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社内起業するなら滑走路を整備しよう!

 起業する際に1番重要なのは推進力だ。新規事業開発を本気で考えている会社は、イントレプレナー(社内起業家)がスピードを出せる場所を作ってあげる必要がある。滑走路だ。これがアントレプレナーとの大きな違いの一つ。イントレプレナーが飛ばすのはロケットではない、飛行機だ。今日は、なぜ滑走路が必要かについて話をする。

1.会社が社内起業をさせる理由

 会社はなぜ、社内起業をさせるのか?

 遠回りに感じるかもしれないけれど、聞いて欲しい。多くの会社が望んでいることは「収入の柱を新たに立てること」だ。そのためには新たな事業開発が必要で、このため多くの会社は事業企画部とか、事業開発部とか、新規事業開発企画部とか、価値創造ソリューション部とか、とにかく何か新しいことをしようと模索している。

 うちの会社は全然そんな部もないし、そんな空気もないという人は試しに上司やそのまた上司、役員や社長に聞いてみて欲しい。

 「もし、1年で新しい事業を作れたら作りたいですか?」

 誰か一人はYesというと思う。実際、僕の記事を読んでそのまま社長に聞く人なんていないと思うけれど、僕らが思っているよりずっと会社は新規事業を欲している。

 では、なぜか。

 既存事業は常に過酷な競争に曝されていて、いつ仕事がなくなってもおかしくないし、価格競争の末に既に利益率が低くなっているのが一般的だからである。製品の力が弱いと販売価格は低く抑えられ、それに掛けられる費用は限られる。設備は古いものを使わなきゃいけないし、人件費(人数、給料)は掛けられない。そんな中、競合は海外の安い労働力や最新機械やプロモーションで仕掛けてくる。細かく業務が分断されると、この危機感は薄まり麻痺してくるが、経営者はこれを直に受け止める。このままずっとここで戦うのも簡単、安泰ではないということを経営者は良く知っているのだ。

 だから、敵がいないブルーオーシャンで新しい事業をやって一人勝ちをしたい、そう思うわけだ。これが、会社が考える「新規事業を開発したい理由」だ。

2.なぜ会社は邪魔をするのか

 会社は、新規事業を開発したい。それなのに、なぜか会社はイントレプレナーの邪魔をする。

 その理由はいくつかある。

① 新規事業開発の仕方を知らない。

多くのサラリーマンは新規事業をせずに昇進している。マネジメント能力を評価されたとか既存事業での功績とか構造改革とか、新規事業以外の成功体験を積んで昇進してきた。でも、それらの業務と新規事業開発は圧倒的にやり方が違う。それにも関わらず、上司はこれまで通りのやり方で新規事業開発をマネジメントしようとする。これは平和な国を治める方法で戦争を戦おうとするようなものだ。いちいち誰かが発案して説明して議論を重ね、その日は決まらず、「次回持越しで!●●君は、ここを調べてくるように!」なんてやっていたら、その間に味方の兵がバタバタと倒れていき、次回の会議には憔悴しきった一部のメンバーしか残っていない。そして、もう目に輝きはない。

 新規事業開発において、最初の計画はかなりファジーだ。その中での整理の仕方や説明の仕方もあるのだけれど、既存事業のようにこれまでの結果がないから、誰も未来予想は出来ない。その前提を上司は中々受け入れられない。だから、イントレプレナーは「会社にブレーキを踏まれる」と思う。

 上司たちもブレーキを踏もうと思っているわけではない。自分の経験則から照らし合わせて、最も良いと思うアドバイスをしているのだけれど、そのアドバイスが云々ではなく、その考え方からしておおきくかえなくてはいけないことを理解していないのだ。

② 間接部門と衝突をする。

 社内には色々な間接部門がある。法律、契約、知財、営業、広告、専門技術、情報などなど。彼らは責任感を持って日々仕事をしている。自分たちにしか出来ない仕事を行い、皆の仕事を成立させている。僕は間接部門が個人的に好きだし重要だと思っているが、社内起業をする場合は、間接部門と対立するシーンが出てきてしまう。

 時に、イントレプレナーは間接部門の仕事を否定する。正確に言えば、現業に合わせて間接部門は働いている。新規事業は現業と商品、顧客、提供価値が大きく異なるケースが多い。このため、間接部門にも違うリクエストをする。しかし、間接部門はこれまでと違うやり方を拒否する。社内開発が止まるのを避けるために強硬な手段に出る。

