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自#171|模範解答から、リアルを引き出して来るためには、それ相当のリテラシー能力が要求されます(自由note)

 テレ東のアナウンサーの角谷暁子さんのインタビュー記事を読みました。角谷さんは、中2の時に、児童文学作家の荻原規子さんが、お書きになった「樹上のゆりかご」と云う本を読みます。「樹上のゆりかご」は、都立高校が舞台で、生徒たちが、自由闊達、のびのびと青春を謳歌している物語です。当時、角谷さんは、私立の中高一貫校に通っていたそうですが、「樹上のゆりかご」の登場人物のような高校生活を送ってみたいと思い、お母さんに相談し、都立高校を目指すことにしたようです。

 中2くらいに、熱心に読む本、ひたすら聞いた音楽、観た映画などの影響は、ある意味、絶大ってとこあります。誰しもが、何かしら、夢を見てしまう時期です。誰もが、大なり小なり中二病に陥ります。中二病に陥って、人生をchangeできるか否かは、家庭環境や周囲の友人の組み合わせ、偶然の出会いなど、様々な要素に左右されます。安全かつ安泰の中高一貫校の慣れ親しんだ文化を捨てて、まったく文化違いのある意味、劇画のような公立中に転校して、都立の名門校を目指すとかって、正直、リスクが高すぎます。中二病をこじらせているからこそ、思い切って、清水の舞台から飛び下りるような大決断ができたと言えます。

 角谷さんは、中3の時、地元の公立中学校に転校し、受験勉強をして、翌年、日比谷高校に進学します。中3で、いきな転校したわけですから、正直、いろいろ大変な中3ライフだったと、容易に想像できます。まあ、普通はイジメられます。が、そういったネガティブなことは、一切、語っていません。アナウンサーとか、お笑い芸人とか、役者さんなどは、視聴者がいてくれてこその、客商売のビジネスですから、基本、ネガティブで後ろ向きのぶっちゃけ話とかはできません。

 角谷さんが入部した部活は、ストリート系のダンス部。一般的に言って、明るくて、陽キャな人が集まっている、学校カーストNo1のイケイケ部活です。日比谷は、受験校です。バリバリの受験校の部活の水準が、超ハイスペックと云ったことは、理論的にあり得ません。超ハイスペックになるためには、勉強をさておいて、部活に打ち込む必要があります。受験校と云うのは、まず最初に受験勉強ありきの学校です。ですから、部活は二の次です。だからこそ、部活をほど良くenjoyできると云う理屈も成り立ちます。

 日比谷から東大に、今年は40人進学しています。公立高校の中では、東大合格者No1だそうです。が、その昔の全盛期は、200人くらい東大に合格していました。全盛期の五分の一です。ここまで、よくぞ持ち直したと賞賛すべきか、私立にはやっぱり太刀打ちできないんだと悲嘆すべきか、まあ、そこは個人の考え方が、分かれてしまうとこです。

 角谷さんは、慶応の文学部に進学します。慶応に進学して、慶応のミスコンで優勝し、アナウンサーになると云うのは、定番のコースのひとつでしたが、どうやら、現在、各大学のミスコンは、中止の方向で動いているようです。慶応は、ミスコンの主催団体に問題があると云うことで、去年あたりから、中止になっています。実際は、ミスコンで、優勝しただけで、アナウンサーになれるわけでもないです(アナウンサー学校などにも通う必要があります)。そもそも、角谷さんがミスコンで優勝しているかどうかも、解りません(インタビュー記事には、そんな風なことは書いてません)。慶応のミスコンで優勝したんだったら、テレ東ではなく、フジかテレ朝だろうなどと、突っ込むつもりも、全然ありません。

 woodyな木の椅子に座った、縦長の写真が掲載されています。上衣は藤色のヘンリーネックのchicなブラウスです。下衣は、同系色の襞のついた長いスカート。テレ東とは思えない、NHK-eテレのような、しっとりと控えめ、清楚な感じです。左耳の真珠のイアリングが、清楚さを、さらにpower upしています。高校の卒業式の時、卒業証書の入った筒を持って、友人とピースしながら撮ったスナップも、別のとこに掲載されているんですが、そっちは笑顔で、少し口を開けて、歯を見せています。藤色・清楚系の方は、口を閉じています。清楚系を装う場合、歯を見せないのが、もしかしたら、お約束なのかもしれません。

 角谷さんは、中高時代、山崎豊子さんの、政治家の番記者が夜討ち朝駆けをしているような、社会派小説を好んで、お読みになっていたようです。私も一時期、新聞記者を将来の進路の選択肢として、考えていたことがあります。早稲田の政経学部に進学したのは、将来、新聞記者もありかもと、思っていたからです。大学2年生の時、住んでいたアパートの近所にあったスペイン料理の店のマスターのお兄さん(毎日新聞の記者でした)と、いろいろ喋って、新聞記者と云うのは、生活のリズム作りが、絶対にできない職種だと、はっきり理解しました。その頃、マクロビオティックとか、自然食とかに興味を持って、多少、勉強もしていて、生活のリズム作りができない進路は、自分には無理だなと、新聞記者および、マスコミ全般を、進路の選択肢から外しました。

 角谷さんは、26歳。入社して3年目です。現在、「News モーニングサテライト」(木、金曜日担当)、「そろそろ、にちようチャップリン」(土曜日)、「The 名門校」(日曜日、BSテレ東)と、レギュラー番組を、3つ持っています。入社3年目のまだ新米アナウンサーが、3つもレギュラーを持てるのって、すごいです。テレ東だからこそ可能な、自己を鍛えるための超多忙なメニューをこなしていると言えます。
「The 名門校」では、さまざまな高校を紹介しているそうです。私も、自分の部活が大会で上位に進出し、テレビや雑誌で、自分の勤めている高校や部活を紹介してもらったことが、何回かあります。どこも学校さんもそうですが、基本は、やはり「盛りまくり」です。真実も、a little、折り込みます。それは、盛った部分にリアリティを持たせるためです。まあ、正直、これってサギに近いかなと、思わなかったわけでもありません。が、とにかく、人を集めないと始まりません。

 角谷さんは「感受性の強い10代と云う時期に通う学校は、その人を作り上げて行く場所だと、毎回、番組をつくっていて感じます。都立高校は自由な雰囲気だけれど、私立はその学校が大切にしている方針が、よりはっきりしていて、そこに通ったからこそできる軸が何なのかを、番組を通して、垣間見ることができると感じ、それぞれに良い部分があると思います」と、如才なくインタビューに答えています。そつのない、模範解答です。「The 名門校」も、きっと模範解答的な番組です。模範解答から、リアルを引き出して来るためには、それ相当のリテラシー能力が、やはり要求されます。


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