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日本型組織で改革が失敗する理由

日々何かを改革しようと頑張る若手官僚が、日々の出来事から得た学びや気付きを発信するアカウントです。
と言っても、「俺が霞ヶ関を変えてやるぜ!」みたいな夢のある話ではありません。
せいぜい「半径5メートルの改革」という感じで、ゆるくやってまいります。
よろしくお願いします。

こんにちは。中央官庁の片隅で課長補佐をしている者です。
霞ヶ関に限らず、いろいろなところで「改革」という言葉を目にします。
保守的な組織風土を変える、であったり、仕事のあり方を根底から変える、であったり。
僕もいろいろな改革プロジェクトに参加したり、遠目に見たりしてきました。
ところが、中央官庁では、改革と名のつくものでうまくいったものって本当に少ないなと思っています。
今回は、JTCの中のJTCとも言える霞ヶ関における経験を踏まえ、いわゆるJTC的な組織はなぜうまくトランスフォーメーションできないのか?を考えていきたいと思います。


手段を目的化しちゃいがち

いろんな本でも言われていることですが、大組織、特に日本型の組織って手段を目的化しちゃいがちだな、と思います。
わかりやすい例をご紹介したいと思います。例えば、

  • 上司から、「課内のチーム間のコミュニケーション活性化のために、毎週金曜日にランチ会をやろう!」という提案があった。

  • 最初のうちは、参加者がみんな、「チーム間のコミュニケーション活性化が目的だ」と認識しているので、別け隔てなく楽しく雑談している。

  • しかし、いつのまにか当初の目的である「チーム間のコミュニケーション活性化」が忘れ去られ、ランチ会そのものが目的となり、一応全員がランチ会に参加しているのに、普段から会話している人やチーム内の人としか話さないという、謎の時間になってしまう。

ありがちですよね。
これは、大組織や日本型の組織が上意下達の徹底をベースにしている以上、ある程度しょうがないものだよなあ、と僕は割り切っています。

こうした手段の目的化を防ぐため、僕が主導するチームで実践していることは以下の2つです。

解決策1:定期的にwhyを振り返ろう。

上記の例で言えば、そもそも僕たちって何で集まってるんだっけ?というのを、定期的に、例えば月に1回くらいの頻度で、振り返るきっかけを作ってあげるようにしています。
毎回、同じメッセージでも構いません。そもそもみんな大した当事者意識なんてもっていないので、何度も何度もしつこく繰り返して頭に刷り込んでいくくらいの気持ちでちょうど良いと思っています。

解決策2:取組の内容を事細かにドキュメント化してみよう。

これは、解決策1と比べると少し手間がかかるので、実践できていないプロジェクトもあるのですが、とにかく事細かに全部ドキュメント化しちゃう、というのも有効だなと思っています。
上記の例で言えば、ランチ会発足の経緯、目的、対象メンバー、行くお店のリスト、各会の参加者一覧などですね。
そしてこれを定期的に参加者に配布し、継続的に更新していきます。
ドキュメント化されていると、誰が見ても一目瞭然なので、いろんな人が所属する大きな組織でも参加者の意識をある程度統一することができます。

自分のことで精一杯になっちゃいがち

中央官庁に限らず、いわゆるJTC的な組織は、とにかく規模が大きいです。
同じ課であっても、係が違うだけで、隣の人が何をやっているか全然わからない、なんてことも日常茶飯事です。
こうなると、普段からコミュニケーションをとらない集団がどうしてもできてしまうので、リーダーがAを作れという指示を全員に対して出しても、A・A'・A''・・・みたいな、てんでんばらばらな成果が上がってきたりするわけです。

こうしたメンバーの視野狭窄を防ぐため、僕が主導するチームで実践していることは以下の2つです。

解決策1:誰かに横ぐしタスクを持たせてみよう。

僕は、チームの中で最も司令塔的な役割を担っている誰かに、チーム内を横断するような横ぐしタスクを与えることでこの問題と向き合っています。
大きなタスクである必要はありません。
例えば、僕は、チーム内で一番古株のXさんに、これまでのチームの歩み、失敗や教訓、いま動いているプロジェクトの問題意識なんかを、毎週、普段から付き合いのないであろう色々なメンバー対して講義してもらうようにしました。
こうすることで、古株でないメンバーの間に「わからないことはとりあえずXさんに聞いてみようか」という雰囲気を作ってあげます。
こうなると後はトントン拍子で、誰かがXさんに質問に行き、Xさんの回答を横で聞いていた人が補足的なコメントをし、質問者がまたそれに反応し、・・・という具合に、今まで繋がりの薄かった人同士が自然にコミュニケーションをとるようになっていきました。

解決策2:チーム横断的なプロジェクトを作ってみよう。

解決策1はお手軽な反面、司令塔的な役割を果たせるメンバーが運良く在籍していないと実行できません。
そうしたメンバーがいない場合は、無理やりにでもチーム横断的なプロジェクトを立ち上げてみることにしています。
これも、大掛かりなことをやる必要は全くありません。
例えば、幹部に説明していくプロセスで「公表見送り」になっちゃった分析結果や事業成果をみんなで出し合い、組織内全体に共有するプロジェクト。
組織内のレピュテーションも上がり、成果も無駄にならず、チーム内のコミュニケーションのきっかけにもなります。既存の成果なので、手間もかかりませんよね。

できっこない!と考えちゃいがち

JTC的な組織では、自分のポジションがすべてです。出世するならこのポジションとか、このポジションは勉強できるから将来に役立つとか、そういう話に事欠かない組織です。
したがって、みんな自分のポジションにそれなりのプライドをもってしまいます。
これもJTC的な組織の性質上、どうしても避けようがない問題です。
そして、「何かを変える」ことは、誰かのポジションを否定することにつながりかねませんが、誰だって現状は否定されたくないですよね。
そこで、僕は、関係者の利害が関係する改革プロジェクトでは、以下のようなコミュニケーションの取り方を心がけています。

解決策:現状を否定せず、あるべき姿をまず考えてみよう。As-IsとTo-Beで考えよう。

現状を否定するとみんな怒ってしまいます。なので、現状を否定することなく、まず、あるべき姿は何ですか?という問い掛けをします。
こういう問を投げかけると、みな、現状のことはさておき、理想論について熱く語ってくれます。
あるべき姿について合意がとれたところで、次に、じゃあ、そこにいくためにはどうしたらいいですか?という問を投げかけます。
こうすると、否応なく現状がマズイということに(少なくとも論理的には)気がついてくれます。
これでも屁理屈を並べてくる人がいないわけではありませんが、JTC的な組織なら、大半の人がある程度の論理的な思考力をもっているので、現状のマズさを認めます。
シンプルな問を投げかけることで、本人自身の口で現状のマズさを語らせるよう誘導していくイメージです。


以上、JTC的な組織における改革の失敗理由とその対処法について書いてまいりました。
「そんなだいそれたこと、自分には無理だ」なんてことは、一つもなかったんじゃないかなと思います。
皆さんも、できることからすこしずつ、改革の波を起こしてみませんか。ちょっとずつ仕事が楽しくなりますよ。

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