CX DIVE AKI に行ってきた

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10/25(Fri)に行われた株式会社PLAID(プレイド)が主催するCX DIVE というイベントに参加してきました。

ホットワードのCXのイベントなので、体験を良くするためのツールの話がたくさん聞ける!のかと想像してしまいますが、イベント冒頭でプレイド代表の倉橋さんがブチ上げてたコンセプトは”CONSUMMATORY(コンサマトリー)”。要するに、過去のCX DIVE 登壇者がそうだったように「活動自体を楽しみ、自分も他者と共に心躍らせている」人々のトークを楽しみましょうという、良い裏切りを感じるものでした。

因みに、CX DIVE には、トークセッションの他に、様々な企業が商品やサービスの提案をするブースコーナーもありましたが、そこも含めたイベント全体のどこにも、PLAIDが提供しているKARTEというサービスの宣伝は無かったことにも、このイベントの徹底した潔さを感じました。来場者に持って帰ってもらいたいことは、ツールではなく、良いCXを生み出す為の本質とは何か?に気づくためのヒントだというメッセージがそこにはある気がします。

さて、ここからは私が出席したトークセッションの中から「これはコンサマトリー!」と特に感じたセッション3つについて、簡単なメモ書きでシェアします。

(1)Keynote Session

ー登壇者

 ・青木耕平(クラシコム)
  https://twitter.com/kohei_a
 ・朝霧重治(コエドブルワリー)
  https://twitter.com/haru_jm

ーCOEDOビールの歩み

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農業を中心に様々な事業を行っていた協同商事が赤字に陥った時期に朝霧さんはJOIN。様々な不採算事業を切ったが、ビール事業は残す決断をする。理由は、価値伝達をきちんと行うことで、プロダクトアウトで売れるイメージがあった。こういうものを欲する人たちが一定数いるんじゃないかと、バックパッカー時代に海外のパブのカルチャーを見ていて感じていた。そこで、リブランディングを行った。最近は、地域の価値を見直す動きが世の中的に盛んなため「地ビール」という言葉にネガな印象はなくなってきたが、リブランドに取り掛かった当時は、地ビールはクセがあるし高い・・・と敬遠されがちなカテゴリーになっていたため、視点を変えてもらうために「クラフトビール」という言葉を使うことにした。ラインナップを5アイテムとし、スタイリッシュなデザインを採用、商品名を「COEDO」とアルファベット化してスタートした。認知はゼロベースだったので、届けたい人に知ってもらうために、ビールコンテストに出品し、第三者評価を得ながらファンを獲得していった。


ー北欧暮らしの道具店の歩み

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当初は北欧の商品がほとんどだったが、今は全体の1割くらい。オリジナルの商品も含めて販売している。基本的には雑貨店なので、暇だから街でふらっと立ち寄るような場所であるべきで、そのために読み物やドラマ、ポッドキャスト配信などのコンテンツを多数提供してお客様の時間をいただける様にしている。欲しい物が決まっている方に対してネットでAmazonには勝てない。巨大なプラットフォームと戦わないために、IP(知的財産)を通じてお客様とのつながりを強固なものにすることに注力している。今後はよりエンタメ領域に注力する方針。


ーこのセッションのコンサマトリーなメッセージ

・今作ってるものが本当に良いと感じている速く世に出したくなる、そういうテンションになっているかは大事なこと。メンバーがぶち上がっている状態、好きなことをやっている時のパワーが出ている状態って大事。20年前とかは、欲しい物が「ある/ない」の時代だった、現代は欲しい物が「ある/いろいろある」という状態になっていて、あるだけだと満足しない、選ばれない。合理的でなくとも、自分がイイと感じる微細な差、違いがあるかで選択される。(お二人のセッション)

・新規事業に取り掛かる時って、合理性は?KPIは?っていう質問に意味がない。どうなるかなんてわからないから。そんな時に大事にしている判断基準はこの3つ。

(1)現場の熱量(ぶち上がっているか?キャッキャしているか?)
(2)期待値を越えそうか(自己満ではなく社外にもキャッキャが拡がりそうか?)
(3)収支が合うか(予算内でチャレンジできそうか?)(以上青木さん)

