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Miloe, Quinn Christopherson...今週のおすすめ 5 best Songs:2022-38

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

ポッドキャストも始めているのでぜひのぞいてみてください〜

Spotifyのプレイリストも更新しています〜

Miloe

コンゴ共和国出身で現在はミネアポリス拠点に活動するBobby Kabeyaによるベッドルーム・ポップ・プロジェクト、Miloeが新作EP『gaps』をリリース。The NeighbourhoodのプロデューサーであるLars Stalforsを迎え、PawPaw Rodと80purpppを客演で招いています。
コンゴにいた頃の彼の幼少期は聖歌隊に参加しドラムを担当しつつ、ゴスペルに慣れ親しんだそうで、家族で渡米後、自身のルーツを忘れないようにコンゴの音楽も掘り漁っているよう。彼の音楽的原体験はColdplayのアルバム『Mylo Xyloto』とのことで美しいメランコリックなインディーポップに衝撃を受けたそうです。音楽制作のきっかけは不眠症に悩まされていた彼は、自身で深い眠りにつけるような癒しの音楽を作ることを目標にしていたらしい。そこからミネアポリスのインディーポップシーンでも頭角を表し始め、Beach BunnyのOPを務めたり、プレイリストのLoremの常連でもある彼はかなり人気を博していますね。
そんな彼の音楽性は、水の上で浮遊しているかのような爽やかでメロウなサウンドに、体の芯から揺らすようなリズム隊のグルーヴィーなインディー・ポップサウンドが特徴です。やはりルーツにゴスペルやコンゴ音楽があるため、ソウルやR&Bのエッセンスはもちろん、そこにToro y Moi的なサイケ・ポップやMac DeMarcoのようなルーズなインディーを織り交ぜることで、常夏のロマンスを感じるような甘美な音楽に仕上げていますね。
そしてPawPaw Rodとの「rewind」のMVが鮮やかでカラフルな色合いが最高な感じに仕上がっているのでぜひ見て欲しい。


Quinn Christopherson

アラスカのアンカレッジで生まれ育ち、現在もそこを拠点に活動するSSW、Quinn Christophersonがデビューアルバム『Write Your Name In Pink』をリリース。Angel OlsenとSharon Van EttenとJulien Bakerの3人によるツアー「The Wild Hearts」のサポートアクトに大抜擢され、いま確実にアメリカで大注目のシンガーソングライターと言っても過言ではないでしょう。彼の母が聴いていたというSheryl CrowやCeline Dion、Alanis Morissetteというのが彼のルーツでもあるそうで、抜擢された理由も垣間見えますね。彼の人気に火をつけた2019年のシングル「Erase Me」でNPRのTiny Desk Contestに参加し、見事優勝を果たします。そこから今回のデビュー作に漕ぎ着けたとのことです。
アラスカという広大な大地と大自然、そして雪国で生まれ育ったことが所以なのか、やはりどこか冬の寒さが楽曲の中に内包されており、冬の時期に聴いたら最高なだろうなと思わせる音楽の仕上がりとなっています。雪がシンシンと降るような森林にそこに晴れ間が差し込み、チラチラと雪の結晶が光り輝くような、冷たさもありつつも温かみも感じられる彼の優雅な音楽性は素晴らしいです。のびのびとしたアメリカのフォークに、アンビエントやシンセポップ、USインディーを織り交ぜた美しいサウンドスケープは彼独特でしょう。今後も楽しみです。


Victoria Canal

アメリカとスペインにルーツを持つロンドン拠点に活動するSSW、Victoria Canalが新作EP『Elegy』をリリース。羊膜索症候群のため生まれつき右前腕がない状態で育った彼女。両親がアメリカやスペインのため各地さまざまなところを移動していろんな音楽体験を得ていったそう。そんな世界各地を回る中での共通言語として音楽に魅力を覚え、自身でも表現していくようになったそうです。
そんな彼女の奏でる音楽は、とても透明感のある澄み切った美声と、流麗で清らかなサウンドが絡み合った、それは非常に美しいものです。主にピアノやアコースティック・ギターなどの生感あるサウンドをベースに、彼女のたゆたう麗しい声が乗るシンプルなもので、そこにアンビエントやストリングスなど音が重なり、よりドラマティカルで感動的な仕上がりをみせています。


Glows

本ブログでも度々登場しているロンドンのアンダーグラウンドシーンを盛り上げるレーベル〈Slow Dance Recordings〉。今までもUmaSaint JudeSarah MethPlatonica Eroticaなどを紹介してきています。
今回そのレーベルからロンドンのデュオ、Glowsが6年の歳月をかけて制作としたと語る、記念すべきデビューミックステープ『LA, 1620』をリリース。彼らはSorryのキーボードを務めるMarco Pini(別名義でGG Skipsというバンドもやってる)と、アートディレクターのFelix BHによる2人組で構成されています。
なんだかんだ2019年のデビューEPから追っているのですが、今作でここまで彼らがこんな途轍もない変貌を遂げるとは予想も付かなかったです。収録曲の「Postpunk」という曲があるように、彼らなりのポスト・パンクとUKのエレクトロニックミュージックを融合し、独自の"解"に挑戦中でもあると言わんばかりの作品に仕上がっています。ミックステープであることも納得のいくもので、かなり自由度の高い楽曲たちが収録されていると感じでいます。幽玄でどことなく情緒を感じさせるアンビエント〜ダンスミュージック系のサウンド、Sci-Fiな退廃的な電子音、ポスト・パンク〜インディーロック的なバンドサウンドのアプローチなど、彼らの引き出しの多さがこの作品を通して聴くとモロに分かりますね。確実に今作で彼らの実力を見せつけられたような、もう今後注目株ブチ上がりのデュオなのは間違いない。


AGAAMA

UKのバーミンガム出身のジャマイカをルーツに持つSSW/プロデューサー、AGAAMAが新作EP『WANDERING WORLDS』をリリース。彼女は既にイギリスの各メディアでも評価され始めており、BBC 6 Musicでの取り上げやThe Guardianの「One To Watch」にも選出されています。また彼女の音楽の原体験は母親が聴いていたSarah VaughanやQuincy Jonesなどとのことで、その後Kate BushやUKのベースミュージック、メタルなどにも傾倒していき、Toolは大のお気に入りとのことで、BjörkやArca、Yves Tumorなど多くのアーティストからインスピレーションを受けるようになったようです。
その幅広い音楽の影響源を感じるような実験的な試みを今作でも表現しており、陰鬱だけどポップな仕上がりをみせています。メタルの素養を感じられるようなインダストリアルな電子音や野太い音作りなど、所々その背景を感じさせる部分が多いです。そのダークな雰囲気満載の重厚なベース音に、ジャズ的なホーンアレンジの妙が折り重なった独特なトラックに、またそこに彼女の幻想的で荘厳な美声が溶け合った素晴らしい音楽です。

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