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真琴vsゆづき #9〜14分32秒〜

ゆづき選手の発信で出てくる言葉

「うつくしい」

美しいではなくうつくしい
一体どう意味なのか?


うつくしいとは?

うつくしい世界とは?



コーナーポストに激突したゆづき選手
真琴選手は手招きからのポストに寄りかかるゆづき選手にセンターから走り込み追撃を狙う

虫の息かと思われたゆづき選手だがショートレンジのスピアで動きを止めそのままグランドでの股裂

「ギブアップ?!撮ってるか?おい!」

今やこういう攻撃時の撮影を禁止している団体も増えてきた
そのタブーを侵してでも辱めて屈辱を味わせ挑発してみせたと同時に完全なる足の破壊を狙ってきた

まだいける
赤い彼岸花
彼女の花言葉に「あきらめ」はない


だがとうとう真琴選手のフェイバリット
ビッグブーツが顔面に炸裂した
ロープに項垂れるゆづき選手をセンターに放り投げカバーもカウントは2

1!2!でバッと肩を上げるのではなくカバーに入られた時から腕をバタバタさせ肩が上がったのがたまたま2だったという不恰好なものだった

この戦いの1ヶ月後位の話になってしまうがゆづき選手の師匠達の師匠にあたる井上京子選手が若手にアドバイスしていたことが
「なんでもいいから手を出すんだ!なんでもいい、手を出さないのが一番の悪だ」

まさにその通りでどの世界でも通じる話で自分は感銘を受けた
本能だったのかこの教えを師匠達を通じて聞いていたのかはわからない
それでも手を出した
足掻いてみせた
でなければ終わっていたのだから

真琴選手はスパートをかけてくる
側転からのダブルニードロップ
今度は綺麗に腹部を貫く
が、カバーするもカウント2

足掻く力もないのか兎に角真っ直ぐ上に向かって手を上げた

ただただ真琴選手を睨みつけるしか出来ないゆづき選手を立ち上がらせダブルアームスープレックスの体勢に
持ち上げようとするが執拗な足殺しの効果で踏ん張りがきかない

そんな真琴選手の様子を察したのか逆に頭をしっかり股の間に入れ自分の足に力を入れそのまま岩石落としで投げ切った

上半身への攻撃が主だった為、足は動いた
不幸中の幸いと言うべきか
いや自分の意思と気合いで動かしたのだ

これが最後のチャンス
「決めてやる!」
自分を奮い立たせる為か
小さくガッツポーズ
髪を掻き上げ立ち上がった真琴選手を確認し走り出す

胸に咲いた情熱の彼岸花が真っ赤に燃え上がる

声を上げ走りラリアットが喉元に炸裂した
真琴選手はよろけるが倒れない
その姿を確認した瞬間にはもう反対側のロープに走っていた
きっと考えての行動ではなかったのでは
刹那の動き
プロレスラーゆづきの本能としか説明出来ない早さだった

そして反動を利用した走り込みのラリアットで真琴選手を吹っ飛ばした

1!2!
真琴選手の肩は上がった

だが腕だけでなく体ごとぶつかっていくラリアットの威力は真琴選手にかなりのダメージを与えたはずだ

さあ決着の時だ
これが最大にして最後のチャンス

大きく手を広げそのまま全身を真琴選手にぶつける

「うあああぁーーっ!!!!」

ゆづき選手の最大のフィニッシュホールド
紅のボディプレスが炸裂した
その勢いで真琴選手の体がバウンドする
そしてそのまま片エビ固めでフォール

1、、、2、、

場内が固唾を呑む

「イヤアアーーッ!!」
真琴選手が悲鳴の様な声を上げながら肩を上げた

紅のボディプレスが返されてしまった
やはりキャリアの差は如何ともし難いのか
ゆづきファンの諦めに近い溜息が漏れる音が聞こえた

だがゆづき選手は諦めてなかった!!
そして魅せてくれた

起き上がった真琴選手を担ぎ上げた
その体制はまさか?!

デスバレーボム??!!

真琴、ゆづき二人が愛してやまない
そしてこの戦いの最大のテーマの一つ
三田英津子最大最高級の必殺技

まさかこの一戦の為に伝授されていたのかそれとも映像を観ている内にインスパイアされたモノがプロレスラーゆづきのピンチに本能に訴えかけたモノなのか

ただ真琴選手も体制に何かを察知したのか声を上げ体をバタつかせ切り抜ける

切り抜けた瞬間を冷静に捉えブン殴りのラリアット
それを腕へのブートで更に切り返した

苦悶の声を上げるが止まれない
止まっちゃいけない

ゆづき選手はロープに走り出す
走り込みのラリアット
これが決まればまだわからない



「今は....もう真琴選手しか見えません!
全ての感情をぶつけます。」

「元カノに未練はありません!!
真琴選手に悩殺されないように気合いと闘志を張らせて試合に臨みます。」

「明日は強さだけではない闘いがある
私が私でいればうつくしい。
私の世界へようこそ。
そんな気持ちで、新人のくせに生意気だ!って言われるほどの試合をしてやるんだ!」



「うああーーっ!!」
声を振り絞り真琴選手に向かって走り出した


真琴選手が試合後
「少しだけ良心が痛んだ」と語った
どの辺りでそういう気持ちになったかは語っておらず
話の流れ的に最初の握手を拒んだところかと思っていた
だがもしかするとこの瞬間なのかもしれない

大きくて、可愛くて、礼儀正しくて
そんな生まれたてのひょっこレスラーが何度も何度も立ち上がり向かってくる

だが叩き潰さなければいけない

それは自身の人生を賭けて登り詰めたキャリアに恥じぬ為

フリーランスとしてプロレス界を生き抜いてきた自負

真琴というプロレスラーとしてのプライド

三田さんへの愛もあっただろう

そして
ゆづき
彼女自身の為だ


真琴選手の胸元を貫こうとした右腕は絡め取られ

14分32秒

そのまま三田英津子直伝のブレイジングクラッチ(三田さん固め)でゆづき選手は天井を仰ぎ見ることになってしまった




続く

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