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移住欲求がないのに東京のサラリーマンを辞めて、里山に移住した夫の話// 移住STORY8

バリバリのサラリーマンを辞めて移住した夫

今日は趣向を変えて、私の夫についての記事です。というのも、もともと夫は東京でバリバリのサラリーマンをしており、移住を機にスパっと会社を退職し、人口3,500人の小さな村・高山村での生活をスタートさせました。
この決断は、多くの方の関心を引くようで、いろんな人から質問を寄せられることが多いのです。「どういう心境の変化?」「なぜ移住?」「仕事を辞める勇気はどこから?」などなど。
もともとオンラインで働いていた私よりも、夫の方が移住による変化もリスクも大きいため、皆さんの関心は私よりも夫の方に集まるのですね。ちょっと、ジェラシーです(笑)
ということで、今日は私が、夫にインタビューをします。なぜ移住したのか、移住して今、正直どう感じているか、移住を検討中のサラリーマンの方々へのアドバイスなど、聞いてみますね。

Q もともとはどんな仕事をどんなふうにしていた?

バリバリ働いて移住なんて微塵も考えてなかった
大学卒業後、複数社を経て、都内の専門商社で6年間MD(マーチャンダイザー)とマネージメントの仕事をやっていました。コロナ渦になってから1年間は月2-3出社する程度のリモートワークで在宅勤務メインでした。
マネージメントという立場で裁量をそこそこ持たせてもらってたし、組織でも次世代を担うポジションとして期待をされつつ成長も求められていました。当時は成長志向があったので、その気持ちとマッチしてハードに働いて楽しかったです。このままさらに責任のあるポジションに就いて、会社を担っていくのかな、と漠然と思ってました。転職はあり得たかもしれませんが、サラリーマンを辞めることも、移住するなんてことも微塵も考えていなかったです。

移住前の夫
移住後の夫

Q 転機は?

リモートワークと妻の妊娠を機に移住を検討
リモートワークが続いていたので、家賃の安い東京以外の場所に住んでも良いかなと思い始めました。妻が移住したいと前々から言ってたので、今の状態だったらそれも良いかな、と。
その後、妻の妊娠が発覚し、都会の喧騒の中で子育てするよりものびのびと子育てできる環境の方が、家族にとっては良いのかもと思いました。それで、本格的な場所探し、職探しを始めたんです。
基本は仕事を変えずリモートワークで移住しようと思ったのですが、会社の理解を得られなかった場合のために、念の為どのような仕事があるのか(できそうか)を調べ始めました。

Q 仕事探しでは何が見つかった?

これまでの経験を活かせない求人ばかりに愕然
まずは地方のハローワークで求人情報を閲覧しました。でも、林業とか介護とか自分とは馴染みのない職種が多く、戸惑いました。
これまでの総合職の経験が活かせない職種ばかりだったので……。それでも、自分に林業という仕事が合うかどうか確かめるために、山梨の林業体験ツアーに行ったりもしました。
また、せっかくここまで上げた年収を減らしたくはなかったですし、この年齢で新しい職に就くのも、ちょっと違うのかなと思いました。色々と検討した結果、やはりリモートワークのままでの移住が良いでは、と結論づけて話を進めた経緯があります。

Q なぜ会社を辞める決断をした?

移住予定の賃貸に住めないという、突然の通達
その後、色々な土地を回って、群馬県の高山村というところに落ち着き、ひとまず賃貸の村営住宅に移り住むことを決めました。と思ったら、村役場の担当者から恐るべき通達が来ました。
「年収制限に引っかかってしまうため、居住できません」と。(聞いてないよー。。。。)
我が家の場合、東京で30代の共働き世帯としては平均的な年収なのですが、村営住宅の条件には引っかかってしまったのです。さて、会社とリモートワーク勤務の交渉をするかーと思っていた矢先だったので、愕然としました。
他の物件を急いで探して内覧に行ったのですが、ボロボロですぐに住めない古民家だったり、冬の間寒そうな古い住宅だったりと、条件に合う物件は見つかりません。
でも、もうすぐ子どもが産まれてしまうので、このまま移住しないわけにもいきません。何か別の方法を検討しなくてはいけない状況になってしまいました。

移住後の収入は、移住してから考える
ちょうどこの時、仕事で激務が続き、仮に移住できたとしてもゆとりある子育てができるような状況ではなくなりました。それで”今の会社を辞める”という選択肢も視野に入れ始め、妻のブランド「Down to Earth」(ワンピースの販売事業)をサポートしながら、家事育児にフルコミットするという生活はどうだろうかと考えてみました。そうして、仕事を辞めたら生活できるのかを計算してみたところ、家賃も安くなるし、移住支援金や失業保険等で、1年間くらいはもちそうだと分かりました。その後、どうするかは走りながら考えようと判断して、辞める決意をしました。

Q これまで積み重ねたキャリアを捨てるのは、勇気はいりませんでしたか?

