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King Isis, Malady...今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-12

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜

King Isis

USのオークランド生まれ、現在はLAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、King IsisがデビューEP『scales』をPigeons & Planesのスタッフが運営するレーベル〈No Matter〉と最高のアーティストを輩出し続けるレーベル〈Dirty Hit〉からの共同リリース。
今作ではインディーロックやグランジ、オルタナ、ジャズやR&Bなどのそれぞれの要素が美しく溶け合った作品に。タイトなビートともに疾走感あふれる爽やかな楽曲「in my ways」から、インディーR&Bのような陶酔的なムードとオルタナなサウンドが合わさった「taste of u」など、独創的で鮮やかなサウンドが展開されています。Isisの歌声はソウルフルで芯がありつつも、流麗で透明感のある声質も兼ね備えていることで、作品全体的に淡く神々しいムードが漂っていますね。Isisについては別の記事で深掘りしようと思います。


Thandii

UKのマーゲイトを拠点に活動するJess BerryとGraham Godfreyによるデュオ、Thandiiがデビューアルバム『A Beat Make It Better』をリリース。彼らは知られる人にぞ知られたスーパーデュオでして、各々が素晴らしいアーティストと共演しています。ボーカルのJess BerryはGhostpoetやHozier、Mr. Jukesとコラボしたり、ドラマー/パーカッションの肩書きを持つGraham Godfreyに至ってはMichael KiwanukaやLittle Simz、Cleo SolさらにはInflo、SAULTとも関わっているとか…。(ちなみに彼はPigeonというプロジェクトのバンドメンバーでもあります。)そんなこともあってアルバムにはニヤッとしてしまうようなオマージュが散りばめられていて、「あれ?このドラムとベースラインは…?」というようなのも潜ませています。
アルバム自体はファンキーでグルーヴィー、陶酔的でいて滑らかなものに仕上がっています。R&Bやソウル、ファンクの極上の部分を抽出した、無駄のない洗練されたサウンドで、全体的にローファイなテイストにまとめ上げているのも個人的にはグッときます。随所にサイケデリックやニューウェーヴ的なものが散在しているのですが、サイケ具合に至っては天然100%と言い表したくなるほど多幸感あふれるものに。Jessのボーカルも甘美で浮遊感の溢れる歌声もこのグルーヴと雰囲気にぴったりです。


Malady

個人的に勝手に〈Bloc Partyの正式な後継者〉と思っているロンドンの4人組の新星バンド、Maladyがとうとう!待望の!デビューEP『All Pressure, No Diamonds』をリリース。去年コラムで書いたBloc PartyからJean Dawsonを繋げた「ブラックコミュニティーでのインディーの息苦しさ」のコラムの続編「人種によるジャンルの固定概念をぶち壊すアーティスト特集」でも挙げたアーティストです。
既にデビューシングル(2020年)のときからとんでもない存在感で、突如UKのバンドシーンに爆誕したMalady。当時はUKはポスト・パンクシーン一色でしたが、だんだんUKのロックシーンもどんどん実験的で面白いサウンドを奏でるバンドが当時に比べれば増えてきたと思います。そんな中でもMaladyは今でも一線を画すバンドだと一聴すればわかるはずです。
彼らの音楽性は、ハウスやテクノ、UKガラージといったダンスミュージックや電子音楽をベースにしたサウンドに、そこにインディー・ロックやポスト・ロックなどを織り交ぜたもの。ダンサブルだけどUK独特のダークでアングラなムードが漂っていて、さらにKing Kruleを彷彿とさせるレイジーなクールなボイスも最高にかっこいいです。ちなみに今作のテーマが「現代の若者が抱える試練や困難」とのことで、その鬱屈とした感情や悩みを見事に今作で表現されていると思います。


SOMOH

ロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター Sophia Mohanによるプロジェクト、SOMOHがデビューEP『A Plan to Get Home』をFar CaspianのJoel Johnstonによるレーベル〈Tiny Library Records〉からリリース。
たゆたうような甘美で淡い歌声にまず耳を奪われる今作。そんな記名性のある歌声と、インディー・ロックやオルタナティヴ、フォークなどを混ぜ合わせたベッドルーム・ポップのような音楽性がとてもマッチしています。ノイジーなギターと煌びやかでドラマティックなムードの配分も絶妙で、それによって彼女がリリックで伝えている「20代の時のもどかしさ」がより臨場感あふれ、その歌詞の状況がシネマティックに脳裏に浮かび上がるよう。Alex GやSoccer Mommy、beabadoobeeに影響受けたのも納得のサウンドで、今後の活躍もとても楽しみです。


Joseph Efi

サウスイーストロンドンを拠点に活動するプロデューサー/DJ/ソングライター、Joseph Efiが新作EP『Body Lost』をリリース。ちなみに彼の母親はエレクトロニックデュオ、LambのLou Rhodesなんだとか。そのため幼少期からさまざまな音楽と機材に囲まれて育ったそうで、若い頃から音楽制作にも没頭していたらしいです。彼はこれまでに2020年の個人的なベストEPにも選んだSunkenの制作や、Natty Wylahのシングルのリミックスに参加するなど幅広く活動しています。ちなみにSaint Judeとも親しいです。
彼の作り上げるサウンドは、とても緻密で繊細、そして細部までこだわったもので、美しく幻想的な電子音楽の世界を作り上げています。ダブステップやハウス、IDMといった多彩なビートを組み合わせ、そこにアンビエントやインダストリアル、グリッチなどの退廃的で叙情的なサウンドスケープを加えた独創的なスタイルを確立しています。ボイスサンプリングや環境音の散りばめ方も秀逸で、日常や自然の中にいるような錯覚も起こすようなサウンドデザインも魅力的ですね。

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