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Shalom, Elmiene...今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-9

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜

Shalom

アメリカのメリーランド州で生まれ、その後サウスアフリカで育ち、現在はNYを拠点に活動するシンガー・ソングライターShalom Obisie-OrluによるプロジェクトShalomが、Big Thiefなどを輩出したレーベル〈Saddle Creek〉よりデビュー作『Sublimation』をリリース。プロデューサーにRyan Hemsworthを招いているという満を辞してのアルバムです。2022年に〈Saddle Creek〉と契約したShalomは、シングルでHovvdyの「True Love」のカバーや、Glass Animalsの「Agnes」のカバーなどを発表するなど、生粋のインディー好きで、今作にもド直球のタイトル「Soccer Mommy」があるほど。
作品自体は非常に多彩なサウンドが詰め込まれていて、彼女才能に驚くことは間違いありません。90年代のオルタナのような痛快なドライブギターが鳴り響くM1「Narcissist」から、ニューウェーヴから00年代のNYインディーを取り込んだM5「Dit it To Myself」、USインディー系譜の牧歌的なM6「Concrete」、トラップビートを取り入れたベッドルーム・ポップ風のM11「Mine First」など、バラエティーに富んだアルバムに仕上がっています。しかし音像のバラツキは見せず、一貫性を持ったサウンドにまとめ上げており、そこはさすがのRyan Hemsworthのプロデュース力。さらにアルバムの収録曲のほどんどを2~3時間で作ってしまったと語る、Shalomのソングライティングの創造力もすざましいですね。
ダークなムードを纏ったディープな曲から、爽快なインディーロックソングまで、彼女のダウナーな歌声が紡ぐ内省的なリリックと重なり合うことで、これまでのShalomの軌跡を辿るような作品となっています。今後要注目のアーティストになることは間違いなしですので、ぜひ通して今作を聴いてみてください。


jerod

LAを拠点に活動するシンガー・ソングライターJed Naranjoによるソロプロジェクト、jerodが新作EP『grief science』をリリース。個人的な2020年のベストアルバムにも挙げたアーティストですが、残念ながら違う方向性で音楽を作成したいというアーティストの意向でその作品は削除されてしまっています。でもそれにも勝るような最高の7曲入りのEPが届きました。
淡く透き通るようなアンビエントに、オーガニックで優美なアコースティックサウンドが折り重なる、ドラマティックで幻想的な仕上がりに。そこに優雅でスムースな彼の美声が溶け合い、エモーショナルで劇的な展開を見せる作品となっています。ノイズやグリッチ的なエディットを加えたビートの精巧さや、それぞれのサウンドの繊細な仕上げ方は本当に素晴らしいの一言。さらに今作ではストリングスや金管楽器などの音色も加えていて、より映像的なサウンドにまとめ上げています。DijonやZack Villere、Nick Hakimなどに次ぐような天才的な才能を持ち合わせていると個人的には思います。ハンカチ用意した上でぜひ聴いてみてください。


Elmiene

ロンドン拠点に活動するアーティスト、ElmieneがデビューEP『EL-MEAN』をリリース。彼はすでに昨年のLil Silvaの名作『Yesterday Is Heavy』のM10「About You」にフィーチャリングで参加して脚光を浴びています。それよりも前に彼のデビューシングル「Golden」は、ヴァージル・アブローが亡くなったわずか2日後にマイアミで行われたルイ・ヴィトンの最後のショーで未発表の状態でかかり、それが彼が注目されるきっかけだったそう。
それも明白で、Elmieneの洗練された壮大な美声を聴けば、圧倒されるに違いありません。天賦の才能を持ち合わせた彼の歌声は、ソウルフルで迫力あふれる声から、繊細で澄み切ったハイトーンボイスまで、機微な歌い分けをする、表情豊かなもの。今作はBurialとの共同プロデュース作品「Night Air」などで注目を集めたJamie Woonがプロデューサーで参加しているそうで、豪華絢爛で優雅なサウンドに仕上げた素晴らしいEPに。
PrinceやD’Angeloを影響源に挙げるElmieneですが、今後彼の創り上げる音楽は要注目ですね。


Paige Su

台湾の台北拠点に活動するシンガー・ソングライター、Paige Suが2枚目となるアルバム『You’ll Live Forever In My Songs』をリリース。台湾からは9m88やLeo王といったジャズやソウル、R&Bなどを基調とした手の込んだポップサウンドを奏でるアーティストが多いですが、彼女もその一人かと思います。
とても上品で美麗なサウンドに、ポストロックやアンビエント、オルタナティヴなどのエッセンスも加えた優美な音楽性が特徴的です。さらにそこにアジアン的なエキゾチックなムードも加えて、ファンタジックな音世界に仕上げています。彼女の浮遊感のある耽美な歌声もとても心地よく、夢見心地な気分に。RadioheadやJeff Buckley、Portisheadなどから影響受けているのも納得な、幽玄なサウンドが広がっています。


Rarelyalways

ロンドンを拠点に活動するジャズミュージシャンであり、プロデューサー、そしてラッパーでもあるRarelyalwaysがデビュー作『WORK』をリリース。彼は、さまざまさなUKの素晴らしいアーティストを輩出してきたBRIT School出身で、2019年のシングル「Figure」や2020年のEP『Baby Buffalo』で脚光を浴びはじめます。
彼のいままでの経歴やジャズミュージシャンという豊かな音楽的な土壌があることから、作り上げるサウンドはかなりドープ。ダブやファンク、ソウル、ジャズ、クラブミュージックなどの要素を組み合わせた、ストレンジで怪しげなトラックに仕上げています。そこにスポークンワードからグライムなどUK独特のフロウを織り交ぜたスタイルも唯一無二。今作は実験的でウィットに富んだ側面があり、新鮮に感じるサウンドではありつつも、親しみやすい音楽性にまとめ上げているのも魅力的だと感じました。

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