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メッシ不在?


メッシ不在のクラシコ。新10番アンス・ファティと補強組はバルサ復活の救世主になりうるか
2021年10月23日 16:45webスポルティーバ

メッシの後継者として10番を背負う、バルサのアンス・ファティ(左)

 メッシのいないクラシコがやってくる。
 1929年以来、実に246回繰り返され、811ゴールを生み出してきた伝統の一戦。この歴史ある試合の最多出場(45試合)を果たし、クラシコ史上最多得点王(26得点)でもあるリオネル・メッシが、10月24日、カンプノウで行なわれるこの戦いにいないことには誰もが一抹の寂しさを感じている。
 しかし、バルサのオランダ人指揮官、ロナルド・クーマンは、メッシ不在を誰もが忘れ去るような最高のプレーをホームで行ない、永遠のライバルを倒し、堂々と勝利を手にして起死回生の道を歩む......といったイメージをしているかもしれない。
 なんと言っても、現在(10月23日時点、以下同様)、バルサは他クラブより1試合少ないとはいえ、リーガで7位、チャンピオンズリーグではグループ内3位とまさかのグループリーグ敗退もありうる背水の陣で、2021年の初クラシコを迎えるのだ。
 ただ、バルサファンにとって楽観を呼び込む要因となっているのが、メッシの後継者、背番号10番をつけて立つアンス・ファティの存在だ。
 バルサの育成組織ラ・マシアに、わずか10歳の時にやってきたギニアビサウ生まれの逸材は、ユース時代からその才能を余すことなく発揮してきた。16歳でトップチームデビューを果たすも、その後、2度の重度の負傷により、継続してプレーができずにいた。しかし先月26日、リーガのレバンテ戦で323日ぶりにピッチに立ち、その10分後には、今季初得点を決めてみせた。バルサの期待の星が堂々と復帰してきたのだ。
 今年の夏、衝撃的な形でメッシがバルサを去ることになったあと、今季の背番号10番は欠番にという声も上がった。しかし、クラブ側の決断は早かった。メッシを「追い出さざるを得なかった」ことに対して起きた大ブーイングを前に、新たなヒーロー作りに方向転換したのだ。
 白羽の矢が立てられた18歳、アンス・ファティは、バルサファンが望む謙虚さと自信を兼ね備えている。
 今週、2027年まで契約更新したことが発表され、その際に、背番号10番を背負うことになったことについて、それを許してくれたキャプテンやクラブへの感謝を述べる一方で、「僕はバルサにいるのだから、全てにおいて覚悟ができている。10番を背負う準備もできている。10番をつけるのは僕にはプレッシャーにはならない。モチベーションのひとつになる」と言ってのけて、サポーターを痺れさせた。
 週末に時間があれば、ホームのバルサBの試合観戦に顔を出すなど、生粋のバルサファンであることもサポーターに愛される要因だ。それを自然体でやってのけるアンス・ファティが大器であることに違いはないが、まだその若さでメッシの重荷を全て背負わせるわけにはいかない。
 そこで、期待されているのが、今季、夏に補強したメンフィス・デパイ、そして、メッシの親友兼アルゼンチン代表チームメイト、本来、メッシとのタンデムが期待されていたセルヒオ・アグエロの活躍だ。
 ただ、アグエロは、残念ながら、まだ負傷あがりであり、今回のクラシコでのスタメンは望めない。とはいえ、元マンチェスター・シティのスター選手は、「僕らベテランがアンスを助けていかないとね」とその責任を背負う覚悟を口にしている。おそらく、今回のクラシコでは、後半から起用されることになるだろう。
 ピッチでアップするだけで、スタンドからは「クン!クン!クン!」と大歓声で毎回、愛称で迎えられているアグエロは、アトレティコ・マドリード、マンチェスター・シティ時代ともに、レアル・マドリードのゴールネットを揺らしている。クラシコで、バルサでの初得点を決めた日には、10万人の大歓声が響き渡ることになるだろう。
 その一方で、今回、スタメン出場がほぼ確定しているのは、ベテランFWのメンフィス・デパイだ。昨季、リーグアンのリヨンで、20ゴール12アシストを決めて鳴り物入りでバルサにやってきたメンフィスは、現在、8試合4ゴール2アシストと、新補強選手としては、悪くない数字を出している。しかし、レアル・マドリードの攻撃を支えているカリム・ベンゼマと比較した時、物足りなさは否めない。
 クリスティア―ノ・ロナウドなきあとのレアルの攻撃を支え続けているベンゼマは、今季、メンフィスと出場数は同じで8試合に参戦しており、これまで9ゴール7アシストを決めている。正直、これが、トップチームに求められるスタメンFWのパフォーマンス力だと言えるだろう。
 また、レアル・マドリードには、ベンゼマに加え、今季、爆発しているヴィニシウス・ジュニオールがいる。今季は、8試合で5ゴール3アシスト、チャンピオンズリーグでも2ゴールを決めている。昨季はシーズンを通して6ゴールしか決められず、非難轟々(ごうごう)だったが、今季は既に昨季の自己記録を超える勢いを見せている。また、既にリーガにおけるクラシコも4回目を数え、過去にはゴールを決めた経験もある。今回は、さらに自信をつけてカンプノウに戻ってくるヴィニシウスを止められるかも、バルサにとっては鍵のひとつになるだろう。
 カンプノウでは、今季初の10万人の観客が入ると予想されているが、バルサがホームで戦うというメリットを差し引いても、得失点を始め攻守ともに、データはレアル・マドリード優勢を語っている。とはいえ、今季のレアル・マドリードの試合を見ていて、ヴィニシウスの覚醒は目を引くが、それ以外に目新しさは感じられない。
 また守備に関しては、両チームとも不安を抱えている。
 レアル・マドリードの監督、カルロ・アンチェロッティは守備の構築に苦労させられている。長期離脱していたフェルラン・メンディが戻ってきて、最近ようやく落ち着きつつあるとはいえ、アンチェロッティ自身、「このチームの問題はゴールを決めることではない。失点しないことだ」と明かしている。
 失点率ではバルサも負けてはいない。次々とディフェンダー陣が負傷した状況があったとはいえ、レアル・マドリードの10失点をわずかに2点下回るだけだ(8失点)。
 そして、中盤は、レアル・マドリードは安定のベテラン勢(カゼミーロ、クロース、モドリッチ)が支え、対するバルサは、ベテランと若手のコンビネーション(セルヒオ・ブスケツ、フレンキー・デ・ヨング、ガビ)で対抗する形になるだろう。
 ぺドリの代わりに、17歳で今季、バルサの中盤を任されているガビにも注目だ。ぺドリは、昨年、17歳でバルサのトップチームデビューを果たし、大ブレイクしたものの、その代償を払い、現在は負傷中であり、今回のクラシコには間に合わなかった。ぺドリの負傷欠場も、クーマンにとっては痛手と言えるだろう。
 一言で言えば、今回のクラシコは、守備に不安を抱えながらも、既に完成しているベテラン中心で構築されたレアル・マドリードと、イレブンのうち、半分以上をラ・マシア育ち出身の若手選手で固め、将来に向けてチームを構築中のバルサとの対戦となる。
 ロナルド・クーマンにとっても、負ければバルサの監督として最後通牒となる可能性を秘めているクラシコ。世界中で6億5千万人がテレビ視聴する注目の一戦。それもホームゲームで、永遠の宿敵を倒し、一気に起死回生の道へ......というバルサにとって、夢のようなシナリオは、かなうのか。24日、現地時間16時15分(日本時間24日23時15分)にカンプノウを舞台にクラシコの幕が上がる。

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