・マーケティングって、愛されることを求めていくことではなく、誰を愛するのかを先に決めて動くこと。この人達が好きだ、そういうことを選んで愛しに行くこと。ネスカフェアンバサダーは、それが根源にあって産まれた活動。(青木さん)


ー参考リンク
・北欧暮らしの道具店
 https://hokuohkurashi.com/
・COEDOビール
 https://www.coedobrewery.com/


(2)体験でイノベーションを生み出す

ー登壇者

 ・玉樹真一郎(わかる事務所)
  https://twitter.com/tamaki_wakaru
 ・青柳智士(LUCY ALTER DESIGN)
  https://lucyalterdesign.com/
 ・安藤剛(THE GUILD)
   https://twitter.com/goando


ー東京茶寮

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食品のトレーサビリティが謳われて久しいが、お茶については畑までトレースできることは、ほぼないことに気がついて不思議に感じた。コーヒーは家で煎れる人は多いのに、日本文化である茶について、家で煎れる人は少なく、急須がある家庭がそもそも少ない。お茶をドリップすることでメンタルを充足できる体験を提供することに価値を感じてもらえるのではとチャレンジした。オリジナルの急須を販売していて、それは把手がなく、透明のデザインで、割れない素材になっている。把手があると片付ける時に場所を取るから。透明なのは、お茶は煎れてる時に葉が開くがそれを見られるように。割れないのは、気軽に使ってもらえるように。店舗は茶室を再解釈して構成している。基本的にペットボトルのお茶は、手軽に喉を潤すという機能であるため、競合とはみなしていない。

ー参考リンク
・東京茶寮 https://www.tokyosaryo.jp/


ーYAMAP

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提供したい体験としては、自然に赴き、純粋にそれを楽しんでもらいたい。そのための支援を幾つかの機能で行っている。登山は、キツい、汚い、あぶない、と言われるが、中でもそうなる要因として、未知に迷うリスクが大きかった。ただ、世の中はスマホ時代で、道に迷う、という経験自体が無い方も生まれ始めている状況。山でもそれを実現するために、山の地図×GPSで情報提供を行っている。また、ユーザが自身の登山体験をシェアできるコミュニティ機能も提供している。

ー参考リンク
・YAMAP https://yamap.com/


ーWii

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家の中で嫌われない、お母さんの敵にならない、そういうものにするという意思があった。ゲームを使い始めてからの体験ではなく、使い始めるまでに存在している様々な壁を取り払うことが重要だった。


ーこのセッションのコンサマトリーなメッセージ

・山登り、お茶を煎れて飲むこと、家庭用ゲーム、それぞれは無くても生活上は問題にならない非日常の体験。だからこそ、その体験を行うまでには「既存のやらなくて良い理由」があり、そこを乗り越えるための工夫をみんな行っているのでは?(玉樹さん)

・山に登ることで知れる感覚がある、お茶を煎れるプロセスにこそメンタルの充足を引き出すものがある、それをしっかり体験してもらうために、基本の情報や煎れ方のレシピを提供している。その先はユーザが自由に楽しんでもらっていい。(安藤さん、青柳さん)

・UX担当をやるなら、ユーザのことを誰よりも知っていていないといけない。そのサービスの領域を、自分自身が好きで、楽しんでいることが重要。CXOまでなると、ユーザだけでなく、従業員も含めてマネジメントする視点が大切。ユーザも従業員もひとつのコミュニティとして捉えること。また、体験設計を、今のファンだけでなく、これからJOINしてくるファンも含めて行っていく必要がある。(安藤さん)


(3)社会の当たり前をアップデートするCX

ー登壇者
 ・コドモン 小池義則
  https://twitter.com/codmon_official
 ・シェアダイン 飯田陽狩
  https://twitter.com/SharedineO
 ・流山市役所 総合政策部マーケティング課 課長 河尻和佳子
  https://www.city.nagareyama.chiba.jp/

