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腎臓移植手術までの道のり

ここまで腎臓移植手術と一言でお伝えしてきましたが、そこにたどり着くまでの道のりはかなりの工程を踏みました。

正確かつ詳細な情報については当然のことながら
実際に手術を受ける病院でレクチャーを受けるに越したことはないですが

実際どういうことをする必要があるのかという情報を
事前に知っておくのも必要かと思い
参考までに私の経験をもとにお伝えします。


腎臓移植のための転院

腎臓がいよいよ動かなくなってきた頃、担当医師から人工透析を薦められました。
ご存じの方もいるかと思いますが、多発性のう胞腎は遺伝による説があります。
例に漏れず私の父も多発性のう胞腎を持ち、人工透析をしていました。

父の闘病生活は過酷極まりないものでした。
※闘病生活の内容はまた別の記事でお伝えします。

それを見てきた私にとって人工透析を選ぶというのはかなりの抵抗感がありました。
そこで医師に「腎臓移植を希望します」と伝えました。

実は「腎臓移植」は妻が提案をしてくれました。
自分の病気に無頓着だった私に最良の提案をしてくれた妻には感謝してもしきれないです。

当時お世話になっていた病院では腎臓移植を扱っていなかったため、事前に調べていた別の病院を指定し、医師に紹介状を書いていただきました。

とても親身に診ていただいてた担当医の診療を中止するという申し出は少し尻込みするところもありましたがそれは杞憂であり、私の希望に対して快く紹介状を書いていただきました。

移植の意向確認

紹介状を手に、事前に調べた腎臓移植の病院に向かいました。

病院側は勝手知ったる対応で、早速「腎移植外来」に受診できました。

私が過去に経験してきた受診と一つ違う部分として、担当医のほかに「コーディネーター」と呼ばれる方が付きました。

というのも腎臓移植は病気の治療とは異なり、自分自身の他に臓器提供者「ドナー」が必要です。
※ちなみに臓器を受け取る側は「レシピエント」と言います。

そして腎臓移植の意向確認を行うわけですが
自分自身はもちろんのこと親族の意向確認が必要で、さらにはドナーが誰で、そのドナーの意向確認が必要になるからです。

そしてこの意向確認は結構綿密に行われます。

なぜかというと、主に以下のようなトラブルを回避するためでした

  • 患者や親族の誰かの強い圧力によりドナーが自分の意志に反して臓器提供させられるケース

  • 患者とドナーが同意していたとしても、身近な親族に伝わっておらず、術後に反対者が出てきてもめるケース

私自身、前者は事前に想像できましたが、後者は言われて気づきました。

つまり臓器移植は個人間のシンプルなものではなく周囲の多くの人を巻き込んで同意形成する親族総出の一大イベントということです。

私自身も事前に妻はもちろん両家の1親等の家族全員とその先の繋がりのある親戚にも伝えて反対がない旨を確認しました。


ドナー選定の決断

ドナーをどのように決めるのか

ドナー探しというと「臓器バンクに登録して適合者が現れるのを待ち続ける」というイメージをお持ちの方もいるかと思いますが
「腎臓移植」のコーディネーターから聞いた情報としては

血液型が違っても移植できるというくらい適合範囲は広いとのことでした

現在は免疫抑制剤をはじめとした薬の研究が進み、他人の臓器を体内でみつけた際に活性化し攻撃を始める「免疫系」の働きを適度に抑えることができるようになりました。
※この免疫抑制剤の詳細なお話は、追って別の記事でお伝えします

これは言い換えると良くも悪くもドナーになれる人の選択肢が広いということです。

これには様々なケースが考えられますが、私の場合を紹介します。

最初に妻と二人で相談した際に、妻からドナーの申し出がありました。
(本当に感謝の気持ちでいっぱいでした・・・)
そして母と相談し、母も申し出てくれました。
その後、義理の父(妻の父親)までも申し出てくれました。

こういった状況は本当に恵まれていたと感謝しています。

コーディネーターと相談しながら慎重に検討を進めた結果

妻の腎臓は息子の万が一のために残しておき
血縁的にも親和性の高い母にドナーになってもらうという結論に至りました。

母は当時70歳を超えていましたが、ドナーとしては特段高齢ということもなく、腎臓も十分機能できるということでした。

今更ながら念のためのご説明ですが
人間の腎臓は通常2つあるため、正常なドナーであれば腎臓提供後も命に別状はありません。もちろん2つのうち1つを失うので腎機能的には元の7割程度まで落ちます。(単純計算で半分とはならず残った腎臓が頑張ってくれるようです)

徹底的な身体機能検査

ドナーが決まったらすぐ手術というわけではありません

まず数か月埋まった手術予約をかき分けて日程を決めます。
最終的な手術の日程はドナーが決まった日から半年ほど先でした。


ただそこまでひたすら待ち続けるのではなく
その間にこれでもかというくらいの健康診断があります。

腎機能はもちろんのこと
身体測定的なものから脳や内臓系のMRI/CIスキャン/エコー/レントゲンなどなど、中でも印象深いものでは

お仕置きのような眼科の検査
穴の開いた大きな壁のような機械に顔を押し付け、さらに後ろから押さえつけられる検査

お仕置きのような泌尿器科の検査
股間部分が完全に開いたハーフパンツに着替えて、性器を持たれたと思ったら尿道に勢いよく管を差し込まれ、その管から検査液を膀胱に逆流する形で流し込まれ、尿意を感じたら管を抜きカメラの前で最大限勢い良く放尿する検査

などなど、ありとあらゆる体の機能を見られました。


というのも腎臓移植という大手術において、事前に防げるリスクは完璧なまでに予測し、最悪手術を断念することも視野に入れて万全を期すということでした。

また、ドナーの母もほぼ同じメニューの検査を受けましたが
加えて心理カウンセリングも受けました。

1on1での対話のため、直接内容は聞いていませんが
概要としては

親族からの圧力によるものではないか」という再確認に加えて
自分の意志だったとしても「自身の中での無意識に感じる圧力ではないか」といった可能性も含めて
術後に「提供しなければよかった」という気持ちが生まれる可能性が本当にないか
あったとしても乗り越える心構えができてるかというものでした。

まとめ

このような道のりを経て、手術を迎えることになります。
※入院~手術~退院の様子についてはこちらの記事をご確認ください


なかなか大変そうでしょうか。
正直なところ大変でした・・・

でも手術を終えて半年たった今、私自身としてはその大変さに見合う以上の見返りがあったと思ってます。
※この点についてはこちらの記事をご確認ください


そしてコーディネーターの方が本当に丁寧で安心して身を委ねることができたので道に迷うことは、ほぼほぼありませんでした。
当時お腹に赤ちゃんがいるということで、ご自身のことだけでも大変だったと思いますが、本当に親身になって対応していただきました。

本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ここに書いて届くかどうか定かではありませんが
本当にありがとうございました!



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