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Bloc Party〜Jean Dawsonへ 音楽常識を覆す革命者、そしてブラックコミュニティーでのインディーの息苦しさ〜

このコラム自体はあくまでも個人で感じた音楽的なカルチャーの変化であり、よりディープに調べれば昔にもそのようなムーブメントがあったと思います。今回ここで記すのはストリーミングが普及して以降の新たな音楽ムーブメントを見てきてたあくまでも個人的な感想です。

2021年はポップ・パンク・リバイバルだと叫ばれたりして、Avril Lavigneが再評価されたり、Travis Bakarが大活躍して、KennyHooplaともコラボしたりと個人的にも面白いなと感じていました。
今回この記事では、そんなポップ・パンク・リバイバルとは少しベクトルが異なるけども、その部分にも絡んでくるコラム記事を書こうかなと。いくら海外のメディアを調べていてもこういうの出てこないなと思っていなので、自分で書いてしまいます。「ふーん」くらいに思ってくれたら嬉しいです。

(続編ではその新世代アーティストをまとめた記事もありますのであわせてチェックしてみてください。)


BakarとBloc Partyが繋がった話

Bakar

「なんだこいつ?これ絶対にやばい。」いつも音楽を掘っていてそう思うことは本当に限られています。いろんな音楽が溢れた世の中になってから、僕は2017年にある衝撃的な出会いをしました。

ロンドンから現れたBakarが出したデビューシングル「Big Dream」。初めて聴いた時に、「なんだこれ?」という感想しか抱かなかった。

あまりにもストレートなインディー・ロックでありながら、歌い方がラップ・テイストでもありながら、King Kruleのように気怠げな歌い方を混ぜたような変わったフロウであったからです。スポークン・ワードとも言えるような音楽性でもありながら、そのジャンルに捉われないサウンドで、あまりにも衝撃的で何回もこの曲は聴きまくりました。
Cosmo Pykeも2017年ごろにロンドンから現れましたが、やばい新人が現れた!とその当時は思っていたりもしました。でも僕の頭の中ではずっと何かが引っかかっているようなモヤっとした気分が残ってるのもたしかでした。
しばらくしてからBakarは新曲「Million Miles」をリリース。

この曲を聴いた時に自分の頭の中で「あ!」と繋がりました。Bakarを聴いた時からずっと抱えていたモヤモヤが晴れた。それはイギリスの2000年代のインディー・ロック語るときに忘れてはいけないバンド、Bloc Partyだ。

Bloc Party

当時のインディーロックバンドの中でも、その斬新な音楽性で一世を風靡しました。何を言おうとしているのかというと、Bloc Partyの音楽性は、当時でもインディー・ロックの一言では片付けられないような、さまざまなジャンルを組み合わせた独創的なものでした。
その時は「ポスト・パンク・リバイバル」や「ポスト・ロック」などとも呼ばれていたりもしました。そういったボーカル・Kele OkerekeがBloc Partyで見出した、ジャンルに囚われないその精神が、時代を渡り、ロンドンのBakarという新たなアーティストがまた新たな音楽性を切り開こうとしていると感じました。またこの時に僕は「すでに00年代リバイバルが来ているのかも」とも思いました。
たしかに細かい音楽性の部分や、実際に彼がルーツを語ったときは、Rage Againt The MachineやFoalsを挙げていたりと、Bloc PartyとBakarの音楽性は直接的には似通っていないかもしれないけど、ジャンルを超えた音楽の組み合わせを追求するマインドや、歌い方のフロウなどに通ずるものがあると感じました。
2018年のPigeons & Planesのインタビューでは、Bakarは以下のようなことが綴られています。

「もし人々が私を見て、私がどんな音楽を作っているのか想像したとしたら、90%の人はラップかヒップホップと言うだろう」とBakarは説明する。Bakarにとって、彼が作っているものの中で最も難しいのは、そういったステレオタイプを打ち破るための戦いである。

Pigeons & Planes

革命者、Jean Dawsonの誕生

Jean Dawson

そういったBakarと同じようなマインドを持つアーティストは世界中にまだいます。彼を見つけた時を同じくして、サンディエゴに生まれ、LAを拠点に活動する、音楽的な革命者でもあるJean Dawsonが爆誕していたのだった。
彼を見つけたときに衝撃を覚えた曲が、2018年に発表した「Bull Fighter」。うる覚えだけど、たしかZack VillereやRoy Blair周辺がストーリーにのっけていて、その経緯でJean Dawsonのこの曲を知ることになりました。

レイドバックなギターサウンドに、メランコリックでエッジなJean Dawsonのボーカルが乗っかるシンプルな1曲だが、この時に彼のジャンルに囚われない音楽性に対する姿勢に驚かざる終えなかったです。そして何より驚いたのが彼が次に出した"Napster"だ。

Bakarの時と同じ感想で、「なんだこれは?」。極めて衝撃的な音楽でした。ジャンルに囚われない彼の想いがさらに加速していると感じました。それと同時に、僕自身がRoy BlairやBROCKHAMPTONを聴いた時と同じような安心感も感じました。やっとなんのジャンルのしがらみを持たない音楽がたくさん出てくる時代になったのかと。

