の強みが、何の社会課題を解決出来るのかというアプローチにした方がいい(この具体的な話は次回書くつもり)。

 それでも、皆この落とし穴にハマっていく。なぜかと言えば、企画書フォーマットが社会課題(背景)から始まるからだ。だから、順番に考え始める。これは、聞く側にとっては理解しやすいフォーマットなのだが、企画側からすれば、脳を凍らす危険なフォーマットになる。だから、失敗するのだ。

4.まとめ

 今回は、失敗する理由について書いてみた。次回は、それを踏まえてどうすべきかを記事にする。まとめて書けば良かったのだけれど、たったこれだけの文章なのに、書くのが結構大変だったので2回に分けさせてもらう。

 次回の内容を少しだけ紹介する。新規事業を企画する際は、新しいこと×自社の強み×流行の掛け算をすること。これが新規事業企画のテクニックだ。

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