このまま競争社会のど真ん中で戦い続けられるのか?
むちゃくちゃ抵抗がありましたし、悩みました。これから部門責任者になれる道に進んでいたので、正直もったいないと思いました。部門責任者になると給料もそれなりにもらえるはずなので…。
それでも見切りをつけた理由は、このペースでがむしゃらに働き続けたら、身も心ももたないのではという予感あったから。
競走社会のど真ん中で戦い続けられるのだろうかという不安な気持ちはずっとありました。また、身の回りの上司を改めて見てみると、決して幸せそうには見えなかったというのが正直なところでした。(笑)
なので、いったん前線を退いて、子育ての方に専念してみようと思いました。最悪、家計が回らなくなったらバイトでも何でも始めれば良いと考えていたので、そこまで思い詰めませんでした。会社へ退職の旨を伝えた際も、「いつでも戻ってきて欲しい」と言ってもらえて、少し安心しました。そんなこんなで退職し年収(予定)ゼロになったおかげで、村営住宅に無事に入居でき、移住が実現しました。

Q 実際に移住してみて、どう?

ストレス発散のための散財がなくなり、余裕のある生活に
移住自体も良かったですけど、何よりも、仕事を辞めて移住するという選択をしたのは、正しかったです。その理由は、子育てが劇的に大変だから。周囲に親や親族がいれば違かったのかもしれませんが、自分の時間をフルに家事・育児に使えたので、妻が妊娠・出産を通じても事業が停滞せずにすんだように思います。もし自分がリモートワークであの働き方を続けていたら、子育ても妻の事業も、果ては自分の仕事も崩壊していたことでしょう。
ちなみに、心配していた収入については、今のところ大丈夫です。この生活を続けて分かったことですが、東京でのサラリーマン生活は余計な支出が相当多かったような気がします。飲み会などの交際費や深夜のタクシー代だけでも月に10万弱。仕事のストレスが強かったので、発散のためにお金を散財していました。
移住してから子どもが生まれたこともあるし、周囲に飲食店がないということもあり、あまり外食もしません。友人・知人と飲む際はだいたい家飲みなので、都内での飲み会に比べると驚くほど安上がりです。
昔は翌朝まで破滅的に飲むこともありましたが、今はゆっくり、家族と友人との時間を楽しむ余裕ができました。

移住後はよく友人同士でBBQをする

Q 東京の生活に未練は?

ちょっとあります。ストレスがなくなったとはいえ、東京には色々な飲み屋があり破滅的に永遠に飲める環境があるのが良いですよねー。たまには頭をすっからかんにして、夜の街を飲み歩きしたいです!あとは、映画館!!映画館には毎週末に通っていたので、それができないのが寂しいです。

Q 移住して気がついたこと、学んだことは?

移住して気がついたことは、自分がいかに働き過ぎだったかということです。それと、家族や友人とゆっくり過ごす時間を十分にとると、心が平和になることも学びました。

里山での子育てを楽しんでいる

Q 移住した高山村はどうですか?

住んでいる人の顔が見える村です。人口3,500人、村の端から端まで車で20分という小さい村で、行政も身近です。村が今何を課題にしていて、何にどう取り組んでいるのかが分かりやすいです。理解できるからこそ、自分が何かサポートできないか、という気持ちも自然に湧いてきました。
例えば、9月に新しくオープンする村の中心地「さとのわ」という施設がありますが、その立ち上げに協力しています。この施設は、「一人ひとりが次世代を想い100年先も住み続けたい持続可能な村」を理念に掲げていて、村の若手が中心メンバーとして奮闘しています。村がコンパクトだからこそ、村民の当事者意識が沸く。そこが、高山村の良いところだと捉えています。自分のような新参者も入りやすいし、自分自身も村のことを身近に感じられて、身が入ります。


Q これからどんなふうに暮らしていきたい?

