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【ゲイ恋】匂い立つ男

「俺ってめっちゃ汗かきでさぁ。今日なんか電車の中で半袖は俺だけ。ずっとタオルで汗拭いてた。」

はにかんだ笑顔で年下男子の太賀は続ける、「だから香水着けてるんだ。エチケットとして。」

ぼくより10cmも背の高い彼の体に軽く抱きつき、首のあたりをくんくんする。ほんのわずかにムスク系の甘い香りがする。

これが太賀の匂いなんだ。出来るだけいっぱい吸い込む。「さっき、ちょっとだけ着け直したんだ。」頭の上で低く優しい声が響いた。

そして夜が来て、ぼくたちは甘い体温を確かめ合った。何度も何度も。

二人の呼吸は近づいたり離れたりを繰り返す。そして同じリズムで幸福な結末を迎えた。

「誰かと一緒だとぐっすり寝れないんだ。ごめんね。」彼はそう言って家路に着いた。

ぼくは窓に映る金色の月をぼんやり眺めてた。そのとき、ふとあることに気づいた。

あれっ!太賀の匂いがする!

ぼくの体から太賀の移り香がする。しかも彼の体からはわずかにしかしなかったムスクの香りがぼくの体からはより濃く甘く甘く香っている。

まるで太賀に後ろから優しく抱かれてるみたいに。離れていてもこんなにそばにいる。優しい体温を感じられる。

その夜は幸せで満ちたりた気持ちで眠りに落ちた。


移り香ーなんて雅で艶ぽい言葉。

千年以上前の人たちもエロくてエモい体験をしてたんだね。愛しい人の甘く切ない香りに包まれて。

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