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TOO FAST TO LIVE,TOO YOUNG TO DIE #9 終

とある夏の日だった

前後の記憶は全くないが自分とTAKAKIは二人でいた

「AKANEくん腹減らへん?」

「せやなー減ったなあ」

「ほな家来ーへん?近いし。おかんおるからなんか作ってもらうわー」

「ええのん?」

「ええよええよいこ!」

きっと今なら遠慮してたかもしれないがまあ言ってもお互い子ども同士
それに当時はそんな家と家の垣根も随分低かった気がする


TAKAKIの家に着いた

「おかん!友達来てるから何か作ってやー」

「えーもうアンタはいきなりやなー」
と、TAKAKIのおかん
おかんと言っても30半ばくらいで今考えるとお姉ちゃんみたいな感じの人だった

「こんにちは、お邪魔しますー」

で、テーブルに着いたんだと思う

「アンタそうめんでいいんか?」

「ええよー」

「辛いヤツでええんか?」

「おん!」

辛いそうめん?
一体なんだろう?

ウチはつゆは父親が干し椎茸と鰹節で出汁を取って作っていた
それくらいの話でつゆにつけて食べるオーソドックスなものだ

そう一昔前あるあるネタで麦茶かと思って飲んだらたら麺つゆやったー的なのがあったがまさにそれでこの頃は市販の麺つゆなんてどこの家庭もそんなに使っていなかった


ものの10分ほどで
「はい、出来たよ」
と、出されたのは大きめのガラスの器にそうめん
そしてつゆがひたひたに注がれておりその上にきゅうりの細切りがのっていた

「ほな食べよ!」

「あ、うん。いただきます」

そうめんの食い方なんて普通につゆにつけるかにゅうめん、たまに味噌汁の具として(小川英二の好物)入ってるくらいしか知らなかった

ゆっくりときゅうりとそうめんを口に入れる

「辛っ!!うまっ!!」

「せやろ?これ美味いねん!」
とTAKAKIは得意げに言った

どうやらきゅうりに何か辛い調味料を混ぜてあってその辛さで麺がすすみ、更に麦茶もすすむ

食べ終わった後の記憶も全くなくその小一時間くらいの事だけがハッキリと思い出された




そんな夏の日のことを思い出しながらボーッとタバコの煙を眺めていた

悲しさや悔しさ
そんな感情は全くなかった

タバコの火を点けて消しての繰り返し
只々、ボーッとしていた


そうこうしてるとタバコが切れてしまった

「あ、切れたか、、、買いに行くか」
と、立ち上がった拍子にテーブルに投げっぱなしだった写真を袋ごと落としてしまった

バサっと床に落ちた袋から一枚だけヒラっと飛び出してきた写真

その写真には満面の笑顔の女性が


「ハハッ」
思わず笑ってしまった

「TAKAKI〜、、、ちゃんと撮れてたわ」


その写真に写っていたのはあの時撮れてなかったと思っていた井上京子選手のビッカビカの笑顔だった







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1997年8月20日
日本武道館

後に伝説となる全日本女子プロレス崩壊の足掛かりになるあの興行

自分のnoteに何度も登場するhotシュシュ首脳陣
田村欣子、タニーマウス、千春

ゆづき選手が敬愛する三田英津子

自分が狂おしいほど焦がれた下田美馬

そして全日本女子プロレスのスーパースター達

その後女子プロレス界を背負っていく若手レスラー達

一同に集まっていた


そして観客達はこの後に起こることなんて全く想像せず売店でパンフレットを買ったり選手のサインをもらったり写真を撮ったりとそれぞれ楽しんでいた


自分も売店でパンフレットを買った
この時はもう頭から足の先までラスカチョの毒に侵されていた

「やっぱ美馬たんはサイン会してないかー」
ファン心理とはおかしなものでラスカチョの二人がサイン会をしてないことが嬉しかった


「んん??!」

ふと見た先に長蛇の列が

井上貴子選手がサイン会を始めていた


「あ!」

無意識に体が動いた
そして貴子選手のサイン会の列に並んだ

数分待って自分の番がやってきた

「うちわ下さい」

貴子選手がサラッとサインをしてくれた

「あ、ありがとうございます」





なあ、TAKAKI、、、


貴子のサイン貰ったぞ!!












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