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自#094|若い人たちに、迎合する必要はないし、おじさん達の懐古趣味で、全然、構わない(自由note)

 EduAで、フリーライターの武田砂鉄さんのインタビュー記事を読みました。通っていた高校は、明治学院東村山高校です。私が7年間勤めた高校の近くです。都会とは言えません。若者にとって、面白そうなものは、特に何もない田舎です。武田さんは、学校の近所に住んでいたそうです。つまり、地元の高校です。同級生の多くは、都心から通学していて、彼らは帰りに吉祥寺や新宿で遊んだりします。そうすると、情報格差と言うか、過ごし方格差が生まれます。みんなが学校帰りに女子とカラオケに行っている時に、武田さんは、チャリで帰りながら、ブックオフで100円の本や、安いCDを買っていたそうです。

「『この差はなんだ』って、そういう違和感のようなものは、今も鮮明に記憶されていて、感情の引き出し=データーバンクになっています」と、語っています。

 放送室のミキサー卓の傍で、放送委員会のメンバーと3人で写っているスナップが掲載されています。一人は、剽軽で喋り易い感じ、座っているもう一人は明らかにイケメン。中央の制服姿の武田さんからは、偏屈で絡みにくそうだと云う印象を受けてしまいます。女子に
「武田くん、カラオケ行かない?」と、気軽に声をかけられそうなタイプでは、絶対にないと推測できます。

 お兄ちゃんは優秀だったそうです。お兄ちゃんは、中学も大学も第一志望に受かる「王道」を歩んだタイプ。
「ありがちな話ですが、親から『お兄ちゃんは、こんなにできるのに』と言われることがあったので、自分の中に、コンプレックスが、グツグツと沸いていたのかもしれません」と、正直に仰っています。

 明治学院は、ミッションスクールです。大学では、キリスト教のミッションらしきことは、特に何もしませんが、高校では毎朝、礼拝があるそうです。小さい頃から、教会に通っていれば、礼拝に出席することは、ごく自然に受け止められると思いますが、高校からいきなりだと、多分、違和感があります。その違和感を、パロディーと云うスタイルで、表現したんだと思いますが、旧約聖書の中にあるモーセが、紅海が割れて海を渡るシーンと、イエスが、湖の上を歩くシーンとを、混ぜ合わせてみたそうです。そうすると、イエスが、湖が割れて、あわてふためくと云うことになってしまいます。ミッション系の学校で、このパロディと云うかギャグは、多分、受け入れられないと想像できます。当然ですが、褒めてくれる先生は、いなかったようです。特にお咎めもなかったのは、生徒指導がさほど厳しくない自由な学校だからだと想像できます。

 ハードロック(メタル)のファンだったので、音楽雑誌(BURRN)の投稿欄にレビューを書いて送ったりしていたようです。私は、バンドの部活の顧問を、ずっとやっていましたし、音楽好きなので、ハードロックも普通に聞きます。高校時代にハードロックにのめり込む生徒は、無論、ハードロックのあの感じ(疾走感のあるリズムとか、クラシックのような様式美とか)が好きなんでしょうが、それ以上に、自分を守るシェルターとして、ハードロックで自分を囲っているみたいなとこはあります。今、大活躍されている脳科学者の中野信子さんも、高校時代は、そういうタイプだったそうです。確かに、サーフ音楽や、ブリッドポップ、メロコアなどよりは、ハードロックの方が、はるかに自分を守ってくれそうな気はします(誰かに何かgdgd云われたら、デスボで、やり返す的な・・・)。

 武田さんは、大学生になって「beatleg」と云う洋楽の専門雑誌の編集長に
「ロックって前衛的なものだった筈なのに、貴誌は、なぜおじさんたちの懐古趣味のような、音楽ばかり取り上げるのですか?」と云う生意気な手紙を書いて、編集長がそれを面白ろがってくれて、beatlegに定期的に原稿を書くようになったそうです。まあ、これは一種の美談だと思いますが、懐古趣味に陥ってしまうのは、ある意味、やむ得ないと云う気もします。

 私は、ここ10年くらいのロックは、もうまったく知りません。ミューズの5枚目を買ったのが最後で、その後、新譜のCDは買ってないと思います。なぜ買わないかと云うと、それはつまり、最近のロックが、面白くないからです。歳を取って、感性が鈍くなって、ロックの面白さが解らなくなったと云うのであれば、別にそれはそれで構わないと割り切れます。が、そういうことでは多分、ないです。ロックに関して言えば、60's、70'sあたりが頂点で、そこからは、時代が下るに従って、ロックのレベルは、下がって来ているんです。私は、コールドプレイもストロークスもミューズも聞きますが(別にそう悪くはないと思います)60's、70's的な基準に立つと、最後のロッカーは、ニルヴァーナー(カートコバーン)だったかなと云う気はします。

 80'sの終わりから、90'sにかけては、圧倒的にヒップホップの方が面白かったと、客観的に言えると思います。アメリカ社会の実態やディティールを知っているわけではありませんが、90'sと云う時代が、ヒップホップを求めていたと推測できます。ミレニアム以降のことは、良く解りません。ヒップホップとR&Bの区別が、私のような素人には、もうつけられなくなりました。R&Bとヒップホップの双方が、お互いに歩み寄って、ああなってしまったんだろうと勝手に考えています。

 ローライダーの教え子が、「今、福生(のクラブ)じゃ、これです」と言って、サウスのヒップホップを聞かせてくれました。西海岸と東海岸をミックスしたようなヒップホップで、R&Bっぽくはなかったです。

 60'sと70'sを体験している人間は、ミレニアムとか、2010代に全面的にコミットすることは、もう多分、できないんだろうと、単純に考えています。若い人たちに、迎合する必要はないし、おじさん達の懐古趣味で、全然、構わないと、そこもsakuっと理解しています。

 武田さんは、「(フリー)ライターっていう肩書きって、軽んじられることもある。でもその感じが実はいい」と仰っていて、それは私も普通に同感できます。
 

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