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前作 #むこうのくに は非日常的なリアル、今作 #それでも笑えれば は日常的なリアルを表現して前作を超えた感 #劇団ノーミーツ 感想(ネタバレなし)

今日の夜に千秋楽公演があるし、僕が見た2回とも500名以上の人が見ていて好評なので追加公演もありそうなので、ネタバレなしで感想を書く。
※今回は団員の友人から招待をいただきました。ありがとうございます。

先に結論を書いておくと、前回を超えて面白かったので、都合つく人はぜひ今日19時の千秋楽公演を見たほうがいいと思う。
前回感じた面白さは今回も変わらず、むしろアップデートされている。

新鮮さを超えていくのは難しい

大抵のイベントやコンテンツは、第1回が一番成功する。消えていくイベントは話題に上らないから生存者バイアスが働いて長くやることに価値があるように見えるだけで、続けるほど大きくなっていくのはまれだ。

ノーミーツの長編公演はこれで3回目になる。
「Zoomで演劇を演っただけでエライ」
「これまでと違ったフォーマットで演劇を成立させて魅力を出したのがすごい」
という段階は超えている。
観客の期待値も上がって、新しいものに飛びつくというよりも面白いものが見たくて来ているように感じた。今回の演劇もこれまで同様チャットウィンドウがずっと表示される演出や機能に関するコメントは前回よりぐっと減って、ストーリーや演技そのものに対する反応が多かった。

オンラインならではの余白の大きさを活かした演出

前回も書いたけど、演劇の魅力の大きな要素は目の前に生身の人間がいることだ。

舞台暗転のときの圧倒的な暗さや、「見える距離で生身の人間が青筋立てて叫んでいる」こと、聞こえてくる役者の息づかいなどは、他の方法では提供できない圧倒的な解像度 (前回の感想)

オンラインにはそれがないのは変わらない。パソコンの画面とスピーカー。他の作業をしながら見れてしまう。
しかも僕は中国からVPN通して繋いでいるので遅延するし、頻繁に中断する。僕の環境だと遅延が大きすぎてリアルタイムの投票には参加できず、セリフも頻繁に落ちる。学生の頃ラジオのエアチェックをしていたような気分だ。
セリフの90%ぐらいは聞けて、大雑把にストーリーは追いかけられたけど、生の舞台と没入感はぜんぜん違う。

じゃあつまらなかったかというと、これが悪くない。というよりも、そうした客席からの解像度の低さが、あらかじめ計算にいれられていたようなのだ。
おそらく他のことをしながらの「ながら視聴」とか、途中からの視聴でも充分に楽しめるだろうし、そういう視聴スタイルも考えながら演出してるんじゃないだろうか。

ストーリーそのものは余白が大きく、最初から何でも説明されるわけではない。劇中の投票でストーリーが変わるマルチエンディングなこともあり、大きな流れはむしろわかりやすくできている。
それが、内容について想像したり、チャットする余白を生んでいる。
ブツブツ切れながらもけっこう面白がって見れたのは、そうした補完をしながらでもついていける面白さがあったからだ。

表現される別の種類のリアルさ

今回の「それでも笑えれば」は、この2020年を舞台にした芸人の物語だ。

私は普段、芸人をやっているんですが『それでも笑えれば』は、なんと芸人の物語なんです。芸人が芸人役を演じるという、なんともリアルな演劇をさせて頂きます。(公式サイト 小田島マキ 役 河邑 ミクさんのコメント)

人間が人間にサービスする仕事は、この2020年コロナでどこも厳しくなっている。芸人は典型的な一つだろうが、ほとんどの人の仕事や生活に、今年はいろんな事があった。劇中には「あるある」が展開されていく。

そうした共通体験の共有は、解像度関係なく見る人を引き込む。題材が自分ごとになることで、余白を想像できることの価値が更に大きくなる。

前作「むこうのくに」は非日常感、「それでも笑えれば」は舞台を超えた日常感

前回の「むこうのくに」はサイバースペースを題材にした非日常の舞台で、それをリモートで演じることがより面白さを生んでいた。
今回の「それでも笑えれば」は、「コロナで変化した2020年の人生」という大きな共通体験をテーマにし、あらゆる人に訪れる人生の様々な選択を脚本に盛り込むことで、オンラインで他人と触れ合うことに慣れた僕たちに、解像度を超えたリアル感を届けることに成功しているように思う。

Twitterには今も、自分ごとに重ねて感想をつぶやく人が溢れている。そういうリアルさを体験させてもらったことで、今回の講演は前回より楽しめた。

VPN越しの動画は正直面白くない。ZoomやSkype等の双方向コンテンツは普通につなげるのでよく使っているが、youtube等は仕事で必要なもの以外は見なくなってしまった。今回のノーミーツもそういう意味でノーマークだったが、予想を上回っておもしろかった。次回も見ると思います。

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