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The South Hill Experiment, scruffpuppie…今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-18

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜


The South Hill Experiment (Baird & Goldwash)

LAを拠点に活動するBROCKHAMPTONのコラボレーターでも有名なBairdと、Gabe AchesonによるソロプロジェクトGoldwashからなる兄弟デュオ、The South Hill Experimentが初となるアルバム『MOONSHOTS』をリリース。
お互いプロデューサーでもあり、素晴らしいソングライターでもあるため、それぞれの特性が上手に活かされ、昇華された非常に濃度の高い作品に仕上がっています。Goldwashでのソロ作ではジャズやソウル、ヒップホップを軸としたメロウでチルなサウンドを得意としていて、普通にかっこいいです。Bairdの方はBROCKHAMPTONの活動でも際立っていますが、エレクトロニックサウンドの調理がうまく、そこにインディーやヒップホップなどの要素も絡めたベッドルーム・ポップ的なサウンドを特徴としています。
そんな両者の実力が程よく溶け合い、バンド名の如く実験性も兼ね備えた、地下室的なムードも感じられる音楽性がたまらないですね。二人の創造力の力強さやグルーヴ、それを超えていく心地良さが全曲に詰まっています。


scruffpuppie

以前このブログでも記したアーティストcry2jodii。Phoebe Bridgersのレーベル〈Saddest Factory Records〉とも契約を交わしたScruffpuppieの別名義のプロジェクトで、今回本名義の方のScruffpuppieでひさびさのアルバム『if jodi could breathe』をリリース。Scruffpuppieのバンドメンバーに性的暴行疑惑によって彼女のコミュニティーの中でも波紋を呼び、それによって〈Saddest Factory Records〉の契約は破棄。その後そのバンドメンバーとは一切関わらないと発表ののち、サイドプロジェクトcry2jodiiを経ての今作となります。そのほかの経緯は以前のブログでも記載しています。
そういった問題以後、Scruffpuppieとしての作品は沈黙を保っておりましたが、さまざまなサポートがあって今回の作品の発表に至ったそうです。やはりその問題以降かなり精神的に苦しんだようで、結果的に彼女にとって音楽の制作は心の癒しとなり、その自身の過程と成長を描いたアルバムになっているとのこと。13曲の44分という前作よりもボリューミーな作品で、音楽性としてもバラエティーに富んだものに。サウンド的にはメランコリックで内省的なものが多いものの、曲を追うごとに一筋の淡い希望の光が見えてくるような、物語仕立てになっています。Scruffpuppieの作曲センスは健在で、アコースティック・ギターの弾き語りをベースに、バンドサウンドに落とし込んだインディー・ポップ的な曲から、ベッドルーム・ポップ的な質感で奏でた曲まで、やはりめちゃくちゃかっこいいですね。


Joy Oladokun

アリゾナ出身で現在はナッシュビルを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Joy Oladokunが新作アルバム『Proof Of Life』をリリース。今作にはMt. JoyやManchester Orchestra、Chris Stapleton、Maxo Kream、Noah Kahanといった名だたるアーティストが客演で参加。
彼女はクィアであり、ナイジェリアからの移民という中で、ナッシュビルのカントリーやフォークシーンに新たな風を吹かすアーティストで注目を集めているそう。Tracy ChapmanやLauryn Hill、Bob Marleyなどから影響を受けたという彼女の音楽性は、アメリカーナ的なフォークやカントリーなどのサウンドから、ブルースやソウル、ゴスペルなどを織り交ぜた、牧歌的でありながら多幸感に溢れた音楽を奏でています。スタジアム的な壮大なポップスアレンジも魅力で、彼女の心に沁み渡るような味わい深い歌声が映えるようなサウンドになっています。清々しい爽快なドラムのリズムと駆け抜けるような美声によって生み出されるグルーヴも最高で、全曲通して素晴らしいです。


Me, Charles

ロンドンを拠点に活動するCharles Stookeによるソロプロジェクト、Me, Charlesが新作EP『Fine Isn't Good』をリリース。彼は以前UKのアンダーグラウンドシーンの中心的なレーベル〈Slow Dance Recordings〉の今年の初めにリリースされたコンピレーションアルバムにも入っていたりする今後要注目のアーティストです。
今作の1曲目から聴けば、彼がどれだけエクスペリメンタルで攻めた音楽性を作り上げているかわかるかと思います。インダストリアルやノイズから、アンビエントやエレクトロニカ、そしてジャズやソウル、インディーまでをも取り入れた、ストレンジで奇想天外なサウンド。でも一貫してポップで聴きやすいという、この絶妙なバランス感は天才的だと思います。ファンタジックでアイロニックな世界観による独特な浮遊感も漂っていて、そこもとても魅力的です。また今作収録の「Waiting」のライブ映像も公開されているのでこちらも合わせて観るとより彼の魅力に浸れるかと思います。


Raghd

スウェーデンを拠点に活動するラッパー/シンガー/
プロデューサーのRaghdが、新作EP『A Good Friend』をリリース。ハウスやジャングル、2ステップといったダンスミュージックのビートに、R&Bやヒップホップを織り交ぜたクールなサウンドを特徴としていて、今作でもそれが存分に発揮されたEPに。ダウナーで甘美な彼女の独特なフロウも素晴らしく、その音楽性と見事に溶け合っています。Deb NeverやLava La Rue、Nia Archivesあたりが好きな人には刺さるのではないかと思います。


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