Jean Dawsonの苦しみ

2019年にJean Dawsonは、先ほど紹介した楽曲を含めたデビューEP『Bad Sports』をリリースしました。彼曰く、このEP作品はミックステープ以上、アルバム未満である中間に位置する作品であると、2020年のPigeons & Planesのインタビューで語っています。彼のこのプロジェクトを理解してもらうために、アルバムという形式ではなくEPという形式にすることで、聴く側の選択肢を増やしたいという意図があったそうです。
この作品自体を聴いてもらうとわかるのですが、まとまった作品でもありながら、1つ1つの楽曲のこだわりが本当に強く、Jean Dawsonの作曲性の自由さを噛み締めることのできる作品です。

先ほどのPigeons & Planesのインタビューでは、彼がこの作品に辿り着くまでの苦悩についても語っていました。

初めて作ったインディー・ロック色のある曲を、僕にとって本当に重要な人、ほとんど師匠に近い人に聴かせたことがあるんです。その人が最初に言ったのは、「どうして白人の子供たちに合わせようとするんだ」というようなことを覚えています。
そんな厚かましい質問をされたことに僕は傷ついたし、そのときは「あなたなら俺の多才さを褒めてくれると思っていたのに」ってね。

Pigeons & Planes

先ほどのBakarのインタビューでも、彼自身の見た目のみで「ラップ」か「ヒップホップ」の音楽を作るという偏見が存在していることについて触れていました。
そしてJean Dawsonは、自分では自由に音楽を作ろうと思い、インディー・ロックを制作したとしても、「白人に合わせた音楽」と内側からも見られてしまいます。
「黒人」だからということで、いわゆる"ブラック・ミュージック"と言われるようなR&B/ソウル、ヒップホップなどといった音楽を、外見から判断して"作っているだろう"、ブラック・コミュニティーや同じ内側からも"作らなくてはならない"といった考えがまだまだ蔓延っているということです。
2000年代にBloc Partyが活動していた時も、彼らは実際にその"息苦しさ"を感じていたようです。というかその固定概念はより一層あったのではないかと。だからこそBloc PartyのKeleは先駆者であり、その音楽性を拡張させたと感じています。
そしてそのマインドをより拡張し、そのことを音楽で世界に訴えかけているのが、新世代アーティストであるBakarやJean Dawsonといったアーティストなのです。

Jean Dawsonが音楽を通して表現したいこと

今までは外面的や内側について触れてきましたが、Jean Dawsonの過ごしてきた時代背景にも触れると、彼自身は小さいことから自宅に篭り、インターネットでひたすらさまざまな音楽を掘っていたそうです。それはもうジャンル関係なく、Tyler, the CreatorsやA$AP Rockyから、Mike Jones、そしてNirvana、UKのシューゲイザーなどなど。
そんないろんな音楽を経由してきた彼だからこそ、なににも縛られない音楽を作り上げたのです。Jean Dawsonが先ほど語っていた師匠という存在に言われたことに対して、彼は続けて下記のように語っていました。

こういうクソみたいな考えと戦いたいんだ。白人の文化も黒人の文化もないんだ。人々が作り出そうとする境界線はとても有害で、人々はそういった境界線があらゆるレベルの成長をとどめていることをまるで理解していない。

Pigeons & Planes

今までも音楽の歴史を大きく変えた多くの革命者が存在します。そういったアーティストがいるからこそ音楽は拡張し続けて、今日の素晴らしい音楽が存在しています。そしてストリーミング時代になったからこそ、よりそのジャンルという境目や時代の新旧、人種間で作り上げる音楽の境界線をぶち壊して、関係なくそのまま自分の音楽に昇華するというアーティストがものすごく増えたのだと感じます。
Jean Dawsonはそういった中でも革命者でもあり、さまざまな他の同世代のアーティストに勇気を与えたことは間違いないです。それはBakarもそうですし、Bloc Partyもそうです。

2020年にJean Dawsonは、今後何年も語り継がれることになるだろうと言われる名作そしてデビューアルバム『Pixel Bath』をリリースしました。この作品の中で憧れでもあるA$AP Rockyを客演に迎えています。
そしてつい先日には、インディー・ロック・ヒーローとも謳われるMac DeMarcoとのコラボ作をリリースしました。そこからも伺えるように彼の音楽性は世界に広まり、受け入れられつつあるのでしょう。

このように見た目・外側から音楽を決めつけてしまうことや、ブラック・コミュニティー内・内側での音楽を作ることの不自由さが、未だ少しでも存在しているということです。
今回はBakarやJean Dawsonといった新世代アーティストしか紹介しませんでしたが、世界中にはまだまだその壁をぶち壊しに行っている新人アーティストは存在します。
次回はそんなアーティストをまとめて紹介しようかと思います。お楽しみに〜最後に、Bloc Partyの新作楽しみすぎませんか?

(続編はこちらから)


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