 こうしてイントレプレナーは間接部門と衝突をしてしまう。多くの場合、新規事業開発をしているチームと間接部門の組織は異なる。このため、組織、役員を巻き込んだ大きな衝突に発展する可能性もある。これはイントレプレナーにとって、とても大きな負担になる。

 朝も夜も必死で色々なタスクを抱えて、昼食もろくに取らずに頑張っているのに、なんでこんな社内エネルギーを使わなきゃいけないんだ、やめてやる!そう思う人はたくさんいるだろう。

③ 周りのメンバーは時として残酷な言葉を掛ける。

 イントレプレナーは、「意識高い系」として見られることがある。僕は色々な言葉を受け止めてきた。

「遊びとしては、とても楽しそうだね」「本業を真面目にやれ」「これからお前キャリアどうするの?」「いいよな、楽しそうで」

 どれも、言った側に悪気はない。僕のことを思って言ってくれてたり、あまり知らないから言っていたりする。僕だって本業を兼務しながらの事業開発はしんどかったし、キャリアは不安だったし、それこそ自分がやっていることが会社にとって正しいか不安になりながら投資をどんどん進めていることがプレッシャーで夜眠れなくなることもあった。自分自身もそりゃ不安を抱えながらやってますよ、皆さんと同じように。でも、これが会社(=皆の今後)の為と思って、歯を食いしばってやっているという側面もあるんです。それなのに、それを分かってもらえず仲間たちから仲間外れにされるのはちょっと辛い。

 あ、で、「いいよな、楽しそうで」のアンサーは、「その通り!!とっても楽しい!!」

3.滑走路の準備

 ここまで、なぜ事業開発をしたい会社が邪魔をしているように見えるかを話してきた。大雑把にまとめると「やり方を知らないこと」、「皆が既存の役割を果たすこと」「心無い言葉」が原因。これを取り除いて、まっすぐで障害物のない滑走路を整備することが必要だ。そんなの気にせずロケットを打ち上げてしまえばいいじゃないか、と思う方もいるかもしれない。しかし、会社の中でどうしても外せない決定方法というものがある。大きな決定事項は経営会議で決めなくてはいけない。そうでなければ、組織全体が崩壊する。このため、そこで承認を得るために、やっぱり滑走路は必要なのだ。

 ではどうすれば滑走路を作れるか、それは口で言うのはとても簡単だ。

① 既存事業と切り離す。

 どうせ誰もやり方を知らない。だからそれを受け止めて、やりたいと言っているイントレプレナーのやりたいようにする環境を整えることだ。別に組織を作らなくてもそれは出来る。役員レベルの大きな裁量を持ったメンバーが特命でそんなポジションを作ればそれで解決する。

 役員レベルの大きな裁量を持ったメンバーが協力してくれるなら苦労しないよ、という方は、その方用の進め方について追って記載する予定なのでそちらを見て欲しい。

 いずれにせよ、これで「やり方を知らないこと」「皆が既存の役割を果たすこと」はクリアする。

② 意義を伝え続ける。

 自分がなぜ、これをやっているのか、それは会社にとってどんな価値があるのか、新規事業の実現可能性、それでもやらなくてはいけない意味。そんな意義を発信し続ける。地道だけれど、同じことをずっと言い続けることはリーダーシップを取る上で必要なテクニックだ。

 出てきた答えが平凡すぎる、と思ったかもしれない。けれど、特効薬はない。それに僕らの置かれている立場はそれぞれ違う。全てはケースバイケースとなる。それでも大体同じなのは、その困難に直面している理由だ。今回僕が共有したかったのは、この理由、原因に当たるところ。原因さえ分かってしまえば、解決方法は自ずと見えてくるものだ。

4.滑走路が出来上がったら

 滑走路が出来上がったら、あとは優秀なエンジンを積んで飛行機を操縦し、無事離陸させること。どんな飛行機を作るべきかはまた後日。そして、さらに付け加えると、滑走路が出来上がってから飛行機を作っていても遅い。滑走路と飛行機は同時に作る。さらに言えば、滑走路が途中までの仕上がりでも助走をし始めてしまう。そうすることで、滑走路を整備出来ない理由を作らせないのだ。これが社内起業に滑走路が必要な理由で、それを作る方法だ。

 もっと知りたい方は是非僕にコンタクトを取って欲しい。知っていることはなるべく伝えたいと思っているし、それが僕の気づきにもなる。仲間が少しずつ増えていったらとても嬉しい。

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