腎臓移植手術:入院~手術~退院の流れ
ここまで腎臓移植に向かって様々な手続きについての記事を書いてきました。
今回はいよいよ入院と手術です。
入院~手術
入院そのものの流れはごく一般的なものでした。
外来棟にある入院受付で手続きを済ませて、徒歩で病室のある病棟に向かいます。
病棟で手続きをし、ナースステーションで入院の旨を伝えて病室にチェックイン。
※「一般的」という言葉を使ったのは、私自身数々の病気を経験しており、今回が6度目の入院のため「大体こんな感じかな」といったイメージがあるのでそんな表現になってます。
入院歴や入院時のノウハウはまた別の記事でお知らせしたいと思います。
数日遅れてドナーの母も入院しました。
同じフロアでの入院だったので入院中には気軽にコミュニケーションを取ることができました。
入院してから手術までに行った主な検査は以下のとおりです
腎臓のCT
これについては特に説明はしなくてもよいと思います。
手術前に最後の確認をするといったようなものだと思います。
歯科検査
これは少し意外でした。ごく一般的な歯医者さんでの定期健診のような内容でした。歯石の除去もしていただきました。
免疫抑制剤の影響で歯周病が悪化したり、いくつか薬の制限が必要になるからとのことでした
人工透析
名目上は先行的腎移植でしたが、クレアチニン値が6だったため、腎機能としては手術に耐えられない状態でした。
そのため、手術前に人工透析を行い体の調子を整える必要がありました。
※初めての人工透析のお話については別の記事でお伝えします
初めての人工透析
私の場合少し少数派のケースかもしれませんが、先行的腎移植ですがシャントは開設ずみでした。
腎機能的にギリギリな状態だったため、医師と相談していつでも人工透析できる準備をしていたためです。シャントがない状態で人工透析をする場合も有ります。そういった方ももちろん周囲にはいて、その方は首の太い血管から針を刺して行っていました。
首に管がぶら下がった状態で少し邪魔な印象に見えましたが、苦しい様子はありませんでした。
手術前の様子
手術前の準備については特段腎臓移植独自のものはないように思います。
前日夜で食事を止めて、下剤でお腹を空っぽにする。
手術着という脱ぎやすい服に着替える。
違いというほど大きなことではないですが、取り立ててかき出すとすれば、左右どちらのお腹を切るかだけ事前にマジックで印をつけました。
午後の手術の場合、午前の手術の状況で時間が前後するので呼ばれるまでのんびり過ごします。
この待つ時間は初めての手術の時は本当に落ち着かずソワソワしてました。
ただ私は今回人生で5回目の入院手術ということで、心静かに過ごすことができました。
※手術歴については別の記事で
そして声がかかります。
徒歩で手術室に向かい、ベッドに横になります。
手術室の様子はだいたいテレビで見るようなものと同じです。
実物を見ないと分かりづらいところとしてベッドは寝返りできないくらいに細いです。
麻酔用のビニール袋のような覆いを頭から被され、麻酔の先生と会話をしながら「じゃそろそろ麻酔入れていきますね〜」という声を聞き
少し変な匂いがするな〜と感じるとほんの数秒で気を失います。
何か我慢するとかそういう次元ではなく、抵抗する間もなく落ちます。
手術中
手術中という見出しを書きましたが、正直なところ記憶が一切無いです。
なぜなら
麻酔が効いてきて気を失い目を閉じたと思ったら手術が終わってます。
より正確な描写でお伝えすると
「麻酔の変な匂いがするな~」と思った次の瞬間
「○○さん終わりましたよ~」と名前を呼ばれて手術が終わってる
といった感覚です。
私の場合手術に6時間かかったとのことなので、6時間が一瞬で過ぎ去ったという感覚です。
※私自身の腎臓移植手術の具体的な措置内容は別の記事で詳しく記載します。
手術直後
入院前に周りの方に「手術頑張ってね」と声をかけられることがありますが
実際手術中に頑張るのは医師の方々です。
当の本人は全身麻酔で気を失ってるだけなので頑張る余地が全くない状態です。
本人が本当に頑張るのは手術が終わってからです。
手術直後は手術室から集中治療室へ移動します。
(もちろんベッドに横になったまま)
そしてそこで半日以上横になったままで過ごします。
体中に管が刺さった状態かつ足はマッサージ器のようなもので包まれているため寝返りのようなことはできません
