#21 不用意な言葉
軽い気持ちで同期の方たちがいたのかを聞いた
しかしその瞬間に真琉狐さんの顔がスッと曇ったことに気付いた
えっ?私、何かやらかした?
楽しくニコニコと私の目を見ていてくれていたのだがサッと視線を下に外した
そして少し間を置いて
「、、あ、え、うん、いたよ。私入れて3人ね、、、」
しまった!
きっとまだ真琉狐さんの中で消化しきれてない何かがあるんだ
かといって謝るのも何か違う気がするしなんて言えばいいのだろう?
私もダメだとはわかりながら下を向き黙り込んでしまった
すると真琉狐さんは空気を変える為に私の顔を覗き込んで
「あれでしょーたまちゃんいつも夜一人で寂しいんでしょー?」
私は申し訳なさでいっぱいだったがこうして気を遣ってもらっていることに空気を変えて返さないとと思い
「実はそうなんですよねー。夜はやっぱりどうしてもハハハハ」
真琉狐さんは私の気持ちを察してくれて
「そっか!まだまだたまちゃんも子どもだなぁ」
と笑いかけてくれた
真琉狐さんの優しさに救われたが人の過去の話を聞くことの難しさを学んだ
軽い気持ちでそういう話を聞いてしまうことはある
でもそれのどこが人の心の柔らかい所に触れてしまうかはわからない
「そうなんです、まだまだ子どもで、、ハハハハ」
「じゃあ最後にデザート食べる?オススメはレモンシャーベットかな?半身のくり抜いた皮に乗ってるヤツ」
「それでお願いします!」
「OK!じゃあそれと最後に白飲もっかな」
単に楽しいだけでなく熱い気持ちになれたり少し考えさせられたり学べたりと元日の夢子さんと行ったファミレスの時と同じですごく意義の有る食事会だった
帰りはタクシーでまた新宿まで
そこでお別れ
駅の方に歩き出す私
「たーまちゃん!」
えっ?思わず振り返った
「がんばれ!」
小さくファイティングポーズ
ニコッと微笑み振り返りながら
「バイバイ」
と手を振ってくれまたタクシーに乗り込んだ
私は胸の詰まる思いでタクシーが見えなくなるまでお辞儀をした
真琉狐さん
ありがとうございます
ごちそうさまでした
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そして私はプロテストに向けて練習だ
今日のコーチは夢子さんと亀さん
夢子さんは午前中の仕事が長引き遅れるとのこと
なので今は私と亀さんとほのちゃんが道場で社長は事務所でなにやら仕事をしている
「じゃあ、たまちゃん柔軟から始めてよっか?」
「ハイッ!」
念入りに柔軟体操をしその後は基礎練だ
基礎練にも応用が加わってきて多少の複雑さやハードルの高さが上がっている
だがその複雑さや高さが今は嬉しくもあり充実の証になっている
そしてそれらを終え小休止
亀さんは汗を拭いながら
「何か夢ちゃん凄い遅いね」
「そうですねー珍しいですね。電車の遅延でもあったんですかね?」
道場の入り口を見る
「か、バスが遅れてんのかなぁ?」
「かもしれないですよね。あのバス時間に来たことないですもんね」
「ほんとほんと、ねー、ほのか?」
するとほのちゃんは
「うん!」
と笑顔でお返事
休憩時間がほっこりする
そんな中私は夢子さんに言われたことを思い出した
「そういえばこの間夢子さんに言われたのですが高い所から落とされる時に首がしっかり上がってないことがままあってそれが気になると言われたのですがどうしたらいいんですかね?」
「うーん、多分だけどまだ恐さが残ってたりが一番の原因だとは思うけどまあこれは体に叩き込むしかないよね。プロレスでも柔道でもそこを体で覚えるしかないからね」
「やっぱりそうですよねー良ければちょっと見ていただけませんか?」
亀さんは立ち上がり
「OK OK!じゃやろっか?」
私も飲んでいたペットボトルを置きリングに上がった
知らず知らずのうちに私はまた不用意な発言をしてしまった、、、
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