高山村が良くなることは、Down to Earthの事業にも良い影響になる
もっともっと地域との関わりを持っていきたいと考えています。今ちょうど、Down to Earthの事業拠点とする土地を探しているのですが、自分達の場所を作ってそこだけ良くしても限界があるのではと思い始めてきました。Down to Earth事業の拠点となるこの村が良くなると、それはそのままDown to Earth事業にも好影響だし、自分達にとっても良いはず。
例えばDown to Earthのイベントを開催してお客様を呼んだとして、そのお客様達が立ち寄れる場所が魅力的であれば、お客様にとっても嬉しいし、それは、Down to Earthの事業としても良い。今、村には宿泊施設が限られていて、展示会に来てくれるお客様が泊まる場所に困っている状況です。宿泊施設がないという課題は、Down to Earthの課題であると同時に、高山村の課題でもあると捉えています。また、「たからのやまたかやま」という標語のとおり数多くの魅力がある自治体(住んでみて初めて実感しています)なのですが、その魅力に触れたり理解できたりする場所も少ない気がします。
これらの課題は、高山村という自治体の課題でありながら、Down to Earth の事業とも繋がっているので、今後自分自身、こういった課題に取り組むような働きをしていきたいと考えています。何か大きなことをする、ということではなく、自分が貢献できることに、地道に取り組みたいです。

子ども達の世代へ、自分にできることを

Q 移住を考えているサラリーマンへアドバイスはある?

「移住して成功」も、「移住して失敗」もない
今、”移住”はある意味流行だと思いますが、流行だから移住するのではなく、自分の価値観に向き合って行動した方が良いと思います。都心には都心の魅力があるので、本当に移住・田舎暮らしが自分にフィットするのかは吟味した方が良いと感じます。一方で、移住したらしたでなんとかなるのでは、というのが自分の意見です。仕事も選ばなければ、なんとかなるはず。自分で仕事を生み出すことも、ある意味では都心よりもやりやすいように感じます。
移住は確かに大きなライフイベントですが、そこまで慎重にならなくても良い気がしています。移住前にあーだこーだと悩んでも、実際に移住してみないと分からないことの方が多いはず。でも、だからこそ、移住してみてどのように生活していくかを考える面白さがあるとも思います。その面白さをとりあえず味わってみるのもあり。実際に味わってみて、美味しくなかったら、都会に戻っても良いと思います。それは、肌に合わなかっただけなので、失敗でも敗北でも何でもないと思うんですよ。
逆にいうと、”移住して成功”というのもないですよね。単純にその人に合った生活を選択していくということなので、移住しなくとも、都会で自分に合った生活を見つけている方々はたくさんいると思いますし。
・・・・・でも、個人的には移住者さん大歓迎です!一緒に朝まで続く破滅的な飲み会したい人、ぜひ高山村へお越しくださいませ!


インタビューを終えて

以上、夫へのインタビューでした。私のように田舎暮らしへの憧れもまったくなく、DIYがしたいとか自給的な暮らしにも関心のない夫ですが、高山村暮らしをなかなか、楽しんでいるように見えます。
Down to Earthの事業に取り組みながら、村の若手メンバーと一緒に村の中心地作りに携わっており、その仕事も楽しそうにやっています。以前の会社では鬱屈としたストレスを抱えているのがはたから見ても明らかだったので、だいぶ健康的にイキイキとしてます。でも、まだまだ破滅的な飲み会をしたかったり、映画館に行きたかったり、都会生活に未練があるんですね。実は私も、買い物したり話題のお店で食事したりしたいなーとやっぱり思います。そういう欲求には正直に、これからも里山暮らしと折り合っていきたいと思います。

高山村暮らしの様子は、Youtubeでも配信しています。

山中麻葉 Maha Yamanaka
1984年生まれ。30歳を機にサラリーマン生活に終止符を打ち、ワンピースのオーダーメードのお店を起業。2021年夏、群馬県高山村に、夫と娘と移住。夢は、小さなアーミッシュ村をつくること。

> Down to Earth アーミッシュワンピースのお店
> instagram @shop_down_to_earth
> 著書「アーミッシュカントリーの美しい暮らし」

【お知らせ】
2022年は全国でアーミッシュワンピースの展示販売会を開催します。ワンピースを試着して、その場でオーダーが可能です。ぜひご来場ください。
● 大阪
10月5日(水)~10日(月)大阪府大阪市「阪急うめだ本店」
● 熊本
11月12日(土)、13日(日)熊本県南阿蘇村 新OPEN予定のお宿「青い空と白い龍」
11:00~16:30
住所:阿蘇郡南阿蘇村1041-5(駐車スペースあり)
● 福岡
11月19日(土)、20日(日)福岡県糸島市「うみかえる」
11:00~16:30
住所:糸島市二丈深江2138-2(駐車スペースあり)

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