小林製薬の経営陣交代について

読売新聞がこういう書き方をしていますが、私はこの記事が書いているようには思わないです。

私は小林製薬の内部の詳しいことはわかりません。しかし、退任された会長及び現社長は経営者としては優秀だったと言わざるを得ません。結果を見ればわかります。

もちろん、製薬会社が健康被害をもたらした事実(結果)は、重すぎるほど重いわけで(但し、因果関係は完全に立証されていない)、そこは弁解の余地がないと思います。辞任もやむなし。

回収や発表が遅れたと言われても仕方がないのも事実で、「何かありそうだ」と気付いたらすぐ回収すべきだったかも(しかしこれは今だから言えるわけで、後出しじゃんけんの感がします)。これはジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール事件とは対照的かもしれません(この事件のことをご存じない方は検索すればすぐわかります)。

しかし、です。

小林製薬の肩を持つ気はないです。関係者でもないですし。ただ、第三者として考えた場合、そこまで批判しようという気になりません。

まず、サプリメントというのは食品であって、医薬品ではないです。それが健康障害を引き起こすとは考えにくかったのではなかろうかと思います。

これも推測ですが、ほんとか嘘かはともかく、「サプリメントを摂取して、具合が悪くなった」ということを言う人はたくさんいたのではないか。事実、食品会社ではよくあることです。ほんとは具合が悪くないのにお金を請求するために嘘を言う人は一定数存在します。

こう考えると、「わかった段階で直ちに回収すべきだった」とか言うのは簡単ですが、会社としては「本当に因果関係があるのか?」「ほかの食べ物や薬品が原因なのでは?」と疑ったのではないかと推測します。これは当然。

完全に因果関係がわかって隠していたというのなら、もう論外ですが、原因物質が直ちに特定できなかったのは不運と言えるかもしれません。

現段階でも、会社側の発表を見る限り、完全なる因果関係は立証されていないように見えます。もちろん、逃げているのではなく、真摯に因果関係を調査しているけれど、どうも因果関係があるとは統計的に言い切れない状態のようです。

例えばこう書いてあります。

・・・別の観点で、お客様やご家族様らより、当社販売の紅麹関連製品と被害発生の関連性についてのお問い合わせを受けたケースの多くにおいて、その後精査したところ、当社販売の紅麹関連製品を摂取していなかったことが判明しております。

小林製薬のサイトより

これって、マスコミがよく調べもせずニュースとして流したことが原因?と思ったりもします。

読売新聞は「企業統治欠如」と言っていますが、そうは見えません。経営判断が間違った、というならまだしも、企業統治が欠如していたようには見えません。ここでいう企業統治とは何を指しているのか、よくわかりません。

小林製薬は企業統治に問題があったとは思いません。問題どころか、うまくやっていたと思います。問題が発生した後の対応も企業統治がきちんとしていることを示している。

創業家が独善的にやっていて、その結果、企業統治が欠如していた、というよくあるパターンにはめようとしているのなら、それは間違いです。

創業家はよくやっていました。小林製薬の経営に問題はなかったですから。問題ないどころか、会長、社長と会社を大きく発展させたことは否定できません。

この事件で何もかも全否定してしまうのは、やり過ぎと思いますね。

私はあくまでも経営という観点から書いているので、被害者の人からすれば、小林製薬を擁護しやがって!と思われるかもしれませんけれども、そういうつもりではないです。

そもそも経営者の経営判断なんて、100%正解なんてことはありません。大企業でも間違った経営判断なんて簡単に見つかりますよ!

ですから、小林製薬にだけ100%正しい経営判断を求めるのは違っていると思います。

小林製薬がもし、間違っていたとしたとしたら、どの経営判断が間違っていたのか、ということ。どうすべきだったのかということ。そういうことを考えて、経営上の教訓にしないといけないわけです。ただ、小林製薬を叩いて、反論できないのをいいことに、言いたい放題批判するのは、何か違う気がします。

読売新聞は、検証委員会の報告を元に記事を書いているようですが、この検証委員会の報告というのも、何かピンとこないですね。

だいたい、こういう委員会というのはなぜか弁護士さんがやるわけですけど、これ基本、法律問題ではないわけです。経営の話。経営に関して弁護士さんは素人です。違いますか?

他社でも同じ印象なんですが(例えば日野自動車)、経営のことをよく分からない弁護士さんが、それらしく書いている印象があります。弁護士さんにケンカ売るつもりはないです。ただ、経営の専門家ではないということ。

弁護士さんだと社会的な信用度が高く、知名度もあるので、こういう場合、会社にとって”便利”なんだと思います。

本当に検証するなら、弁護士さんよりは、まだ公認会計士とか経営学の先生の方が少しは経営に近い気がしますけど、ダメなんですかね?弁護士だとみんな黙ってしまうから適任なんだと思います、やっぱり。

本当は経営の専門家である中小企業診断士(一応国家資格)がいいのかもしれませんが、対象が中小企業でもないですし、知名度がほぼゼロなので、こういう場合はダメなんでしょうね(笑)。

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