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サウナタウンで見えた『都市型サウナイベント』の作り方

「サウナタウン下北沢」を覚えてらっしゃる方も多いでしょう。2022年1月7日から3月21日まで、およそ74日間に渡り開催された都市型サウナイベントになります。

来場者数は1万人以上に達し、テントサウナを用いたイベントとしては前代未聞、国内最大規模だったのではないでしょうか。テレビ局からYoutube、WEB媒体やラジオ、果てはドラマ撮影に至るまで、数十回以上にも及ぶメディア露出でご覧になられ、実際に足を運ばれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者はサウナ運営のサポートとしてお手伝いをさせていただきましたが、サウナタウンがどのようなイベントだったのか、イベント運営を通してわかったこと、都市型サウナイベントの作り方に至るまでをまとめていきます。

サウナタウンはこうしてはじまった

事のはじまりは、サウナタウン下北沢の1年前。渋谷のとあるカフェ施設にて、1台のテントサウナが設置されたのがきっかけでした。株式会社NEWTOWNの代表で、現サウナタウン主宰の片岡氏がテントサウナに火入れをし、1ヶ月限定のクローズドの招待イベントとして運営されたのです。

サウナタウン vol.0とも言える、実にこじんまりとしたイベントではありましたが、サウナタウンの温浴に対する想いと、世界観はバキバキに仕上がっていたのが印象的でした。イベント規模が小さかったにも関わらずです。

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そして冒頭のサウナタウン下北沢開催につながるのですが、キックオフから開催までの準備期間はわずか1ヶ月半と、今思い返しても無茶苦茶なスケジュールですが(笑)実に異例なスピードでイベント準備が行われたのです。

さらに、片岡氏とサウナタウン vol.0のスタッフとして参加していた梶山氏はテントサウナの火入れ経験があったものの、コアメンバーの9割以上は火入れ未経験。テントサウナを最大10台稼働させるということは企画段階で決まってしまい、火入れを行うスタッフを数十名、1ヶ月半という短いスパンで新規採用するという驚くべき状況でした…

テントサウナに毎日火入れをしてわかったこと

テントサウナのnoteを執筆し火入れ経験があった筆者は、未経験のスタッフ向けに火入れマニュアルを作成し配布します。とはいえ私も大多数向けの火入れマニュアルなどを作成したことがなかったため、周囲のテントサウナ専門家にアドバイスを仰ぎながら、不可欠となる項目を埋めていきました。

また、私自身も周囲にいたサウナ好きなどに声をかけ、なるべく火入れの経験がある、もしくは経験がなくともやる気に満ち溢れた方などにお声がけをし、サウナタウンのスタッフとしてお手伝いいただくこともありました。(ご協力いただいた皆さん、この場で改めて御礼を言わせてください…!)

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テントサウナを使うのは月1、多くても週1という方が大半かと思いますが、テントサウナに毎日(※1日10時間以上)稼働させるという前例がない状況で、火入れ経験のなかったスタッフ達が火入れのみでなく、細かな部分にも行き届いた清掃やサービスの提案、来場者との積極的なコミュニケーションを試みるなど、目にも止まらぬ勢いで急成長していきます。

サウナのレビューサイトにおいても、スタッフのソフト面が徐々にクローズアップされ、サウナタウンはスタッフのホスピタリティで成り立っているイベントであるという評価を頂くまでになります。温浴施設の諸先輩方には僭越かもしれませんが、感覚としてはイベントというよりも最早ひとつの温浴施設を運営するかのような、ある種のダイナミズムを感じていました。

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大雪でテントが倒壊してしまったり、冬の寒さでサウナの室温が上がらなくなったり、テントやストーブがだめになってしまったことも数多くありました。しかしながら平均年齢が20代前半~中盤の若いスタッフ達が、サウナを通して来場者に喜んで頂きたいという一心で奮闘する姿をみて、サウナイベントの本質は「人」であるということがわかったのは大いなる収穫でした。