登壇されたお三方は、皆さん一様に非常にスタートアップ的な思考をもっていて、まだまだヴィジョンの実現には道のりは遠いと感じながらも、固定観念をブレイクすることに取り組み続けていることを感じさせる熱量高いトークが多かったのが印象深いセッションだった。

ーシェアダイン

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「内食のインフラ」を構築することを事業領域としていて、サイトに登録されているシェフが、ユーザの自宅に伺って数日分の作り置きの食事を提供するサービス。これまでの食に関する習慣では、ごはんは、家の誰かが作るもの、食卓には品数が多く並ぶもの、というバイアスがあった。ここに対して、時短や栄養面、という観点ではなく、人に任せることによって、子と向き合う、子の悩みに向き合う時間を創造するというイノベーションを提供する意味で活動している。子育てでいちばん大切なことは「子と向き合う時間を増やすこと」そのために、それ以外の慣習は全て捨ててもよいのではと考えている。

ー参考リンク
・シェアダイン https://sharedine.me

ーコドモン

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最初、保育園の先生と親との連絡帳をデジタル化するサービスを提供することを始めたが、そういうツールを使うことは先生に負荷がかかる、などの理由で導入がなかなか進まない。よくよく話を聞くと、先生がやめると、園は預かれる子の人数が減るらしく、園長はそこが一番の気がかりポイントだった。保育園はビジネスというより福祉なんだというのも話を聞くことで見えてきた。そこで、サービスの軸を変えて、保育士の負担を減らすための支援をテクノロジーで行っていくことにして今に至っている。

ー参考リンク
・コドモン https://www.codmon.com/

ー流山市役所

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他の市にはないマーケティング課をリードしている河尻さん、行政に入ってみたら、想像以上に中の人達は市民をのっぺらぼうで認識していた。「全ての市民に平等に」というモットーの元で活動することで、誰のために?を具体化して情報提供、サービス提供を行っていない現状があった。新聞に書いたから大丈夫とし、伝わっているか、役に立っているのか、を考えることがなかった。一方で、人口が減少の一途を辿っている日本において、町の生き残りというのは非常に重要な課題で、もっと経営を、マーケティングを意識して活動する必要があると考え、市政が行う活動としては珍しく、ターゲットを30〜40代の都心で働く共働きの家族、と絞って人口増加を目指してやっている。もちろん今までの常識と違うため、内部からは、こういう人はいらないのか?高齢者はどうするんだ?など反発があるが、なぜやるのか、それが市民皆んなの幸せに最終的につながるという大きなゴールに向かっていることを、あきらめずに伝え続けている。

ー参考リンク
・流山市役所 https://www.city.nagareyama.chiba.jp/

ーこのセッションのコンサマトリーなメッセージ

・市民の喜びのためにやっている。でも中で働いているとその実感を得ることは簡単ではないので、市民の声を職員には伝えるなどして、やっていることが間違ってない、と力が湧くようにしている。(河尻さん)

・サービスの導入時に、これまでの成功パターンのセールストークをしていると、それが原因で、実は顧客に新たに起きてる(起き始めてる)ニーズの変化を見落とすことがあると思っている。お客さまは、はぁ、イイですねこのサービス、と答えている裏で、本当に困っていることが潜んでいる可能性がある。そうした変化に対する需要度を高く保っていたいと考えながらやっている。(小池さん)

・話を聞くことが本当に大事。「子育てって大変ですよね」の「大変」の中身をクリアにしていく。対話を通じて、リアルでシャープなペインを発見する。(飯田さん、河尻さん)

・やってることが大変になったら、ユーザからのフィードバックを得ること、そこで新たな発見をしたり、力を得て理想に向けて進めていく。(お三方)


CX DIVE AKI のレポートは以上です。既存の常識の枠に疑いを持ち、勇気を持ってチャレンジする人が多く登壇されていて、パワーをもらえました。そんな登壇者たちの熱いワクワクエネルギー=「感情の流通」を、少しでもこのレポートから感じてもらえたら嬉しいです。


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