監督人事について

"甲府の監督は給与に対して、スポンサーや地域の期待が大きく、敬遠されがちである。"

地元紙、それから半ばクラブ広報有料サイトに同様の発信がなされた。

確かに、それらの要因はあると思うし、的外れだとも思わない。現に度を越した誹謗中傷が監督、選手に向けられたし、それが吉田達磨監督退任の一因にもなっていると思う。

だが、J 2リーグ終盤の7連敗、18位という言い訳をしてもしきれない下位低迷を受けて、2位を目指す、プレーオフ進出を目指すと言ったクラブに批判が集まるのは自然なこと。どのクラブでも起こりうることだ。

待遇、環境、圧力感。

監督就任を考える上で、大きく3つの判断材料が挙げられると思う。この中で、地域、スポンサーが監督に与える影響は、クラブが直接与える影響の地盤、土台でしかない。

クラブが直接監督に与える影響に比べたら、サポーターを含む地域、スポンサーの影響は少ないだろう。

にも関わらず、上記の文言を、自己批判、反省を示すこともなくメディアに書かせる。

これでは、監督が決まらないのは、スポンサーや地域が金を出さないくせに口ばかり出すということが、クラブの見解であると解釈されてしまう。

監督がACLでの指揮をとりたい気持ちもあった、と。社長が、達磨監督退任を残念、と。ならば、達磨監督退任の原因は、地域、スポンサーとなる。

しかし、監督が決まらない原因をそこだけのように書かせたらいけない。それをしたら、クラブへの逆風が増してしまう。

外部への責任転嫁であり、愚策。
佐久間社長は、GM時代から中心選手の解雇に正当性をもたせる際に、地元メディアを使ってこき下ろす手法をとってきた過去もある。

その流れから見ても、今回の記事の印象は最悪である。

記事を読んだ地域、スポンサーの怒りが社長自身に向くことは自明。経営戦略のプロが入閣したはずなのに。。

しかし、サポーターとしては、佐久間社長を叩いて、その先に何が残るのか考える必要もある。監督を叩き続けた結果が今のクラブの苦境の一因になっているのも事実だから。

佐久間社長のクラブへの想い、行動力は凄まじく、彼なくして今の甲府は存在し得ない。彼まで心無い言動で失うことは避けたい。

存在を肯定し、感謝の気持ちをもつことを前提にできることをやって、買うものを買ってクラブを支える。その上で、ダメだと思うことはダメだという。このスタンスで関わっていくことが大切なんだと思う。

で、クラブに直してほしいこと。

海野さんから続く黒字史上主義からくる固定資産税の節約。スタジアムを県に求めるなら、練習場やクラブハウスは自前で確保するくらいの姿勢がないと、地域に寄りかかりすぎという印象は拭えない。

チームの状況が悪い時に、チームの方針や考え方を発信して現場を守る力。今季、吉田達磨監督の苦境にて、自らがサポーターの前に立ったこと、吉田達磨監督を矢面に立たせなかったことは、前回解任時に比べて前進だった。

だが、監督がゴール裏に来ないことで、サポーターと向き合えない臆病者のレッテルを貼られかねない状況を作り出した判断でもあった。

ともに肩を並べ、サポーターの前に立つことができていたら、橋爪アンバサダーを通してでもいいから、吉田達磨監督への揺るがぬ信頼を、強化部の編成失敗への反省を発信できていたらサポーターの心情も違っていただろう。

現場への言語統一や戦術への介入も大きな要素として考えられる。そもそも、吉田達磨仕様に言語まで統一して引き継いで、上野監督、伊藤監督とやってきた。特に、伊藤体制においては、新人監督が佐久間社長の言うことを聞きながら、自分の色を徐々に打ち出していった感が強い。

外部から招聘するとなったとき、まずはピムさんの系譜にあること、ここまで築いてきた伝統を引き継いでくれる監督であること、佐久間社長の要求を受け入れながら、結果を残していくことが求められる。

そもそも候補が限られる中で、甲府のバックボーンを受け入れさせて、結果も求める。ACLもある。クラブが突きつける要求と地域の要求を合わせたとき、物凄く面倒くさい就職先が完成する。

就任する監督に対するハードルを上げているのは、地域もそうだが、クラブそのもの。だが、ここを譲っては折角の積み重ねが水泡ときす。

上野体制の終焉により、佐久間氏の思惑に合わない監督は容易く解任されることが示された。伊藤体制で結果を残したから、求める監督像はより鮮明に、具体的なものになった。

もはや、その起点となった吉田達磨氏以上にその役割を果たせる者がいないほどに。

彼と同じサッカーを志向し、言語統一でき、佐久間社長の意向に添え、クラブの内情を理解する監督。そして、結果を残せる監督。

よほどの妥協、譲歩がない限り、外部から招聘することは不可能に近い。社長の大学繋がり、大宮繋がり、山梨繋がり、クラブ内昇格。

落とし所がどこになるかはわからないが、この時点でかなり候補は絞られてくる。

新聞記事で地域、スポンサーへの牽制をした。自らに批判の矛先を向けることが目的ならば、監督へのハードルを下げることは果たされた。

次にやることは、待遇面と練習環境の改善。監督への広報的な後方支援の充実。求める監督像の妥協については、してほしくない気持ちもある。

ただ、クラブが前向きに進もうとするなら、可能な限り協力をしたい気持ちのある地域、スポンサー、サポーターはきっと多い。

そんな人たちを記事で貶めるのではなく、ともに頑張りたいと思わせてほしい。サッカーはエンターテイメント⚽️夢を見せてくれるのがプロサッカークラブではなかったか。

夢を見せる対象に冷や水をぶっかける精神性を見つめ直し、協力したいと思わせるような発信力をつけることがこのクラブに1番足りなくて1番必要なことかもしれない。

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