多少体を斜めにする程度なら動けます。
痛みはどうかというと、当たり前ですが痛いです。
腎臓の容積が3500ccあり、それを摘出するためにお腹を20cm以上切りましたので。
ただし、「お腹をバッサリ斬られた」と想像した際の痛みに比べると
実際に感じる痛みは死を覚悟するほどではありません。
というのも手術直後は点滴と同時に強力な痛み止め(モルヒネ的なもの)を入れてもらいました。
加えて、痛みが限界を超えたとき用に自分で追加注入するためのボタン(ナースコールと同じようなもの)もありました。
手術を何度か経験してきて得た私としては
「痛みは我慢せず痛み止めに頼る」ということを教訓としてます。
ですので結構な頻度で痛み止めボタンを押していたら気分が悪くなり何度も吐きました。
胃は空っぽですが、唾を飲み込むだけで強烈な吐き気に襲われました。
そして吐くたびに必然的にお腹に力を入れることになります。
切って間もないお腹に力を入れるというのは
想像を絶する痛みで、何度も気を失いそうになりました。
何度目か吐いた後、唾が出たらティッシュに吐き出すということを覚えて窮地を脱しました。
ちなみにこの吐き気は経験上、全身麻酔が抜けきらない状態で良く起きるものです。
※このあたりのノウハウは別の記事で詳しく記載します。
麻酔が切れてきて痛みとの付き合い方がわかってくると
今度は暇になります。
半日以上何もせず過ごすわけですから。
「何もせず」というのはトイレや飲食も無しです。
寝てしまえばいいのですが、痛みは続いているので
浅い眠りですぐ目が覚めます。
その半日以上の暇と痛みとの闘いを終えるとやっと病室に戻れます。
病室では一応スマホなどで音楽を聴いたり動画を見たりは可能で
痛みもだいぶ慣れた状態なので心落ち着く感じにはなります。
手術翌日以降
手術翌日、つまり病室の戻った日の午後ですが
歩かされます。
このスケジュールを聞いたときは聞き間違いかと思ったほど驚きましたが
本当でした。
腕の点滴1本に加えて、脇から膀胱付近にかけてカテーテルが3本、尿道カテーテル1本の計5本の管が差さっている状態で病棟の廊下を一周(7~80mくらい)歩きました。
当然のことながら切ったお腹を伸ばすと激痛が走るので
キャスターの付いた点滴のバーに体重を預けるような形で
前傾姿勢になり、半歩ずつ進みながらなんとか終えました。
余談ですが、切った後の縫合は糸ではなくホチキスで止まってました。
それも普段文具として使うものの3倍くらい大きな歯のホチキスです。
それが何本も刺さって傷を塞いでます。
最初に思ったのが「地図記号の電車みたい」でした。
なぜこんな拷問のようなことをするかというと
麻酔で停滞していた内臓(特に腸)の動きを取り戻すためでした。
腸の動きが活性化し、ガス(平たく言うとオナラ)が出たら
食事を再開できるということです。
逆に言うとガスが出ないと食事を再開できないわけで
痛みを堪えて歩くことを強いられるわけです。
結局私はその日にガスが出ず、さらに翌日の夜から食事を再開しました。
(個人差もあるかと思いますが、その間の栄養は点滴からとっているので空腹感による苦痛はほとんどありませんでした。)
残りの入院期間は経過とともに回復し、体に差さっている管が無くなっていきます。
ちょっとしたトラブルで尿道カテーテルを抜くのが4日ほど遅くなりましたが、その間のメンタル的なストレスは正直入院期間で一番の苦痛でした。
(男性諸氏にしか理解していただけないものかもしれませんが)
また回復するにつれて入院食も変わってきました。
手術前はたんぱくや塩分の制限付き食事でしたが、手術後は「通常食」つまり制限のない食事になりました。
健康な方からしたら特に対した変化ではないかと思いますが、それまで常に食事に気を使ってた身としてはこの変化に込み上げるものがありました。
まとめ
ということで入院期間13日という人生で一番長い入院生活を終えて
無事退院を迎えました。
とはいえ、傷口の痛みはまだまだ残っていて通常時の半分くらいの速度で歩くのが精いっぱいといった状態での退院です。
ここから通院生活がスタートしますが、少し長くなりそうなので
この続きはまた別の記事でお伝えしていこうと思います。
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