高橋先生とひろゆき氏の円安論争

どうも論争が起きているようです。

高橋先生というのは、髙橋洋一氏のことです。大学の先生(嘉悦大学教授)なので、一応高橋先生としておきます。

Xの上での論争なんでしょうか?(現物は見てない)。昨日、YouTubeを見ていたら、高橋先生が反論している動画を見つけたので、ちょっと見た次第です。

先に言っておきますが、私はひろゆき氏のことは嫌いじゃないです。私にとっては伝説の人ですね。昔はどこの誰かもわからなかったです(表に出てなかった)。2ちゃんねる花盛りの頃ですね。スゴい人だと思ってました。

結論からいうと、高橋先生の言い分が正しいです。ひろゆき氏は経済学を勉強したことがないんだなと言わざるを得ない。なので、高橋先生にかみついたところで、何の得もないのでやめてほしいです。

ひろゆき氏は1ドルが150円が300円になった方がいい、と高橋先生が言ったことにかみついたようです。そんなことしたら輸入物価が2倍になる。一方、個人の所得は変わらないじゃないかと。

まず、1ドルが150円→300円になったら輸入物価が2倍になるのか、という点について。これ高橋先生が動画の中で言ってますが、そうはなりません。少し補足しておきますね。今から書くことはネットで論文とか検索したら出てきます。私も論文見たことあります。

なぜ2倍にならないのか?高橋先生とは別の説明をしておくと(こっちの方がわかりやすいかな)、例えば輸入業者は値段が倍になったから、倍にして卸業者に売るかといえばそうしない。やっぱり倍だと売れないかもしれないと思って、自分で損をかぶってしまうわけです。同様に卸業者も「2倍にすると売れないかも」と思って、例えば1.5倍ぐらいに抑えて売るんです。だから2倍にはならないというのが経済学の結論。これは理屈ではなくて、実際のデータを元に出てきた結論です。

次です。円安になっても所得(給与)が変わらないという話ですが、これも違います。円安になればGDPが増えるわけですから、時間はかかってもいずれ給与は上がる方向に向かいます。

経済というのは時間差が常にあるんです。円安になった、はい、即給与アップ、ということではない。

ちょっと脱線。時間差があるので、将来を予測するために、先行指数みたいなものを使います。例えば設備投資の動向とか。設備投資が増えると将来経済は良くなるだろうと考えて良い。だから設備投資の動向はニュースになるんです。

株価も経済の先行指数としての意味があります。なので株価が上がれば、将来経済は良くなるだろうと推定できる。

元に戻ります。円安と所得の関係です。

簡単な事例を考えてみましょう。日本の製造業は、もちろん例外はありますが、売上の7~8割を海外で稼いでいるとか全然珍しくありません。こういう企業は円安でものすごい利益を得ているわけです。法人税収もものすごく増えてます。リンク貼っておきます。朝日の記事しかなかったんで、嫌々朝日にリンク(笑)。

こういう企業で働いている人のボーナスとか当たり前に増えます。誰でもわかりますよね。そういうことを示すデータも出てきてます。

給与額についてはこちら。ちょっと微妙ですが、2010年頃から給与は増えてます。同様に為替の推移も見てみます。こちらです。2010年頃からのトレンドとしては同じように見えます。

今の円安が始まったのが2022年頃。グラフを細かく見ると、その頃から給与額も同じような傾向で増えているのが見て取れます。もちろん円安だけの影響とは言えない。そこは控えめに見るべきでしょう。
ちょっと乱暴ですが、円安になれば給与が増えているように見えます(相関があるように見える)。給与は増えないと言っているひろゆき氏はデータ見てないのかな?

所得税の税収、増えてないぞ!と言う人もいると思います。これは簡単な話で、控除とかをいじって、増税したからです。給与額そのものは増えています。法人税収爆上がりなんだから、減税に回すべきという理屈は正論だと思います。ま、今定額減税やってますけどね。このあたりは政治的な話になってしまうのでやめておきます。

さて、話を論争に戻しますと、このようにひろゆき氏の主張は、一見正しそうなんですが、根拠がないです。経済学のモデルも示していない。高橋先生はOECDのモデルを出して、口頭では内閣府のモデルもあると言ってます(これ、私が以前ここで書いたやつでしょう)。私から見ると論争になってないんです。ひろゆき氏は論争の土俵に上がれていない。

繰り返しになりますが、ひろゆき氏のことはそんなに嫌いじゃないので、あんまり詳しくない分野で強気な発言はしてほしくないなあというのが私の感想です。経済学というのは数学で、それも人間の頭でちょっと考えたぐらいじゃわからない。なので、小難しい数式をいくつも使って、行列やら、微分積分を盛大につかって、膨大なデータを調理して、統計学的に計算して結論を出していくんです。そんな単純なものじゃない。理系の学問です。

ちょっと脱線(本日2回目)。円安がダメだというのは、一つは「価値が下がった=悪い」と単純に考えているからじゃないかと思います。価値が下がると聞けば、単純に悪いことなんだ、これはよくない!って感じでしょうか?

そもそも価値なのか、という感じもしますね。単純に市場に円がたくさんあれば、希少価値がないから安くなるというだけで、それが「日本全体の価値」を表しているのかといえば、何か違う気がします。単に需要と供給で決まっているだけの話です。

例えば、ダイヤモンドが大量に採掘されれば、値段は安くなるはずですが、ダイヤモンドが綺麗だということに変わりないですよね。その綺麗だという価値に変化はないです。なんとなくわかってもらえるでしょうか?(ちょっと例えがイマイチ)

為替相場について、ちょっとだけ話しておくと、為替の需要って貿易をメインに思い浮かべる人が多いと思いますが、実は、貿易における為替のやり取りは、全体から見ると割合的にすごく小さくて、ほとんどが投資(投機)の目的です。円で運用した方が得だと思えば円を買い、円以外で運用した方が得だと思えば他の通貨に変える。そういう需要と供給が大半なんです。なので、為替と貿易の動向をリンクして考えるのは正しくないと思います。

ちょっと長すぎる話になってしまいました。話があちこち飛んでわかりにくかったかもしれません。




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