昨今、アウフグース世界大会の日本予選が行われたのも記憶に新しいですが若い世代、女性も含めて、サウナでの従事体験を通して活躍する方が増えており、温浴における新たな雇用機会が拡大しているように思います。サウナで働きたいと考える方も、実際はかなり増えているのではないでしょうか。そのような市況下において、サウナイベントが果たす機会創出の役割は大きいはずです。この気付きこそが、今回のnoteでもっとも伝えたいことです。

都市型サウナイベントの作り方

続いて都市型サウナイベントを開催する上での、現実的な準備ステップについてまとめたいと思います。サウナタウンにおいても大きなきっかけとなりましたが、スポンサー企業、もしくは資金調達先の確保が欠かせません。

都市型サウナイベントにおけるスポンサーの投資対効果は、決して小さくはありません。スポンサーは何かしらの商品やブランドをイベントに絡めながら来場者に向けてPRを行うのですが、「予想以上に投資対効果が合う」というフィードバックをいただくケースも少なくなく、中長期でのイベント開催を要望される企業もいらっしゃいます。運営側はこういった点に着目しつつ、スポンサーにプレゼンを行い、適切に巻き込んでいくことが肝要です。

そして資金調達以上に重要となるのが、許認可関連の手続きです。大規模な都市型サウナイベントとなると、公衆サウナ施設の開業以上に高いハードルを求められることがあります。区役所、保健所、消防署への事前のコミュニケーションはもちろん、近隣住民の理解も必要になります。そしてシャワーやプールなど、排水量も問題となるため、イベント候補地の立地環境などもとても重要になります。(特に排水は見落としがちな観点なのでご注意を)

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サウナタウン下北沢は更衣室、シャワー、トイレを男女別に新設し、温浴施設さながらの環境を完備していました。しかし薪ストーブを使用するということで、通常であれば23区の条例では厳しく、前例もほぼないような厳しい状況でした。しかしイベント検討段階から足繁くコミュニケーションを図り、それでも保健所、消防との話し合いを続け、許認可へと至りました。

これはサウナの許認可関連全てに言えることですが、できれば企画段階から事前に許認可関連の担当者を巻き込むべきです。いま各地で開催されているサウナイベントも、基本的には同様の座組みで異例条件をクリアして開催にこぎづけている事例が多々あります。イベント実施決定後にこのプロセスを踏んでおかないと、条例許可が下りない(中には許可なくイベント強行を行ってしまう)ケースも見られますので、十分にお気を付けください。

サウナタウンとはどのようなイベントなのか

サウナイベントの企画、コンセプトづくりの考え方については、サウナタウンの事例をもとにお伝えします。サウナタウンは「街としてのエンターテインメント」と「モビリティ」をメインコンセプトにしています。

サウナタウン主宰の片岡氏が常々言っていることなのですが、サウナタウンは街に突然現れる "サーカス" から構想を膨らませたそうです。片岡氏は映像業界出身で、街の映画祭から着想を得たり、自身でもサーカスイベントを毎年行っているということで、そうした趣向がサウナタウンにおいても大いに反映されてきました。

片岡氏にとって外部とのつながりが遮断される映画館とサウナは似ているという話、サウナ施設へのリスペクトが強く、サウナ施設を自ら作るよりも今あるサウナ施設に行くことへのハードルを下げることをしたいという想い、さらにはサウナに対する愛と哲学の話までも語っていただきました。

下北湯気市場 トークイベント内容より抜粋

サウナタウンのメインユーザーは、まだ目新しいサウナを体験したことがない人たち。サウナタウン下北沢の来場者は、20代がなんと7割が占め、若い女性来場者の姿も数多く目立ちました。そして、突如として街に現れては消えるというコンセプトは変わらず、サウナタウンを続けていきたいとのことでした。

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そして私個人の想いとしては、サウナタウンがサウナで働きたい、サウナファンをとことん喜ばせたいという人のための、新たなきっかけづくりの場として役割を果たせたら良いなと考えております。「サウナタウンの一員として、ぜひ人を楽しませたい」という方はぜひDMをくださいませ。またいつかのサウナタウンが開催されるときはこちらからお声がけをいたします!

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